2020年2月7日金曜日

脈拍、SpO2、ビリルビン濃度を同時計測できるウェアラブル型マルチバイタルセンサを開発、世界初

2020年1月31日(金)

横浜国立大学と横浜市立大学医学部小児科学は、
2020年1月22日、ゴム材料のような柔軟材料を用いることで、
光学的に新生児黄疸と経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)、
脈拍等複数バイタルサインを額から同時に計測できる
「ウェアラブル型マルチバイタルセンサ」の開発に
世界で初めて成功したと発表した。

◆3つのバイタルサインを同時計測、Bluetooth通信で送信

センサを開発したのは、横浜国立大学工学研究院の太田裕貴准教授、
横浜市立大学医学部小児科学の伊藤秀一主任教授、
魚住梓助教らの研究グループ。
新生児は胎内から胎外へ環境が変化することで、
臓器を始めとした体内環境が非常に不安定となり、
そのため、黄疸を起こすとされているビリルビン濃度を始めとして
複数のバイタルサインの経時的な計測が必要不可欠とされる。

研究チームでは、ゴム材料などの柔軟な材料を新生児と
デバイスのインターフェースに用いることによって、
新生児の負担が小さく、高密着に装着できる
ウェアラブル型マルチバイタルセンサを開発することで、
継時的な計測が可能となるかに取り組んでいる。

デバイス開発は、横浜国立大学工学研究院が担当し、
微細加工技術を用いて柔らかい基板上に LED、フォトダイオード(PD)、IC、
Bluetooth素子を載せた回路を作製、
その回路を、生体適合性が高く柔軟なシリコーンゴム材料の中に封入した。

今回、横浜市立大学医学部小児科学の協力により、
開発したデバイスを出生 0~5 日後の新生児に対し装着し、
作製したデバイスによる測定結果と、
従来から用いられている各種バイタルサイン計測デバイスによる
検査の結果を比較、相関があることを確認した。

研究チームは、新生児医療における重要なバイタルサインである
脈拍、SpO2、黄疸度(ビリルビン濃度)の測定については
現在、単独機器での計測しかできないのが現状で、
小型、ウェアラブル、個人で購入可能かつ同時測定可能な
デバイスが実現すれば、新生児の入院日数を短くし、
患者の金銭的負担と医師・看護師の負担を軽減することができる。

今後は、さらに心電や呼吸など他のバイタルサインの計測と連動し、
包括的に新生児の様々なバイタルサインを計測できる
ウェアラブルセンサを開発する予定。

https://medicalai.m3.com/news/200131-news-medittech?dcf_doctor=false&portalId=mailmag&mmp=AI200207&mc.l=566793847

2020年2月5日水曜日

ガン細胞に免疫システム回避を許さない-期待の新研究

Roshini Beenukumar, PhD

ガン細胞は、免疫システムを回避するために様々な工夫。
Nature誌の記事によれば、共著者であるバーゼル市、チュービンゲン市、
ハイデルベルク市の研究者チームが、
急性骨髄性白血病(AML)患者において、
化学療法耐性白血病幹細胞がどのように免疫システムを回避するのかの
メカニズムを明らかにした。
白血病幹細胞は、ナチュラルキラー(NK)細胞が感応するための
リガンド分子を抑制する事によって、NK細胞から逃げることが出来る。
この研究によって、回避のメカニズムを標的とし免疫応答性を
敏感にする薬剤が期待される事が明らかに。
この研究が成功すれば、AML治療の方法が全く新しいものに変わっていく。

◆ガン細胞はどうやって免疫システムを回避しているのでしょう?

ガン細胞は、免疫システムを回避するための複数の方法を駆使。
腫瘍細胞は、表面に抗原を提示するので、それが免疫細胞の標的に。
このプロセスは不都合な側面も持っており、
腫瘍細胞の遺伝子不安定性によって操作されるが、
腫瘍細胞の選択の際、
免疫細胞のサーベランスから逃れることも起こってくる。

主たる免疫回避のメカニズムは、
IDO(インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ)メカニズム。
IDO発現は、多くの腫瘍で上方制御され、
それによってT細胞の免疫性を抑制する。

腫瘍の免疫回避に影響を受けやすいいくつかの免疫細胞は、
(1)調整樹状細胞(DCs)と調整T細胞(Tregs)は腫瘍抗原に対する耐性を起こし、
(2)骨髄由来抑制細胞(MDSCs)は炎症性因子を誘起し腫瘍の進行をサポート。
(3)マスト細胞は上皮腫瘍形成に関与しているとの仮説。
複数のコンビネーションで免疫システムを回避する機構によって、
腫瘍周りの微小領域で免疫抑制が成され、
結果的に進行ガンにおいて転移が見られる。
 
◆急性骨髄性白血病と免疫治療-現行のアプローチ

急性骨髄性白血病では、骨髄幹細胞の異常な増殖と分化に特徴を持つので、
T細胞特異的免疫治療が選択され、
具体的には同種幹細胞移植が行われる。
抗体医薬の併用も、免疫治療の取り組みとして用いられる。
この併用法では、CD33のような白血病特異的抗原に
バクテリアや低分子の腫瘍毒性ペイロードを接合させ、
ガン細胞に選択的に送達できるように工夫。

