2022年2月4日金曜日
COVID-19に罹らない人を探す世界規模の計画が始動
Nature ダイジェスト Vol. 19 No. 2 | doi : 10.1038/ndigest.2022.220209
原文:Nature (2021-10-29) | doi: 10.1038/d41586-021-02978-6 | The search for people who never get COVID
SARS-CoV-2感染に対して生まれながらに抵抗性のある人を探す、国際的なプロジェクトが始まった。
こうした人を調べれば、新しい治療法の開発につながると期待されるからだ。
パンデミック(世界的大流行)を引き起こした新型コロナウイルス(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2;SARS-CoV-2)に対し、
生まれつき抵抗性があったら、どうだろう?
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患したり、このウイルスを広げたりする心配をしなくていいかもしれない。
このような特性を有する人を、研究者たちは探している。
研究に協力してほしいと思っている。
もしかすると、あなたも候補者かもしれない。
国際的な研究チームは、SARS-CoV-2の感染に抵抗性を与える遺伝的要因を有する人を世界的に探し始め、
その戦略を2021年10月にNature Immunology で発表した(E. Andreakos et al. Nature Immunol. https://doi.org/g4sh; 2021)。
このような人を見つけ、感染を防いでいる遺伝子を特定することが、COVID-19からの防御だけでなく、
感染の伝播も防ぐ「ウイルス遮断薬」の開発につながる。
「素晴らしいアイデアです。賢いやり方です」と、フレデリック国立がん研究所(米国メリーランド州ベセスダ)の
免疫遺伝学者Mary Carringtonは言う。
「成功が保証されているわけではありません。
このコロナウイルス科ベータコロナウイルス属のSARS-CoV-2に対する遺伝的抵抗性が存在するとしても、
その形質を持つ人は『ほんの一握り』かもしれません」と、
ルーバン・カトリック大学(ベルギー)の小児免疫学者で医師であるIsabelle Meyts。
彼女はこの取り組みを支えるコンソーシアムの一員である。
「問題は、抵抗性を示す人をどのように見つけるかです。
これは非常に難しいことですから、『やり遂げる』という強い意思が必要です」と、
テキサス大学サンアントニオ健康科学センター(米国)の感染症専門医Sunil Ahuja。
この論文の著者らは、該当者を探し出せると自信を持っている。
「1人見つかるだけでも、この戦略で最も重要なことは達成されるのです」と、
研究に参加するアテネアカデミー生物医学研究財団(ギリシャ)の免疫学者Evangelos Andreakos。
最初の段階は、対象を絞り込むことである。
COVID-19患者と長期間にわたって濃厚接触している人の中から、
ワクチン接種などの予防措置を取っていないのにSARS-CoV-2感染検査で陽性にならない、
あるいはこのウイルスに感染した細胞を除去する免疫応答が起こっていない人を探す。
特に興味深いのは、感染したパートナーと家やベッドを共有する人である。
こうしたカップルは「不一致カップル」として知られる。
Andreakosらの研究チームは、ブラジルやギリシャなどの世界10カ所の研究センターに属する研究者で構成され、
こうした基準をクリアした有力候補者を約500人、既に確保している。
彼らが論文を発表して以降、ロシアやインド在住の人も含む少なくとも600人から「私も該当する」との申し出があった。
この研究の共著者であるロックフェラー大学(米国ニューヨーク)の遺伝学者Jean-Laurent Casanovaは、この反応に本当に驚いた。
「SARS-CoV-2に曝露されても明らかに感染していない人が、自ら連絡をくれるなんて、思いもしなかった」。
目標は、少なくとも1000人の候補者を確保することである。
研究チームは既にデータの解析を開始している、とAndreakos。
候補者が多量のSARS-CoV-2に曝露されたことを証明するのは難しい。
「この研究はほぼ不可能かもしれません」とAhuja。
カップルの一方が無症状の濃厚接触者である場合、感染したパートナーが生きたウイルスを大量に排出していたことを確認する必要がある。
