2019年11月6日水曜日

異常免疫細胞 化合物で変換…京大など発見 新薬開発に期待

2019年10月30日 (水)配信読売新聞

体内の臓器などを誤って攻撃する異常な免疫細胞を、
免疫反応にブレーキをかける正反対の免疫細胞に変える
化合物を発見したと、京都大やアステラス製薬のチームが発表。

免疫異常で起きる関節リウマチなどの新薬開発につながる可能性がある。
論文が国際科学誌サイエンス・イムノロジー電子版に掲載。

免疫は、ウイルスや細菌などの異物を攻撃し、体を守る仕組みだ。
しかし、体を攻撃する異常な免疫細胞が作られることがあり、
重い皮膚炎や1型糖尿病、関節リウマチなどの自己免疫疾患の原因。
免疫細胞の中には、異常な免疫反応を抑える「制御性T細胞(Tレグ)」もある。

Tレグ発見者として知られる京大客員教授の坂口志文・大阪大特任教授らは、
アステラス製薬が持つ約5000種類の化合物を調べ、
異常な免疫細胞をTレグに変化させる化合物を見つけ出した。
皮膚炎や1型糖尿病のマウスに1日1回ずつ約2週間飲ませたところ、
何もしなかったマウスより症状が抑えられた。
目立った副作用もみられなかった。

この化合物には、Tレグで働く遺伝子を活性化させる作用があるため、
異常な免疫細胞の一部がTレグに変わったとみられ、
坂口さんは「今後は変換効率を高め、副作用が強い免疫抑制剤に代わる
薬を開発したい」
 
吉村昭彦・慶応大教授(免疫学)の話

「体内でTレグを増やす画期的な方法だ。
薬として応用するには、化合物の副作用をより慎重に調べる必要がある」

https://www.m3.com/news/general/708211

iPS細胞:宇宙でiPS培養→立体的臓器 横浜市大など来秋実験

2019年10月31日 (木)配信毎日新聞社

横浜市立大と宇宙航空研究開発機構(JAXA)の研究グループは、
国際宇宙ステーション(ISS)で、iPS細胞(人工多能性幹細胞)を培養して
立体的な臓器作製につなげる実験を、2020年秋に行うと決めた。
ISSの微小重力環境が、臓器作製に与える影響を調べ、
地上で立体臓器を作る装置の開発に生かす。

横浜市大の谷口英樹教授(再生医学)らは13年、
iPS細胞から立体構造を持つ小さな肝臓(肝芽)の作製に世界で初成功。
理論的には、多数の肝芽を立体的に融合させれば肝臓ができる。
地球上では、重力の影響で肝芽同士は平面的にしかくっつかないため、
移植医療に使えるような臓器にまで大きくするには、
新たな技術が必要とされていた。

計画では、iPS細胞から作製した肝芽数千個をISSに運び、
日本の実験棟「きぼう」内で培養。
専用の回転装置を使って人工血管を取り囲むように集合させ、
長さ3~5mmの大きさになるまで立体的に融合させる。
肝芽と血管がつながれば、微小重力下で臓器を作製するメリットがより明確に。

チームは17年にISSで実験する検討を始めた。
補給機への積み込みから実験開始まで1週間程度かかり、
細胞が正常に機能するか懸念されたが、特殊な保存液の開発に成功。
実験のめどが立った。

谷口教授によると、地球上でも培養液内で細胞を浮遊させ、
疑似的に無重力に近い環境をつくって集合させることで、
立体的な臓器を作れる可能性がある。
谷口教授は、「まずは、宇宙で立体構造を作る優位性を確認したい。
地上でその方法を発展させて新たな培養装置を開発し、
iPS細胞から大きな臓器を作るのが最終的な目標だ」と狙い。

https://www.m3.com/news/general/708484

投球数制限は来春選抜から 投手障害予防の有識者会議

2019年11月6日 (水)配信共同通信社

日本高野連が設けた「投手の障害予防に関する有識者会議」の
第4回最終会合が5日、大阪市内で開かれ、
「1人の1週間の総投球数を500球以内」とする投球数制限を盛り込んだ
答申案をまとめて公表した。
3連戦を回避する日程の設定も明記した。

本高野連と都道府県高野連が主催する大会が対象。
試行期間を、来春の第92回選抜大会を含む春季大会から3年間とし、
期間内は罰則のないガイドラインとして運用するように提示した。

20日に座長を務める慶応大教授の中島隆信氏が、
日本高野連の八田英二会長に答申を手渡し、
29日の日本高野連理事会に諮る。

答申案は、
(1)投球数制限や3連戦を回避する日程設定などの「競技団体としての責務」
(2)週1日以上の完全休養日の導入、複数投手の育成に留意などの
「加盟校が主体的に行うべきこと」
(3)指導者のライセンス制検討、学童や中学野球大会での試合数の精選などの
「野球界全体で取り組むべき課題の検討」―
という三つの大きな柱で構成された。