抗CD33抗体医薬との接合は、
ゲムツズマブ オゾガマイシン(Gemtuzumab ozogamicin)が
AML治療のための抗体標的治療法として認可。
その他の著名な取り組みとしては、
キメラ抗原受容体を付加させたT細胞やCAR T細胞の療法が目立つ。
急性リンパ性白血病(ALL)と悪性B細胞リンパ腫では、
CAR T細胞療法が奏効率が高い。
AMLについても、CAR T細胞の療法の有効性を確認する
早期フェーズの臨床研究が進行中。

◆化学療法耐性幹細胞-AMLでよく見受けられる問題

AML患者は、治療後に寛解する多いが、その後再発する。
その原因は、化学療法耐性白血病幹細胞(LSCs)で、
その細胞が免疫システムを回避して治療耐性を持ってしまう。
現行の免疫治療の方法では、AMLの治療には適切ではない。
このLSCsのせいで、治療後に再発する。
Dr.Paczullaの研究チームによって、どのようにしてこの免疫システム回避が
起こるかのメカニズムが解明された。

◆免疫システムからガン細胞が自らを守るための
二つのキープレイヤーは、NKG2D-L と PARP1

NKG2Dは、NK細胞とT細胞に通常存在し、
「危険検知器」として機能している。
傷害されたり形質転換したり病原体に感染されたりした細胞を
除去するために働く。
NKG2D-Lは、MICファミリーとULBPファミリーに属し、
ストレス誘導リガンドを認識して問題のある細胞を除去するために機能。
Dr.Paczullaの研究チームは、
175人のAML患者由来の白血病細胞を分析し、
リガンドNKG2D-LはAMLの幹細胞以外の細胞に発現、
白血病幹細胞には発現していないことを明らかにした。
NKG2D-L発現AML細胞は、NK細胞によって除去されるが、
NKG2D-Lを発現していない白血病細胞は免疫システムを回避することが出来る。
これらの白血病細胞は、
形態学的未熟性・分子的あるいは機能的な
幹細胞性・患者由来異種移植モデルによる化学療法耐性などによって特徴。
「白血病幹細胞におけるこの免疫耐性の本質的なメカニズムは、
細胞表面に提示されるNKG2D-Lのような危険シグナルを抑制する事にある」
3人の責任著者の1人であるチュービンゲン大学病院と
German Cancer Consortium DKTK所属のDr. Helmut Salihは説明。

本研究のもう一つの重点は、
幹細胞性と免疫回避とのつながりを説明できた。
「幹細胞本体と免疫システムからの回避能とのつながりは、
これまで解らなかった」
バーゼル大学病院とバーゼル大学所属のDr. Claudia Lengerkeはコメント。

◆この免疫回避戦略を支えるメカニズムは何か?

新たにこの防御機構のキープレイヤーを紹介すると、
PARP1(ポリADPリボースポリメラーゼ1)という分子で、
主としてDNA損傷の修復を担いゲノムの全体性を維持する役割を持っているが、
さまざまなガンに関与。
いくつかのPARP阻害剤は、BRCA1/2変異卵巣ガンの進行期の治療に使う
オラパリブ(KuDOS/AstraZeneca製)のように、臨床での使用が認可。
NKG2D-Lを発現しない白血病幹細胞の免疫回避機構は、
PARP1によって仲介されている。
PARP1発現は、NKG2D-L の発現を抑え込み、
白血病幹細胞において上方制御され、
これによって免疫回避が行われる。
 
患者由来異種移植マウスモデルにPARP1阻害剤を適用したら、
白血病幹細胞はNKG2D-Lを発現する機能を回復した。
同モデルに対し、引き続いてモノクローナルNK細胞を移植したら、
腫瘍形成を抑制し、幹細胞は認識されNK細胞によって除去された。
 
◆今後の方針
 
免疫回避メカニズムに、PARP1を深く関与させるという考え方は大変面白い。
PARP1阻害剤は、AMLマウスモデルにおいては良好な結果が観察、
重要なことはガン患者に応用できるという事。
 
PARP1阻害剤を他の治療法と組み合わせれば、
特定の白血病幹細胞を標的として、AMLの長期に渡る回復が
可能となる日が来ると期待。
「私たちは、ガン細胞がどれほど賢く免疫システムを騙しているのかを明らかにした。
内在するメカニズムを解明したことによって、
これから私たちが反撃に出ることが出来る」
本研究の3人の責任著者の1人であるGerman Cancer Research Center と
 HI-STEM社に所属するDr. Andreas Trumpは説明。

白血病幹細胞が免疫システムを回避するメカニズムが解明。
このメカニズムに、PARP14を加えることによって新たな展望が拓ける。
化学療法耐性の幹細胞を、PARP1阻害剤と活性NK細胞との
組み合わせで撃破する。
本研究に参加した科学者チームは更なる臨床応用を目指し、
臨床評価とバリデーションの臨床研究を続けていく。

https://www.phchd.com/jp/biomedical/applications/evolving-science-for-the-future/preventing-cancer-cells-from-escaping-the-immune-system-a-promising-new-study

体を知ることからスポーツは始まる ~運動神経って何だろう?~

2019年3月29日

肉体を使って力と技を競う「スポーツ」。
近年は、科学技術を取り入れることで競技技術を向上させている。
最先端のスポーツ事情を「スポーツバイオメカニクス」という観点から探ってみた。
 
◆「スポーツバイオメカニクス」とは?