Ahujaによれば、不一致カップルは珍しくないが、これらの基準を満たしていて、
定期的に検査を受けているカップルが見つかることはめったにない。
現在では多くの人がワクチン接種済みのため、SARS-CoV-2に対する遺伝的抵抗性は目に見えなくなっている可能性があり、
この研究の候補者確保はいっそう難しくなっていると付け加える。
候補者を絞り込んだら、次は、抵抗性に関連する遺伝子を見つけ出すために、候補者のゲノムを感染者のゲノムと比較する。
抵抗性に関連すると考えられる全ての遺伝子を細胞や動物のモデルで研究し、
抵抗性との因果関係を確認することで、作用機序が確立されるのだ。
Casanovaの研究チームは、重症COVID-19への感受性を高める稀な変異をこれまでに特定しているが、
現在、研究は抵抗性を調べる段階に移っている(2021年11月号「COVID患者の重症化・死亡に自己抗体が関連か」参照)。
他の研究グループは、ゲノムワイド関連解析(GWAS)と呼ばれる遺伝学的研究で、
数万人のDNAにおいて一塩基変化(通常は弱い生物学的効果しかない)を調べ、
感染のしやすさ(感受性)の低下に関連する有望な候補変異を特定している
(2021年9月号「COVIDのリスクに関連する遺伝的バリアントが分かってきた」参照)。
「このような変化の1つは、血液型O型の原因遺伝子に見られます。
その防御効果は小さく、防御の仕組みも分かっていません」と、Carrington。
この最新のプロジェクトを支える研究者らは、明らかになる可能性のある抵抗性機構がどんなものか、仮説を立ててきた。
最も疑う余地がない機構と考えられるのは、一部の人には、SARS-CoV-2が細胞に侵入する際に利用する
機能的なアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)受容体がない、というもの。
査読前論文ではあるが、あるGWAS研究から、ACE2遺伝子の発現を低下させると考えられる1つの稀な変異が
感染リスクの低下に関連し得ることが明らかになった(J. E. Horowitz et al. Preprint at medRxiv https://doi.org/ghqgn5; 2021)。
この種の抵抗性機構は、後天性免疫不全症候群(AIDS)の原因ウイルスであるヒト免疫不全ウイルス(HIV)でこれまでに観察されている。
HIVはCCR5受容体を利用して白血球に侵入する。
AhujaとCarringtonは1990年代初頭から、白血球上のCCR5受容体の機能を喪失させる稀な変異の特定に役立つ研究に関わってきた。
「この知識は本当に役に立っています」とCarrington。
この知識からHIVの遮断薬という分類クラスが開発された。
2人の患者は、CCR5の抵抗性遺伝子を2コピー持つドナーから骨髄移植を受けた後、
HIVが明らかに除去された(2019年5月号「幹細胞移植後にHIVが消滅した第2の症例」参照)。
このような機構によらずにSARS-CoV-2抵抗性を示す人の体内では、
SARS-CoV-2に対する非常に強力な免疫応答が起こっている可能性があり、
それは鼻の内側を覆う細胞周囲で特に顕著なのかもしれない。
そうした人たちの中には、ウイルスの複製と新しいウイルス粒子への再格納を阻止する遺伝子や、
細胞内のウイルスRNAを分解する遺伝子の機能を増強する変異を持つ人がいるかもしれないと、Andreakos。
Andreakosは、今後も課題はあるが、生まれつきSARS-CoV-2に抵抗性である人を見つけ出すことについて楽観的である。
「私たちは、こうした人を見つけ出せる自信があります」
ガラスはカーボンニュートラルな未来にとっての隠れた宝石だ
Nature ダイジェスト Vol. 19 No. 2 | doi : 10.1038/ndigest.2022.220249
原文:Nature (2021-11-03) | doi: 10.1038/d41586-021-02992-8 | Glass is the hidden gem in a carbon-neutral future
ガラスは、リサイクルしても劣化しないし、カーボンフリーのガラスも製造可能だ。
それなのに、なぜ各国でガラスが地中に埋められてしまうのだろうか?
ガラスは、その特性を失わずに、無限にリサイクルできる。
それなのに、欧州諸国を除く大部分の国々が、いまだにガラスの大半をトン単位で埋め立て処分しているのはなぜか?