中島氏は、「日本高野連がこれを受け取って、どういう形で実践していくかを見守り、
その結果として、野球に携わる若者全てが気持ち良く野球ができることを期待」

有識者会議は、昨年12月に新潟県高野連が、
春季県大会で1人の投手が1試合で投げられる球数を100球とする
独自の投球制限の導入を表明(のちに見送り)したことをきっかけに発足。

https://www.m3.com/news/general/709261

秋田犬との散歩で健康に 「ヘルスツーリズム」注目

2019年11月6日 (水)配信共同通信社

地方ならではの自然や気候の体験を通じ、
健康増進を図る「ヘルスツーリズム」が注目。
昨年、旅行プログラムの品質を審査し、「認証」を与える制度が創設。
今後需要が見込まれる中、秋田県では世界的に人気が高まっている
秋田犬を活用した「秋田犬と散歩」が、9月に認証を受けた。

「大股歩きしてみましょう」、「きれいな小石を拾いましょう」。
「秋田犬と散歩」では、同行ガイドが折を見て参加者に声を掛ける。
助言を基に体を動かすことで、秋田犬による癒やし効果と相まって、
心身の健康を図る狙い。
運動が嫌いな人や苦手な人でも、気軽に取り組めるのがポイント。

プログラムは記念撮影を含め1時間半程度で、参加料は1人2千円。
企画したのは、同県三種町の「一般社団法人ヘルスケアデザイン秋田」。
自治体を挙げて健康ウオーキング事業に取り組んでいた同町で、
ガイドらが昨年6月に立ち上げた。

理事を務める相原信孝さん(62)は、
「秋田犬との時間を通じて、健康への気付きを持ってもらえたらいい」
今後は、ジュンサイ料理や温泉入浴といった町の名物を
プログラムに組み入れる構想を温めている。

認証は、NPO法人など3団体で構成されるヘルスツーリズム認証委員会(東京)が
「安全性」、「その土地ならではの旅の楽しみ」、「健康への気付き」の
観点から検討、審査する。
安全性は特に厳しく考慮され、「秋田犬と散歩」も、
リードは飼い主が握らなければならない決まりがある。
委員会の担当者は、「認証という形で、サービスの品質を『見える化』することで、
顧客は安心して参加できる」

今年10月時点で、全国38プログラムが認証。
JTBグループのJTBガイアレック(東京)は、
認証プログラムを組み込んだツアーの販売を始めた。
山形県上山市の「かみのやま温泉」に宿泊し、
大自然を感じながら自分に合ったペースでウオーキングできるツアーの人気が高い。

相原さんの下には、認証をきっかけに問い合わせが増えている。
「やっとスタートラインに立てた。
いろいろな意見を聞いて改善しながら、より良い旅を提供したい」と意気込んだ。

https://www.m3.com/news/general/709272

アルツハイマー:血液1滴でアルツハイマー検査 「軽度認知障害の診断可能に」 名古屋市立大など

2019年11月6日 (水)配信毎日新聞社

アルツハイマー病を、血液1滴で診断できる可能性のあるマーカーを、
名古屋市立大などの研究グループが発見。
アルツハイマー病の前段階の軽度認知障害(MCI)の診断も可能になる。
研究結果は先月、米国のアルツハイマー病の専門誌に掲載された。

アルツハイマー病は、発症の20年以上前から「アミロイドベータ」と呼ばれる
たんぱく質が脳に蓄積することが分かっている。
研究グループは、2016年にアルツハイマー病の研究を行う中で、
細胞にアミロイドベータを投与すると、
たんぱく質の一種である「フロチリン」の分泌が低下することに気づいた。
そこで、フロチリンをアルツハイマー病の診断マーカーに使えないかと考えた。

研究グループは、画像診断でアルツハイマー病と診断された人15人と
診断されなかった人15人の血液を分析。
その結果、診断された人では、診断されなかった人と比べ、
フロチリン濃度が低下していた。
MCIも同様の結果だった。

現在、アルツハイマー病を早期に発見する方法には、
髄液検査や、陽電子放射断層撮影(PET)画像を用いる方法があるが、
髄液検査は患者の身体への負担が大きく、
PET診断も機器と試薬が高価で実施できる施設も限られている。
血液マーカーを使った研究は他にもあるが、
フロチリンに着目したのは初めてで、「簡便で費用も安価」という。