スポーツの習熟といえば、アスリートとコーチの知識と経験に基づく
主観的、試行錯誤的な方法によることが多かった。
近年は、科学的な視点からスポーツを分析する「スポーツ科学」が確立。
アスリートの知識と経験を科学により裏付けることで、
より客観的で効率的に習熟することが可能に。

「バイオとは『生体』、メカニクスとは『力学』。
これを組み合わせてできた言葉が、『バイオメカニクス(生体力学)』。
力学や解剖学を応用し、生き物の構造や運動を解析する学問で、
それをスポーツに応用したものが、『スポーツバイオメカニクス』」
人間の動きも自動車の動きも、力学的には同じもの。
人間の体は、力学だけでは説明できない。

「例えば、階段の上り下り。
力学では、階段を上るのはプラスの仕事。
体を持ち上げるので、エネルギーを使う。
反対に下りるのは、マイナスの仕事。
体を下ろすのに、エネルギーは必要としない。
実際は、人が階段を下りるときも、体が落ちすぎを防ぐエネルギーは必要。
そこで必要となってくるのが、『スポーツバイオメカニクス』という学問」

◆そもそも「運動神経」とはどのようなものなのか?
「スポーツ」も「九九」も要は脳の神経回路

スポーツバイオメカニクスで体の構造や動きを解析し、
そのデータをうまく取り入れることができれば、
子どものときからつきまとう運動神経の良しあしといった問題は解消できるか?

「『運動神経』とは、脳から筋肉に通じる神経の一部のこと。
運動することの『うまい下手』とは関係がない」
私たちが日ごろ使っている「運動神経がいい」という言葉は、
バイオメカニクスの考え方では不適当だ。
「運動の『うまい下手』を分けるのは、
脳に運動を司る神経パターンができているかどうか。
脳内の神経には電気信号が通るが、
同じ神経回路に電気信号が繰り返し通ることで記憶ができる。
運動がうまくできるということは、脳内で電気信号をコントロールして
主要な筋肉にタイミングよく適切に伝わることにより
思い通りの動きができるということ。
九九ができるようになったり、すらすらと漢字が書けるようになったり
するのも同じ仕組み」

◆生まれつき運動が苦手な人はいない

運動のうまい下手は、生まれる前から決まっているのではなく、
生まれた後の環境、つまり練習で決まる。
「よく『運動神経が悪いのは、親も運動が苦手だから』と
遺伝のせいにする人がいるが、これは間違った解釈。
自転車に乗れるようになるまで、繰り返し練習する。
これは遺伝ではなく、練習を重ねるから乗れるようになる。
練習期間には個人差があるが、
練習を重ねて乗れるようになるというところは誰でも一緒。
運動ができないことを遺伝のせいにして途中であきらめてしまうと、
学びのチャンスを逃す」

数回でできる人もいれば、100回かかってできる人もいる。
時間がかかってもできるまでやれば、1回でできた人と結果は同じ。
遺伝のせいだと途中で練習を投げ出してしまうと、
できるものもできなくなる。

◆スポーツの“未来”を明らかにする科学
バイオメカニクスで変化したスポーツ

運動能力を高めるためには、繰り返し練習をすることが不可欠。
スポーツをする上で、バイオメカニクスをどのように取り入れればいいか。
「スポーツバイオメカニクスによって動作を分析すると、
うまい人がどのようにしてその動作を行っているのかが理論的に分かる。
それが明らかになったら、その動作に到達できるような
反復練習のメニュー『ドリル』を提案。
ドリルを行っていれば、知らぬ間に理想の動作に近づくことができる。
これまでのコーチは、経験に根ざしていたので、
目標とするパフォーマンスの高い動作が分からないまま選手に教えることがあった。
求めるべき『解』が分からない状態。
バイオメカニクスを取り入れることで、
これまでのスポーツでは十分に把握できていなかった『解』が分かるようになった。
『解』が分かれば、あとはそこを目標に教えればいい」

従来のスポーツ界では、過去の映像と現在を比較して研究することで
選手の技術を向上させてきた。
バイオメカニクスを取り入れることで、選手のやるべきことが
さらに明確に見えてきた。
「これまで“過去”と“今”を比べることはできた。
“今”と目指すべき“未来”を比べることは、科学にしかできない」

