2019年10月31日 (木)配信毎日新聞社
横浜市立大と宇宙航空研究開発機構(JAXA)の研究グループは、
国際宇宙ステーション(ISS)で、iPS細胞(人工多能性幹細胞)を培養して
立体的な臓器作製につなげる実験を、2020年秋に行うと決めた。
ISSの微小重力環境が、臓器作製に与える影響を調べ、
地上で立体臓器を作る装置の開発に生かす。
横浜市大の谷口英樹教授(再生医学)らは13年、
iPS細胞から立体構造を持つ小さな肝臓(肝芽)の作製に世界で初成功。
理論的には、多数の肝芽を立体的に融合させれば肝臓ができる。
地球上では、重力の影響で肝芽同士は平面的にしかくっつかないため、
移植医療に使えるような臓器にまで大きくするには、
新たな技術が必要とされていた。
計画では、iPS細胞から作製した肝芽数千個をISSに運び、
日本の実験棟「きぼう」内で培養。
専用の回転装置を使って人工血管を取り囲むように集合させ、
長さ3~5mmの大きさになるまで立体的に融合させる。
肝芽と血管がつながれば、微小重力下で臓器を作製するメリットがより明確に。
チームは17年にISSで実験する検討を始めた。
補給機への積み込みから実験開始まで1週間程度かかり、
細胞が正常に機能するか懸念されたが、特殊な保存液の開発に成功。
実験のめどが立った。
谷口教授によると、地球上でも培養液内で細胞を浮遊させ、
疑似的に無重力に近い環境をつくって集合させることで、
立体的な臓器を作れる可能性がある。
谷口教授は、「まずは、宇宙で立体構造を作る優位性を確認したい。
地上でその方法を発展させて新たな培養装置を開発し、
iPS細胞から大きな臓器を作るのが最終的な目標だ」と狙い。
https://www.m3.com/news/general/708484