研究を統括する名古屋市立大大学院医学研究科の道川誠教授は
「今後さらに多くの人数で調べる必要がある。
治療薬が米国で開発され、早期発見の必要性がこれまで以上に高まっている。
製品化を進めており、2、3年以内には実用化したい」

https://www.m3.com/news/general/709291

スポーツ医学のこれから、リスクを最小化するアプローチ - 守屋拓朗・千葉労災病院整形外科副部長に聞く◆Vol.2

2019年11月2日 (土)配信聞き手・まとめ:水谷悠(m3.com編集部

――スポーツでの怪我ともうまくつきあうことが必要ですね。

全てをネガティブにしてしまったら、「何もやらないのが安全」ということに。
スポーツによるメリットとリスクを比べた時、
少しだけリスクを取ることになるが、それ以上のメリットを享受する。
そのリスクをどれだけ最小化するかというサポートが、
スポーツ医学に今、求められていること。
従来、整形外科医がスポーツ医学としてやってきたことより広い範囲が含まれる。
スポーツ外傷に加えて、心臓疾患・脳振盪・熱中症などが代表的。
初期対応が中心とはいえ、一般の整形外科医が対応できる範囲を
超えている部分も含まれ、横断的に取り組むことで
解決策を見出していく必要がある。

――スポーツの会場にいる医師は、基本的には整形外科医ではないでしょうか。

そこを埋めるのが、一つはPrehospital Immediate Care in Sportsの資格。
外傷に対する処置だけでなく、BLSやACLS、頭部や胸腹部などの
外傷への対処も全部入っている。
e-ラーニングで予習をし、2日間か3日間のコースでディスカッションと、
シミュレーションをひたすらやる。
レベル1がコーチや保護者など一般の方が対象、
レベル2は医療関係者向けのベーシックコース。
レベル3が医師を中心としたアドバンスコース。
コースの内容は、スポーツ現場にいる医師の質の向上と担保につながり、
医師一人のスキルでは解決しない問題があるのが、次のステップ。
医療支援体制の構築をもっとしっかりとし、
あらゆる状況を想定してリスクを最小化するシステム、
有事でのメディカルチームの動き方をどうマネージするか、
他部署とどのようにリンクしていくかが求められてくる。

今年度、現場は高森草平先生(横浜南共済病院)と
井上貴司先生(筑後市立病院)にお任せ。
高森先生は、ユースカテゴリーでもDrをされ、NZでの経験もある若くて優秀、
井上先生も、多くのカテゴリーでチームDrをされた経験豊富。
日本協会で代表のメディカルディレクターの田島卓也先生とともにチームをサポート。
合宿地での医療サポートを提供する病院、受診に当たっての経路と
キーパーソンなどを事前に連絡を取って調整する必要。
一義的には、病院の指定のみで終わりそうだが、
運用には顔の見える人の連携、現場での落とし込みが必要で、
書類のみでなく運用部分まで細部にわたって調整。
一部、病院内の調整をお願いすることにもなるが、
地域におけるスポーツイベントの意義をご理解しご協力いただいた。
本当に感謝しています。

トレーニングや試合で発生した外傷に対しての緊急のMRI撮影や
高気圧酸素治療などの依頼が多い。
夕方の練習や試合で怪我をしてとなると、
どう考えても時間外ですから無茶なお願いになる。
代表チームのドクターがその場だけでやっていると、
それ以外の仕事がままならなくなるので、
前もっての準備と調整をやる人がいた方が現場が動きやすいし、
その経験がある人がその役を担う方がいい。

――組織的、体系的にやっていくことの重要性もありますね。

すごく感じるのは、時代によってスポーツ医学に求められるものが変わってきて、
スポーツドクターの定義も非常に幅広くなっている。
手術で選手の怪我をしっかり治して、スポーツに戻してあげるというドクター、
それが王道だった。
チームドクターとして現場で活動したり、
スポーツイベントのサポートをするのもスポーツドクター。
ドクターの中に、怪我のリスクを減らす方法を考え、
外傷予防のアプローチを取るドクターも。
今回の私たちがやっているのは、予防とともに、
外傷が起きたときでもその影響を最小化しようというアプローチ。
外傷予防は非常に重要で、スポーツ自体の安全性にもつながり、
ハイパフォーマンスにもつながる。
先人には、予防に取り組まれてきた先生方は多い。
それがメジャーになってきたっていうことと、
より組織として動かなきゃいけない。

大会運営の医療部門に関わり、
スポーツイベントにおける医療部門の役割が
競技救護・観客救護・災害対策・公衆衛生的な側面も含め多岐にわたり、
自治体・消防・三師会などとの連携が求められ、多くのことが明確に。
ここにも私にいつも助言をくれる仲間がいて、本当に感謝。