◆デジタルシミュレーションが可能性を広げる

この「解」を求めるために使われている機器は、
主に人間の動作をデジタルデータとして記録する「モーションキャプチャー」、
体と地面のあいだに生まれる反力を計測する「フォースプレート」、
筋肉から発生する電位を計測して筋肉の活動を調べる「筋電計」の3つ。
これらのデータを基に、トップ選手がどのように動きをつくっているかを
知ることができる。
これを逆ダイナミクスという。

コンピューター内に人間のモデルを作り、
シミュレーションを行っていく方法も並行して試みる。
「シミュレーションできると、さまざまなメリットが生まれる。
通常のトレーニングでは、グラウンドなど広い空間が必要だが、
コンピューターならその必要はない。
選手にトレーニングでどこまで負荷をかけていいのか、
そのギリギリを見極めることもできる。
データから作り出したモデルなら、ケガをさせる心配がない」

◆アスリート指導に貢献するテクノロジー

スポーツにバイオメカニクスを取り入れることで、
選手に的確な指導が行えるようになったが、
トップアスリートにどのような影響を与えているのだろう。
「もしバイオメカニクスによって、トレーニング環境が完璧に整えられるとしたら、
あとは筋肉の質や骨格の長さといった遺伝的要因の勝負に。
今も将来も、完璧なトレーニング環境を整えることなどできない。
スポーツには、さまざまな可能性があって面白い」

テクノロジーが進化することで、トレーニング環境も進化する。
アスリートの成績も、環境がどれだけ整うかで変わってくる。
「スポーツ科学の分野は、『アーツ&サイエンス』だ。
『芸術と科学』となるが、この場合のアーツとは
『もしかしたらそうなるかも』と“予想”を立てること。
サイエンスは、『こうしたらこうなる』という“方法”を指す。
スポーツ科学では、『こうすれば必ずこうなる』という確実な“方法”で
指導した後、『もしかしたら、この選手はこうするともっとよくなるかも』という
“予想”を立てて指導する2層構造になっている。
昔は、“科学”がなくて“予想”だけで行っていたので、失敗も多かった」

昔は、選手に科学的根拠のない練習をさせて、
たまたまうまくいった選手だけが残った。
今では、科学をベースにした理論的な練習を行えるようになり、
脱落する選手が少なくなった。

◆データ分析の「解」は研究者からコーチへ

科学的に解析した結果は、どのようにアスリートにフィードバックされ、
成績の向上につながっていくのだろう。
「体を動かすタイミングは、研究データを見ればわかる。
動かす元になる筋肉のことが分かれば、
おのずとトレーニング方法も分かってくる。
選手へのフィードバックは、解析した研究者が直接行うのではなく、
コーチを通じて行っている」

データ分析で出た「解」をコーチに渡し、コーチはそれを自分の言葉で伝える。
これによって成績向上につながるだけでなく、
コーチと選手との信頼関係も深まる。

◆楽しさと達成感がスポーツ上達の鍵
小中学生にバイオメカニクスを取り入れるためには

アスリートの成績向上に欠かすことができない「スポーツバイオメカニクス」。
これを小中学生に取り入れて、上達させる方法はあるのだろうか?

「うまくなるには、『反復練習(ドリル)』を行う必要がある。
繰り返し練習することで、運動能力は向上する。
好きなことをやっていくことで、持続できる。
子どもは嫌いなことは続かない」

ドリルを行って、今までできなかったことができるようになれば楽しくなる。
そうすればまた練習する。
これを繰り返していくうちに、上達していくのだ。
「ドリルを行う際、まず親がやって見せるというのもいい方法。
サッカーだったら、リフティングを一緒にやってみる。
それも練習を楽しむためのひとつ」

楽しいと思えるようになるまでには、苦しいこともある。
何回練習してもできないとつらい思いをするけれど、
その先に楽しいことが待っている。
頑張ったからこそ、達成感を味わえるということも伝えておきたい。
「達成感を感じてもらえるようにしてあげるのも、大人の役割。
運動会の徒競走。
毎年ビリの子どもでも、昨年と今のタイムを比べれば速くなっているはず。
毎年運動会でビデオを撮って、ピッチとストライドを見比べるとか、
昨年と同じ順位でもタイム差がトップと縮まっているなど、
達成感を感じられるようなものを与えてあげる。
それが楽しさにつながり、運動会も好きになる」

◆遊びの動きがスポーツの基本動作

ドリルを行うのは、人生の中でいつでも可能ですが、
効果的な年齢は、4歳から6歳だ。
「脳が一番発達するこの時期は、神経回路も急激に作られるので、
運動能力も飛躍的に向上する」
昔の子どもはメンコや鬼ごっこなど、体を動かす遊びを通して、
運動の基本動作を学んでいた。
最近は、子どもが体を動かして遊べる環境が少なく、
遊びの中で動作を学ぶことが難しくなっている。
本来、新しい動きを習得することは、新たな知識を得ることと同じように楽しいこと。
速く走れるようになったり、ドリブルがうまくなったりするなどの
成功体験を得ることによって、練習を継続しようという気持ちを
持たせることができたら、トップアスリートも夢ではないかもしれない。

◎正しいフォームで走るためのドリル例1:お尻歩き

地面にお尻をついた状態で、交互にお尻を浮かせながら前進する。
背骨と体幹を意識することで、バランス感覚が鍛えられる。

◎正しいフォームで走るためのドリル例2:ホッピング

速く走るためには、足で素早く地面を蹴ることが大事。
両手を後ろに振って高くジャンプすることで、そのコツが身につく。

◎深代千之(ふかしろ・せんし)

東京大学大学院・総合文化研究科・教授。
トップアスリートから子どもの運動能力開発まで、
幅広い研究を行うスポーツ科学者。
日本陸上競技連盟より秩父宮章を受章。
日本バイオメカニクス学会会長、(一社)日本体育学会会長、
東京体育学会会長も務める。

https://sciencewindow.jst.go.jp/articles/2019/05/article031.html

「眠気」の正体が見えてきた!~1万匹のマウスと向き合い、睡眠の謎に迫る~

2020年01月30日

人は、睡眠と覚醒を繰り返す。
日常的な行動の仕組みは、実は“神経科学最大のブラックボックス”。
なぜ、私たちは眠らなければならないのか?

1998年、睡眠研究に大きな変化をもたらしたのは、
睡眠や覚醒に深く関わっている神経伝達物質「オレキシン」の発見。
オレキシンの発見者である
筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS)機構長の柳沢正史さんは、
睡眠の謎解明に挑み続ける一方、
睡眠障害の診療に貢献すべくベンチャー企業を立ち上げた。
          
◆睡眠時間の短い国、日本。睡眠不足は判断力や健康にも影響

日本では、仕事と私生活とのバランスを取り、
心身の健康を維持することで、QOL(Quality of Life:生活の質)を
向上させることに重きが置かれるようになってきた。

QOL と深い関わりがある健康を意識する時、
睡眠のことを気にかける人は多いだろう。
柳沢さんは、「日本は、最も睡眠不足な国である」と危機感を訴える。
「幼児も就寝時刻が遅くなり、睡眠不足は子どもの頃から始まっている。
これは、人生に大きな影響を与えてしまう」

睡眠不足が続くと、注意力や判断力が低下する。
高血圧、糖尿病、動脈硬化などの生活習慣病を発症させる危険性があり、
寿命を縮めるという報告も多い。
「疫学的には、睡眠と健康は関係がある。
メカニズムは、ほとんど何も分かっていない」

◆睡眠の謎 「機能」と「制御」
睡眠には、大きな二つの謎がある。
一つは「睡眠の機能」。
睡眠中に何かが脳内で回復していると考えられるが、
具体的に何が回復しているのか、
どうして睡眠が必須なのかは分かっていない。
「眠っている間も脳の代謝率は低下しないので、
単に休んでいるわけではなく、コンピューターに例えれば、
オフライン・メンテナンスのモードだと考えられるが、
具体的に何が起こっているかは分からない」

もう一つの謎は「睡眠の制御」。
人間でも、動物でも、毎日の睡眠量はほぼ一定に保たれている。
寝不足になると、その翌日は眠くなってたくさん寝る。
睡眠には恒常性があるが、睡眠量を調節するメカニズムは分かっていない。
「睡眠の制御と密接に関係しているのが眠気。長く起きていたり、睡眠が足りなくなったりしてくると、眠気が増して、最終的には眠ってしまう。この眠気が脳内でどのように制御されているのか、睡眠と覚醒を切り替える脳内のスイッチと、どのように結びついているかは、まったく分かっていない」
睡眠は、日本庭園などに使われている「ししおどし」で考えてみると分かりやすい。
ししおどしは、竹筒に少しずつ水を入れていき、
いっぱいになると、その重みで竹筒の頭の方が下がる仕組み。
ししおどしに水が入る状態が、人間でいうところの覚醒状態で、
竹筒に入る水が眠気だ。
人間も起きている間に、だんだんと眠気が増え、
眠気にあらがえなくなると竹筒の向きが変わるように、一瞬で睡眠状態に。
睡眠によって、眠気が解消されることで、再び覚醒状態となる。

柳沢さんはマウスをモデル動物として、
睡眠に関するこれら二つの謎に挑んでいる。
なぜ、マウスなのだろうか。
「ヒトやマウスに限らず、中枢神経系を持っている動物はすべて眠る。
より小さくて単純なショウジョウバエや線虫を使って
睡眠の研究をする人たちもいる。
それらは脳波を測ることができない。
行動学的に動いていないことを睡眠とみなすため、正確性に欠ける。
マウスは脳波を測ることができるので、
人間と同じように睡眠状態を脳波で見極めることができる」
マウスで発見した生化学的なメカニズムは、ヒトにも応用しやすい。

◆睡眠研究へと導いた「オレキシン」の発見
柳沢さんは、もともと睡眠とは関係のない研究をしていた。
1987年、血管を収縮させる作用をもつエンドセリンという物質を発見、
1991年、アメリカのテキサス大学に迎え入れられた。
まず、エンドセリンに関連する物質を一つ一つ調べていく研究に取り組んだ。