医師の仕事には専門性の高い職人的要素もあるで、
大きい組織のマネジメントをして動かすというのが得意ではない方がいる。
世の中ではそれが求められ、私の周りにはそういうことが得意、
やりたいという仲間がいます。縁ですね。

今回、ワールドカップやオリンピック・パラリンピックを契機に、
メディカルのサポート、マネジメントがすごく大切だ。
チームの支援という側面と、運営側からの視点と、
それぞれ多くの方々のご協力のもと医療支援体制を構築できて、
形をつくって、次の世代に引き継いでいくことが大切。

千葉大学医学部附属病院スポーツメディクスセンターが
整形外科教授の大鳥精司先生をセンター長として稼働。
医療として何をするかという中、私自身はもちろんラグビーに恩返しをしたい、
スポーツと医療という切り口から地域に恩返しをしていければいい。
大鳥教授をはじめ、事務局長を務めてくれている整形外科助教の赤木龍一郎先生、
多くの先輩や後輩、仲間に非常に恵まれている。
私は現場に近いところにいて、問題点を吸い上げて提案することはできるので、
解決に導いてくれる人たちと一緒に何かできればいい。
(千葉大学医学部附属病院スポーツメディクスセンターについては
『スポーツ現場の救護医療体制の構築を!』を参照)。

ボランティアで貢献する、というのでは長続きしない。
スポーツに関係する方々の中に、Win-Winの形を作ること。
最終的には、提供するサービスに具体的な価値がつかないと、
日本のスポーツ文化が回っていかない。
地域に密着したアプローチをとるなかで、
趣旨にご賛同しサポートを申し出る方がいるかも。
多くの可能性を考えながら、スポーツと医療という切り口から、
医療関係者が社会に貢献し続けられる方策を考え、
それを実現していければと。

https://www.m3.com/news/iryoishin/707329

ラグビー日本代表の前チームドクターはチーム内外で重責を担ったスポーツ医学のこれから、リスクを最小化するアプローチ - 守屋拓朗・千葉労災病院整形外科副部長に聞く◆Vol.1

2019年10月26日 (土)配信聞き手・まとめ:水谷悠(m3.com編集部

日本代表の躍進もあって盛り上がりを見せるラグビーのワールドカップ。
千葉労災病院整形外科副部長の守屋拓朗氏は、
今までの日本代表などのスポーツドクターの経験をもとに、
大会運営側として大会を支え、地域でのスポーツと医療の関係にも心を配る。
大会前に、ラグビーとの関わりや、ラグビーにとどまらずスポーツで
医師が担う役割について、伺った(2019年8月14日にインタビュー。全2回の連載)。

――日本代表のドクターには、どのような経緯で就任されたのでしょうか。

2012年、前のエディー・ジョーンズ・ヘッドコーチのとき、
今は順天堂大学スポーツ健康科学部で教授をされている
高澤祐治先生がチームドクターをやり、サポートで入ったのが最初。
合宿に行ったり、遠征に行ったり、試合のサポートに入ったり。

県立千葉高校の頃、医師になりたいという思いがあり、
ラグビー部で3年生のときに膝の靱帯を切って最後の大会に出場できなかった。
現千葉大学名誉教授の守屋秀繁先生が、当時は千葉大学整形外科教授で、
膝の前十字靱帯を専門。
私にとっては伯父で、「伯父さん、けがしちゃった」という感じで電話をしたら、
「すぐ診に行ってやる」と来てくれた。
結局手術になったが、こういう経験も将来役に立つのではないかと思い、
医学部に入るときには、スポーツ医学のことがやりたいというのはあった。

医師になると、千葉大学整形外科では
有名選手の診察や手術の実績をもとにしたいろいろなつながりや、
体育協会(現スポーツ協会)との良好な関係や
国際武道大学など他大学との関係もあり、
スポーツ医学の地盤がある。
格好の人材が来たということで、すぐにスポーツの現場へと導かれた。
千葉県ラグビー協会の医務委員となり、地道に高校や中学の試合に行き、
県協会の医務委員長に。
地元の県立千葉高校・千葉大学出身でもあり、
高校の先生方、周りの方がスポーツドクターとして認識し、
千葉県のラグビー関係の方が、「ラグビー協会のお医者さんと言えば守屋先生」
という感じになっていった。

2008年、トップリーグのNTTコミュニケーションズシャイニングアークス(NTTコム)が
東村山市から市川市に移転(後、浦安市に移転)、
船橋整形外科病院の土屋明弘先生がチームドクターで、
私にもお誘いがありチームをサポート。
千葉県ラグビー協会の医務委員長として、
県の代表で関東協会や日本協会の医務委員長の会議に出る。
関東協会は2年に1度、日本代表を目指すトップリーグの若手選手らで
ニュージーランド遠征をし、2010年、「若いし、行って経験を積んでこい」と。
ステップを踏んで、2012年、日本代表にドクターとしてかかわる。