この研究のゴールが見え始めると、
柳沢さんは新たな研究テーマを探るようになった。
そこで目を付けたのが、「オーファン受容体」。
受容体というのは、細胞の表面などにあって、
特定の物質を受け取ることで、決まった働きをする。
受容体の中には、まだどのような物質を受け取って、
どのような働きをするのかがはっきりとしていないものもある。
オーファン受容体とは、そのような受容体を指す言葉。

「オーファン受容体は宝の山のようなもので、
オーファン受容体が受け取る物質を調べることで、
まだ知られていない新しい物質が発見できる」
脳の抽出物中に含まれるたくさんの物質の中から、
あるオーファン受容体に結合する物質として発見されたのが「オレキシン」。

オレキシンは、脳の中心部分に位置する外側視床下部で作られる神経伝達物質。
視床下部という場所は、食欲に関与している場所、
脳にオレキシンを投与するとマウスの食欲が増し、
空腹時にオレキシンの産生量が上がったりすることから、
最初は食欲に関係する物質だと思われていた。
「オレキシンを作る遺伝子を壊したマウスでも、
食べる量はあまり変わらず、痩せもしない。
神経細胞で発見される物質は、機能がなかなか特定できないものが数多くあり、
オレキシンもそのような物質の一つになってしまうのではないか」

そこで思いついたのが、夜間の行動を確認すること。
マウスは夜行性なので、夜間の行動を観察することで
異常が見つかるのではないかと考えた。
予想は的中し、暗視カメラで撮った映像に、
活発に動いていたマウスが突然動かなくなる様子が映っていた。
このマウスは、「ナルコレプシー」だと分かった。
ナルコレプシーは、日中に突然強い眠気が出現し、眠り込んでしまう睡眠障害で、
世界では2000人に1人、日本では600人に1人が罹患している。

ナルコレプシーは、オレキシンの欠乏によって引き起こされ、
オレキシンは覚醒状態を維持するのに重要な働きをしている。
分子レベルで睡眠の仕組みの一端が明らかになる画期的発見につながった。
「オレキシンは、睡眠の制御に大きく関わっている物質。
この発見によって、睡眠学が私の研究の大きな柱になった」

柳沢さんの研究は、オレキシン受容体に働きかけ、
オレキシンの作用を阻害する物質を有効成分とする睡眠薬の開発につながった。
この薬は、2014年11月に医療現場で使われ、効果を上げている。

◆「眠気」の正体はタンパク質のリン酸化?
2012年、IIISの機構長に就任した柳沢さんは、
分からないことばかりの睡眠の本質に迫るには、
睡眠に異常を起こす遺伝子を手掛かりにするしかないと考えた。

遺伝子をランダムに壊した大量のマウスを使い、1匹1匹の脳波を取って
睡眠に異常があるかどうかを調べた。
睡眠時間が極端に長く、覚醒している時間が短いマウスを発見し、
その特徴が代々引き継がれる「Sleepy(スリーピー)」という家系をつくった。
寝ても寝ても眠たいマウスSleepyを調べてみると、
体内の特定のタンパク質の特定の部位をリン酸化させる酵素「SIK3」を作る
遺伝子が変異していた。
 
◎フォワード・ジェネティクス
柳沢さんが行った、表に現れた特徴により個体を選抜して
その特徴の原因となる遺伝子を見つけていく手法は
「フォワード・ジェネティクス」と呼ばれている。
柳沢さんは、この手法によって、Sik3遺伝子のほかにも睡眠に関与する、
いくつかの重要な遺伝子を突き止めたが、
これは非常に手間と時間がかかる手法で、
その間に扱ったマウスの数は実に約8,000匹にもなった。
 
睡眠の仕組みにリン酸化が関わっているかもしれないと考えた柳沢さんは、
Sleepyの脳内で、どのくらいのタンパク質がリン酸化されているのかを調べた。
「SIK3がターゲットにしている少数のタンパク質だけでなく、
数多くのタンパク質のリン酸化が進んでいた。
Sleepyでないマウスについても、断眠させて眠い状態にして
タンパク質のリン酸化の状態を網羅的に調べた」

その結果、遺伝子の変異がない正常なマウスでも、
断眠させたマウスでは脳内にある多くのタンパク質のリン酸化が
進んでいることが分かった。
それらのタンパク質のうち、80種類がSleepy家系のマウスと共通するもの。
これらのタンパク質を、「睡眠要求指標リン酸化タンパク質(SNIPPs:スニップス)」
と名づけた。
このSNIPPsのうち、69種類は脳内の神経細胞のつなぎ目である
シナプスに存在するものだった。

なぜ、睡眠が必要なのかという問いに対し、
昔から考えられていた学説の一つに、「シナプスの恒常性説」がある。
この仮説は、覚醒状態が続いて高まったシナプスの結合強度が、
睡眠を取ることにより元の状態に戻り、恒常性が維持される。

「シナプスの恒常性説は、まだ証明されたわけではないが、
たくさんのSNIPPsがシナプスに存在することも、
シナプス恒常性説を前提に考えれば合理的に説明できる。
SNIPPsのリン酸化は、眠気の制御だけでなく、
睡眠の機能にも大きく関わっている可能性がある」

一方で、睡眠の制御の謎を解き明かすには、まだ相当時間がかかる。
「オレキシンは、“睡眠”と“覚醒”という状態を切り替えるスイッチの一部を
担っているが、そのスイッチは眠気と直接つながってはいない。
この研究の難しいところ。
眠気の正体は見えてきたが、“ししおどし”の原理のすべてが分かるまでの
道のりは長く、ようやく2合目か3合目あたりにたどり着いたところ」

◆睡眠脳波を手軽に測定したい。ベンチャー企業「S’UIMIN」の設立    
柳沢さんは睡眠の謎の解明に挑む一方、
ベンチャー企業「株式会社S’UIMIN」を設立、
睡眠障害の診療に貢献する取り組みも進めている。

厚生労働省の調査によると、睡眠で休養が十分にとれていないという人は
全体の21.7%に上り、増加傾向が続いている。
60歳以上では、3人に1人が睡眠問題に悩まされている。
この問題を解決するための第1歩は、睡眠を客観的に測定することであるが、
それはなかなかハードルが高い。

「睡眠中の脳波を測るためには、入院して、いろいろな機器を
体に取り付けて寝る必要がある。
日常とはまったく違う状態に置かれる訳で、
その人の本来の睡眠を測定しているとは言い難い。
眠りたいのに眠れない不眠を訴えている場合、
より眠れなくなってしまうので、この方法は使用できない実情がある。
より簡単に睡眠脳波を測定できるサービスを提供しようと、
S’UIMINを立ち上げた」

S’UIMINでは、自分で簡単に装着できて、
身に着けていることが気にならない脳波計を開発し、自宅で測定した
睡眠脳波を人工知能(AI)で分析する仕組みをつくろうとしている。

「50年ほど前、家庭用の血圧計が開発され、
それによって病院で測った血圧は普段よりも高めになることが分かり、
高血圧症の医療は根本から変わった。
これと同様のパラダイムシフトを睡眠の分野でも起こしたい」

S’UIMINは、2020年度中のサービス開始を目指している。
このサービスが広く利用されるようになれば、
睡眠障害を抱える人々の日常的な睡眠脳波が明らかになり、
睡眠医療が大きく変わるだろう。
同時に手に入る睡眠脳波のビッグデータで、
睡眠の新たな側面が分かるかもしれない。

健康のためには、「良い睡眠」を取ることが重要だといわれているが、
良い睡眠とはどういうものかは定義されていない。
睡眠脳波のビッグデータを解析して良い睡眠時の脳波の特徴量を
捉えることにより、良い睡眠の実体が見えてくる可能性もあるのだ。

睡眠の謎の解明や睡眠脳波を分析する仕組みの開発は、
あらゆる人のQOLの向上につながるものだが、
日本人の睡眠に対する考え方を変えられたら、と考えている。
「『睡眠負債』の考え方は、実は昔からあり、
ヨーロッパなどでは昼間眠かったら、『体調が悪い』と考えるが、
日本では電車内や会議中に居眠りしていても『普通』のことだと考える。
認識がまるで違っている。
睡眠の優先度が違う」

睡眠不足の体の中で何が起きているのか、
良い睡眠とはどういうものかを知ることで、
日本人の生活のリズムも変わってくるかもしれない。
「睡眠の仕組みが分かったとしても、睡眠不足を解消するには、
やはり、よく眠るしかない」
健康な生活のためには、意識の転換が必要であることを強調した。

◎柳沢正史(やなぎさわ・まさし)

文部科学省世界トップレベル研究拠点プログラム
国際統合睡眠医科学研究機構 機構長・教授

筑波大学医学専門学群・大学院医学研究科博士課程修了。
31歳で渡米、テキサス大学サウスウェスタン医学センター教授と
ハワードヒューズ医学研究所研究員を、2014年まで24年にわたって併任。
2001年~2006年 科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業
ERATO「柳沢オーファン受容体プロジェクト」総括責任者。
2010年 内閣府最先端研究開発支援プログラム(FIRST)に採択、
筑波大学に研究室を開設。
2012年~ 文部科学省世界トップレベル研究拠点プログラム
国際統合睡眠医科学 研究機構(WPI-IIIS)機構長・教授。
2019年~ JST未来社会創造事業「世界一の安全・安心社会の実現」領域
研究開発課題「睡眠脳波を指標とする睡眠と運動の自己管理による健康寿命延伸」代表者。
紫綬褒章(2016年)、朝日賞(2018年)、慶應医学賞(2018年)、
高峰記念第一三共賞(2019年)、文化功労者(2019年)など受賞・顕彰多数。
趣味はフルート演奏