――チームドクターとしてどのようなお仕事をされたのでしょうか。

チーム内外、活動期間内外の多くの役割がある。
チーム内では怪我に対する対処や方針決定、メディカルスタッフとの情報共有、
コーチ陣との情報共有、外傷の予防についてトレーナーやストレングスコーチなどと
議論をすることも。
チーム外では、選手に関して所属チームとの情報共有が中心、
合宿地での医療体制などの情報収集や現地スタッフとの連絡・調整も。

日本代表は、各チームから選手を集めてつくるチームなので、
日本代表として活動していない時期が多い。
その期間も選手の情報を集め、コーチに報告することが求められる。
選手のコンディション、外傷があれば、その内容と現時点での状態、
復帰時期の見通しなど、正確な情報は医師同士でないと伝わらない。
トップリーグのドクターなど、所属チームドクターの皆さまには
多くのご協力をいただいた。
アスレティックリハビリテーションから復帰に関するところでは、
トレーナーの情報が非常に役に立つ。
優秀なトレーナーの存在とメディカルチーム内での連携が大切。
チーム・ピッチ・合宿地などで多くの方々にご支援いただき、
ラグビーに関わる皆様との関係は私にとって宝。

選手が外傷を負った際、プレーの可否について判断することが我々の仕事。
痛みだけなのか、機能上問題がありプレー続行不可能なのか、
素早い判断が求められる。
外傷の診断後、休息・リハビリを含め1週間でトレーニングに戻れる、
というような見通しを明確に伝えることが重要。
100%あたるかというとわけではないが、明確な根拠を持って判断するしかない。
選手にも、診断と根拠をしっかり話をして伝える。
そこの判断でコーチと議論になったことも、
選手を納得させるのに時間がかかったことも。

1カ月の活動期間で、残り2週間の時点で怪我をして、
2週間先の試合に出られるかどうかという時、
出られないとしたらその選手はチームを離脱し、すぐに新たな選手が招集。
ラグビーでは戦術の理解がとても重要、
トレーニングせずにいきなり試合だけ出て活躍できるということはほぼない。
ティア1(ラグビーの強豪・伝統国)に勝つには、
本当にギリギリのところで練習し、
リスクをとらずに全て守るというだけでは強くなれない。
詳細を選手本人・コーチともに説明、
最終的にコーチの判断を尊重することも。
教科書通り進むことは、スポーツの現場ではあまり多くない。

チームドクターとしての活動は、年間100日以上合宿・遠征に参加、
活動期間外でも、選手の所属チームドクターとの連携や合宿地の
医療体制の準備など、多くの時間を費やしてきた。
勤務する千葉労災病院、千葉大学整形外科医局の同僚など身近な方々、
家族の理解のもとでできていたから、皆さまからのご支援にとても感謝。

https://www.m3.com/news/iryoishin/707328

中山町:中山町、町あげて健康づくり 医療費抑制へ町長が率先 歩数計貸し出し/ウオーキング教室/体操・筋トレ指導 /山形

2019年11月5日 (火)配信毎日新聞社

高齢化が進む中山町は、
町民に歩数計を無料で貸し出し、歩くことで健康増進や医療費抑制に
つなげる取り組みを進めている。

身長175cm、体重80kgの佐藤俊晴町長(60)は、
20歳のころから20kg増。
細身だったころを知る家族から「痩せて」と言われる中、率先して汗を流す。
目指すは、自身も町民も適度な筋力を維持した健康な体。

筋肉や町名の「中山」という言葉から想像を膨らませる佐藤町長は、
会ったこともオファーもしていないが、
「タレントの『なかやまきんに君』とタッグを組んだイベントもできたらいいな」と思い描く。

同町の高齢化率(65歳以上、2017年10月現在)は33・5%、
全国平均27・7%や県平均32・3%を上回る。
町民の約2割が加入する国民健康保険の年間総医療費は、
17年は約9億8800万円。
08年から2億円近く増えており、医療費抑制は喫緊の課題。

佐藤町長は18年7月、「なかやま健幸くらぶ」と銘打ち、
健康と生きがいをつくる事業を始め、その一環で歩数計の貸し出しを始めた。
歩数計を導入する市町村は珍しくないが、
負荷に応じて「寝たきりにならないぞ」、「ダンディー」、「美body」、
「ハードトレーニング」の4コースを用意。
町民に加え、町内に勤務する30歳以上も対象に参加を募っている。
毎週水曜と日曜には、ウオーキングなどの教室を開催。
NPO法人の職員が指導者となって柔軟体操や筋力トレーニングを指導し、
月2回は町の保健師や栄養管理士が食事面なども指導する。
参加費は年間3000円。
人口約1万1000人の同町で、260人以上が参加。

今年1月の町長選で健康増進などを掲げ、無投票で再選された佐藤町長は、
19年度予算に関連事業約2300万円を充てた。
歩数実績に応じてポイントを付与し、
町内で使える商品券と交換できる事業も進める。
20年の目標は、町民の6・3%にあたる参加者700人。

ダンディーコースに参加している佐藤町長は高校時代、
テニスで県高校総体ベスト16入りするなどのスポーツマン。
近年は足首痛に悩んでいたが、改善された。
体重減には至っていないものの、
「町民と歩きながら話すことで、町の問題点が分かることもある。
5年以上は続けたい事業。私も頑張りますよ」と意気込んでいる。

https://www.m3.com/news/general/709158

“燃え尽き症候群”、世界各国の共通課題、ICPCMが東京で会議

2019年11月5日 (火)配信橋本佳子(m3.com編集長)

国際的な非営利組織「人間を中心とした医療国際組織」
(ICPCM;The International College of Person-centered Medicine)は
11月2日、日本医師会との共催で都内で開催した
「第7回人間を中心とした医療国際会議」で、
「ワーク・ライフ・バランスに関する東京宣言2019」(案)を公表。

「序文」と計12項目の「勧告」から成り、
良好なワーク・ライフ・バランス(WLB)の重要性について、
個人だけではなく社会全体のさまざまな利害関係者の責任として認識し、
達成すべきだとしている。

ICPCM理事のワーディ・ファン・スターデン氏
(南アフリカのプレトリア大学健康科学倫理・哲学センター長、精神学・哲学教授)は、
「東京宣言2019」(案)に対する意見を募集し、成案とする方針を説明。
ICPCMは、人間中心の医療に関する出版、研究活動を続けるほか、
2020年4月にはスイス・ジュネーブで、self-careとwell-beingをテーマに
会議を開催する予定。

第7回会議のテーマは、「ワーク・ライフ・バランス:その課題と解決手段」。
世界医師会(WMA)会長のミゲル・ジョルジュ氏(ブラジル医師会理事)は、
2019年7月のランセット誌の論説で、
「医師のバーンアウト(燃え尽き症候群)は世界的流行レベルに達している」、
「バーンアウトが米国の医師の半数以上に影響している」、
「2019年の英国医師会の調査によると、医師の80%でバーンアウト・リスクが
高いか非常に高く、若手医師が最もリスクが高かった」
2015年の「医師のwell-beingに関するWMA声明」では、
研修医を含む医師のWLBを改善するための取り組みを各国医師会に求めた。

ドイツで主に入院医療に従事する医師への調査では、
2017年の週平均労働時間は「49~59時間」が最多で40%、
「60~79時間」が20%、「80時間以上」も2%と長時間労働医師が少なくなく、
「煩雑な事務処理を減らす」ことを求める声が多いなど、
医師の働き方改革を行い、WLBの改善を進めることが各国共通の課題である。

日医会長の横倉義武氏は、
「医師の勤務環境改善、ワーク・ライフ・バランスの改善は、
各国共通の喫緊に取り組むべき課題」
「医師の働き方改革は、医師が自身の健康を守りながら誇りを持って働き、
国民・患者がどこに住んでも最善の医療を受けることができる社会の不可欠な要素」、
働き方改革は燃え尽き症候群を防ぐことにもつながると期待。

ICPCM会長で、世界医師会元会長のジョン・スネーデル氏は、
「現在の医療システムにおける市場主導型の解決手段、
現代医学の断片化された技術開発により、
医師と患者の関係は危険に。
医師の中心的な役割に戻るためにも、
燃え尽き症候群の問題を解決することが重要」

◆ドイツ医師、週60時間以上勤務も2割強

「科学は医療に必要な技術の一つだが、ヒューマニズムこそ医療の本体」、
人間中心の医療の基本的な考え方。
患者の視点だけでなく、医療提供者側のWLBなども踏まえて
医療の在り方を考えていく発想だ。
問題は、医師の健康を損なう長時間労働、それに伴う燃え尽き症候群であり、
会議では世界的な問題になっていることが提起。
各国ともその有効な解決策は見いだしておらず、
個人だけでなく、行政も含め、さまざまなレベルで取り組んでいく。