2020年2月1日土曜日

ハンセン病:すべての人に尊厳を ハンセン病差別根絶を訴え宣誓 元患者やパラ選手ら /東京

2020年1月29日 (水)配信毎日新聞社

ハンセン病患者への差別をなくそうと、
元患者やパラアスリートが、27日に「グローバル・アピール」を発表、
共生社会の実現を訴えた。

都内であった式典で、「すべての人の尊厳と自由が尊重される社会の
実現を追求する」との宣言文をパラリンピアンたちが読み上げた。

式典は、ハンセン病の患者を支援している日本財団が、
1月最終日曜日の「世界ハンセン病の日」に合わせて毎年開いており、
今年で15回目。
パラリンピックを控えた今年は、国際パラリンピック委員会(IPC)も賛同し、
関係者が参加した。

式典で、ドゥエーン・ケールIPC副会長が、
「見かけが違うからと差別されることがあってはならない。
インクルーシブな社会を実現しましょう」とあいさつ。
ハンセン病元患者の森和男さんも、
「回復者も東京、香川、沖縄で聖火ランナーとして走る。
いわれなき差別の根絶を発信したい」

宣言文を読み上げたのは、
車いすラグビー日本代表の池透暢さんと
長野パラリンピック金メダリストのマセソン美季さん。
会場からは大きな拍手が送られた。

https://www.m3.com/news/general/724137

カマンベールチーズで認知症を防げる? 1日2ピースで

2020年1月30日 (木)配信朝日新聞


カマンベールチーズを食べると、
認知症の予防につながる可能性があるとの研究結果を、
東京都健康長寿医療センターなどの研究グループがまとめた。

認知機能が低下すると、BDNF(脳由来神経栄養因子)という
たんぱく質の血中濃度が減ることが知られるが、
カマンベールを食べることで上昇した。

東京都内の70歳以上の軽度認知機能障害の女性71人を
二つのグループに分け、
片方にカマンベール、もう片方にモッツァレラを1日約30g(2ピース)ずつ、
3カ月食べてもらった。
食べない期間を3カ月おいてグループを入れ替え、同様の試験を実施。

すると、カマンベールのグループは血中BDNFの値が約6%増えたが、
モッツァレラは約2%減る傾向が示された。

BDNFは、運動すると増えることが知られている。
センターの金憲経(キムホンギョン)・研究部長は、
「運動できないほど体力が低下した人でも、
カマンベールを食べれば改善を期待できそうだ」

ただ、チーズには脂質も多い。
「食べ過ぎは禁物。
健康維持には、適切な量の摂取と運動が効果的」と指摘した。

老年医学の国際科学雑誌(https://doi.org/10.1016/j.jamda.2019.06.023)に掲載。

https://www.m3.com/news/general/724416

納豆1日1パック、死亡率10%減 9万人を追跡調査

2020年1月30日 (木)配信朝日新聞

納豆やみそなどの発酵性大豆食品をよく食べる人は、
そうでない人と比べて10%死亡率が下がるという調査結果を、
国立がん研究センターの研究チームがまとめた。

チームは、国内の成人男女約9万人を1995年以降、
平均15年間追跡調査した。
食事内容を聞き、大豆食品や発酵性大豆食品を食べた量により
五つのグループに分類。
ほかの食品による影響や、降圧薬を使用しているかなどの影響を
取り除いて分析した。

発酵性大豆食品を最も多くとるグループ(1日におよそ50g)は、
最も少ないグループと比べて、男女ともに約10%死亡率が低かった。
50gとは、納豆1パック程度。
食品別に見ると、女性では納豆やみそを多くとると、
死亡リスクが下がる傾向が顕著だった。

https://www.m3.com/news/general/724501

がん免疫治療:免疫治療薬オプジーボ 対がん効果、血液で予測 本庶氏ら

2020年1月31日 (金)配信毎日新聞社

がん免疫治療薬「オプジーボ」の有効性を、
血液検査で予測する方法を見つけたと、
本庶佑・京都大特別教授らの研究チームが発表。

オプジーボは、一部の患者に優れた効果を示す一方、
効かない患者もいる。
この方法は正解率8割以上に達し、
個々の患者に最適な治療法の提供や医療費抑制につなげられる可能性がある。

本庶教授は、オプジーボを生み出した研究で
2018年のノーベル医学生理学賞を受賞した。
オプジーボは、肺がんや胃がんなどの治療薬として承認されているが、
効果がある患者は肺がんで2~3割。

チームは有効性の予測法を開発するため、
オプジーボを投与する前後で、肺がん患者から血液を採取。
治療効果があった25人と、なかった22人で血中の247種類の物質を調べると、
うち4種類の物質の量に効果との関係性が見いだせた。
4物質の量から、81%の確率で効果の有無を判定できた。

4物質は、免疫細胞の「T細胞」の働きに関連して増減すると考えられる。
薬が効かなかった患者の血中のT細胞の状態を調べると、
機能が低下している割合が高かった。
T細胞を調べれば、96%の確率で効果を予測できるが、
高度な技術が必要となる課題がある。

オプジーボは、100mg約17万円の高額な薬。
現在は、効果を知るため約3カ月間投与を続け、
がんが縮小するか調べている。
今回の手法なら、約4週間で効果を予測できる。

成果は30日、米電子医学誌「JCIインサイト」に掲載。

https://www.m3.com/news/general/724933