ドイツの例を紹介したのは、
ラミン・パルサ・パルシ氏(世界医師会理事、ドイツ医師会国際担当役員)。
2017年、ドイツで主に入院医療に従事する医師に実施した調査では、
週平均労働時間は「49~59時間」が最多で40%、
「60~79時間」が20%、「80時間以上」も2%と長時間労働医師は少なくない。
労働時間削減に、計82%が「重要」と回答。
医療により多くの時間を使えるようにするために必要なこととして、
最多は「事務処理の煩雑さの軽減」(74%)、
「他の医療職との負担の共有」(70%)、
「医師の数を増やす」(70%)(複数回答)。
優先したい事項として、
「プライベート/家族との時間を増やす」(最重要を100、平均74)、
「看護師を増やす」(同74)、
「煩雑な事務処理を減らす」(同73)、
「医師の数を増やす」(同72)などが上位。

ラミン・パルサ・パルシ氏自身、今でも週に100時間以上勤務、
「EU労働時間指令で、医療に限らず、あらゆるセクターに労働時間規制がある。
病院、政府は圧力にさらされ、長時間労働の状況は改善してきてはいるが、
完全に良い状況とは言えない。
オプトアウトすることができるからだ」
オプトアウトとは、雇用者と個人が契約を結べば、
労働時間規制を超える労働が可能になる仕組み。
ドイツでは、オプトアウトを利用する医師が多い。

ラミン・パルサ・パルシ氏が、「自身の健康に責任を持つ」必要性を述べたのに対し、
フロアから、「WLBを考えると、手術数を制限するしかない。
有効な手立てがあるのか」との質問。
「ドイツでは、医師の数は過去数年で増えているが、
医師の労働時間が減ってきている。
理由の一つは、女性医師が増えているため。
もう一つは、医師自らの健康に留意するようになってきたこと。
医学部定員を増やしてほしいと言っているが、政府は受け入れてくれない。
これから多くの医師が引退していく時期にあり、
その後、どうするのか、解決策はない」と答えた。

ドイツの主に外来診療に従事する医師の労働時間は、別の演者が説明。
入院医療従事医師よりは労働時間は短いものの、
事務負担の軽減などの業務改善を求める声が上がっている。
◆イギリスでも燃え尽き症候群を懸念

イギリスの例を紹介したのは、
ヘレン・ミラー氏(ICPCM理事、世界精神衛生連盟財元財務担当役員、
ダンディー大学精神科コンサルタント)。
「イギリスでも、燃え尽き症候群は約30年前から懸念されてきた」、
原因を下記のように整理。
政府レベルの対策とともに、医療者自身が自分自身のwell-beingを
心がける大切さを指摘。

◆スタッフの士気の低下・人員不足と危険な労働環境
・人間中心の姿勢がない
・評価されない、足を引っ張られる、自律性がない
・いじめ文化
・臨床上の問題を提起しても、ろくに支持を得られない
・過剰規制、不平不満・非難文化の影響

◆医師への要求増大
・人口増、人口動態の変化
・政府が掲げる非現実的な約束や目標が国民の期待を押し上げる。「医療の政治化」

◆契約条件の悪化
・劣悪なワーク・ライフ・バランス
・経済的ディスインセンティブ:減給、年金減額、所得増税

◆日本からも4人の演者が登壇

日本からは、北里大学医学部公衆衛生学教授の堤明純氏、
三井記念病院精神科部長の中嶋義文氏、
国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授の和田耕治氏のほか、
日本赤十字社医療センター第一産婦人科の卒後3年目産婦人科医、中安杏奈氏が登壇。

堤氏と中嶋氏は、日本の医師の勤務環境の現状や
医師の働き方改革の概況などを紹介。
和田氏は、医学生や若手医師のバーンアウト予防の重要性を強調、
医療従事者の健康を守るために、
▽自助(自らが健康を守れるように良好な生活習慣を維持するなど)、
▽共助(医療機関における産業保健体制など)、
▽公助(公的機関の活用など)――という3つの柱で
具体的行動を起こす必要性を指摘。

中安氏は、自らが全国の日赤病院に勤務する卒後1~5年目の医師226人を
対象に実施した調査を基に、
「地方で勤務する医師の不満」のトップはWLBであり、
診療科の選択・変更の重要な要因、
WLB改善には、「シフト勤務制の実施と夜勤後の休息」、
「当直明けの勤務は禁止」、
「十分な休日数」、
「主治医制より当直医制」などを若手医師が望んでいる。

★「ワーク・ライフ・バランスに関する東京宣言2019」(案)(訳は日本医師会)
【序文】
個人と社会は、良好なワーク・ライフ・バランス(WLB)に向けて努力し、
達成することに強い関心を持っている。
臨床実践、教育、研究、機関管理などのさまざまな医療分野ならびに
政策立案・遂行において、この目的を達成するための活動は、
人間を中心とした倫理的価値観によって導かれるべきである。
WLBの利益は、集団的にも個人のwell-beingと繁栄においても十分に立証されている。
WLBの利益は、職業生活あるいは私生活の目標達成において
個人の価値観に照らして測った、個々の医師、保健専門職または患者の利益であるだろう。
これらの利益は、模範となる生産性と最適で質の高い医療サービスおよび
健康アウトカムを探求する雇用者や機関、医療サービスの共通の
価値観により評価されることによっても得られる。
良好なWLBを提唱するものの、人間を中心とした医療
(person-centered medicine;PCM)は、職務よりも人間の方が重要であることを主張する。
WLBが考慮されている人は、
例えば患者、医師、または他の保健専門職、家族の一員、被雇用者、
雇用者、親、学生、市民、同業者の代表、機関の代理人、研究者、
臨床教育者など、さまざまな役割を持つかもしれない。
一人の人間は同時にいくつかの役割を持つが、
それは良好なWLBが、例えば患者あるいは専門職という単に一つの役割ではなく、
これらの役割全てに当てはまることを意味する。
それにもかかわらず、人はその役割よりも重要であると認識されている。
対人関係は、良好なWLBのために極めて重要である。
PCMは、人をその役割や環境、特に、他の人々との関係の中に居続ける。
良好なWLBの一部として、これらの関係を助長すべきである。
対人関係は、良好なWLBに向けた努力と達成における人間を中心とした
プロセスの構成要素である。
ある人にとって良好なWLBとされるものは、必ずしも誰にとっても同じ
というわけではないが、それは哲学者オルテガが
「私は、私と私の環境である」と言明したように、
各人はある程度それぞれの環境によって構成されている。
人々の経験は、良好なWLBとされるものにおいて、
そしてそれに向けた努力において、極めて重要である。
これは満足感以上の問題であり、「私にとって」良好なWLBとは何か(どんなものか)、
「私の」固有の状況において「私にとって」何が重要か、を含む。
ある人の一人称の経験を、良好なWLBに向けての努力と
その達成において非常に重要であると考えることは、
その人の価値観、興味、好みが、単なる付け足しではなく、
医療と協同的意思決定となることを意味する。
PCMに導かれる良好なWLBの追求においては、
人のWLBの肯定面と否定面の両方を斟酌すべきである。
肯定面は、人間のwell-being、強さ、回復力、ならびに助けとなる環境と関係する。
否定面は、良好なWLBに対する欠乏と障害に関係し、
その人あるいはその人の環境の特質であるかもしれない。
個々の人間に帰するものの、良好なWLBはそれぞれの医療現場の
社会環境と文化によって影響される。

【勧告】
1) 良好なWLBの重要性は、特定の設定の集団的実践において、
個人だけではなく地域社会、施設、医療制度、および社会全体の
well-beingと繁栄を確保するためのさまざまな利害関係者の責任として
認識されるべきである。
2) 良好なWLBは、個人のwell-beingの一部であり、燃え尽き症候群と
人的資本の衰退に対抗する働きをするということを認識すべきである。
3) PCMにおける良好なWLBは、さまざまな利害関係者が、
個々の医師、他の保健専門職、患者、被雇用者、および他のさまざまな
立場の個人のWLBに継続的に関与することを必要とする。
4) 人間を中心とするならば、さまざまな利害関係者のWLBに関する
重大な関心および利害を認識すべきである。
5) 人間を中心としたアプローチに従って、共通基準が全てに適合すると
仮定せずに、良好なWLBとされるものを考慮する際に個人の好みと
価値観を受け入れるべきである。
6) 人間を中心としたアプローチに従って、良好なWLBの利益と
それを達成する方向に関して、医療系学生および専門職を教育・訓練すべきである。
7) 人間を中心としたアプローチによって患者に良好なWLBがどのように
助成される可能性があるかに関して、医療系学生および専門職を
教育・訓練すべきである。
8) 雇用者と機関は、人間を中心とした人的繁栄の開発を目指して、
被雇用者とその関係者の良好なWLBに関与すべきである。
9) 管理機関および組織は、医師とその他保健専門職と同様に、
医療現場における患者の良好なWLBを助成するために、
人間を中心とした政策およびプログラムを採用すべきである。
10) 良好なWLBを達成するために正規のプログラムと取り組みは、
この目標に対人関係が極めて重要であることを認識し、
その助成と開発を組み入れたものとすべきである。
11) 良好なWLBは、個人や他の利害関係者を搾取しない
構成な方法で追求すべきである。
12) 人間を中心としたアプローチにより良好なWLBを達成する方法は
継続的研究の課題とされるべきである。

https://www.m3.com/news/iryoishin/708900