米国環境保護庁(EPA)によると、米国だけで2018年に約700万tのガラスが埋め立て処分場に運び込まれ、
それが一般固形廃棄物全体の5.2%を占めている。
プラスチックの使用量を削減しようという動きが、特に液体を入れる容器のための新素材探しを加速させている。
しかし、ガラスという既存の素材が、ネットゼロカーボン経済の主役になり得る。
ガラスの製造により、世界中で少なくとも年間8600万tの二酸化炭素(CO2)が発生。
そのほとんどは、ガラスをリサイクルすることで解消できる。
既存の技術を使って、ガラス製造工程を超低炭素にできる可能性もある。
今必要なのは、各国がガラスの埋め立て処分をやめ、ガラスのリサイクルを義務化することだ。
ガラスは、石灰石と砂とソーダ灰を混ぜて1500℃に加熱して作られる。
加熱工程は、天然ガスを熱源とし、ガラス製造時のCO2排出量の75〜85%を占めている。
残りの排出量は、原材料の化学反応によって生じる副産物による。
これらの原材料の一部は、粉砕された再生ガラス(カレット)で代替ができる。
カレットを溶かしても、CO2は排出されない。
ガラスを溶かすための炉は、原材料を溶かす場合ほど激しく燃やす必要がないため、さらにCO2排出量を削減できる。
ブリュッセルに本部を置く業界団体、欧州ガラスびん連合(The European Container Glass Federation;FEVE)によると、
炉に入れるカレットを10%増やすと、原材料だけでガラスを作る場合と比べてCO2排出量が5%減少する。
他のリサイクル方法と同様、いくつかの注意点がある。
窓ガラスに使われる板ガラスは、他の多くの用途に使われるガラスと異なり、不純物を含むことが許されない。
ジャムの瓶を溶かして窓ガラスを作ることはできない。
板ガラスのカレットは、さらに板ガラスを作るために使用できる。
いくつかの問題については、さらなる研究が必要になる。
政府が適切な資源を配分するためには、ガラスの回収とリサイクルのシステムを強化した場合の金銭的コストを知っておく必要がある。
ガラスはプラスチックよりも重いため、ガラスを代替品として使用すると、
輸送コストや排出量が増える可能性が非常に高く、その点も理解する必要がある。
ガラスのリサイクルに関して、欧州は世界で最も進んだ地域で、他の地域に水をあけており、さらなる高みを目指している。
研究者は、欧州のリサイクル制度がどのようにして生まれたのか、
その長所と短所、他の国にとっての教訓があるかどうかを調べることができる。
EU加盟国(27カ国)と英国では、ボトルなどの容器に用いられるガラスの4分の3がリサイクルのために回収。
その結果、EU内で製造される新しいガラスには、既に約52%のリサイクル材料が含まれている。
ガラス容器業界は、2030年までにEUで廃棄される容器ガラスの90%を回収するという目標を掲げている。
それ以外の国々は、必要とされるレベルに達していない。
ほとんどの国々が自国の活動を報告していないこともあって、
ガラスのリサイクルに関するデータを見つけるのは困難だ。
ガラスのリサイクルに関するデータを収集している国際機関もないようだ。
これは変える必要がある。
回収率とリサイクル率を上昇させるための各国の取り組みは進んでいる。
米国では、ガラス容器のリサイクル率は平均31%にすぎないが、
米国バージニア州アーリントンに本部を置く業界団体であるGlass Packaging Instituteは、
2030年までに50%に引き上げることを目指している(ガラスくず全体の56%を回収しなければならない)。
ヨハネスブルク(南アフリカ共和国)に本部があるGlass Recycling Companyが実施しているプロジェクトでは、
リターナブルびん(回収後に洗浄して繰り返し使用するびん)の利用促進などによって、
南アフリカ共和国全体のリサイクル率を、2005~06年の18%から2018~19年には42%まで高めた。
その他の国々(例えば、ブラジル、中国、インド)では、当局が沈黙しており、計画や意欲すらも明らかにしていない。
廃棄物を削減する法律とガラスの埋め立て処分を最終的に禁止する法律を備えた国を増やす必要がある。
そうすれば、ガラスをリサイクルする意欲が自然に高まる。
欧州では、廃棄される建築・建設資材の70%をリサイクルすることが既に義務付けられている。
残りの30%は、道路材料やその他の基本的な建築工程で骨材として使用されているが、これは貴重な資源の莫大な浪費だ。
製造時に混合した化学物質を溶かすプロセスを脱炭素化することでも、CO2排出量を削減できる。
FEVEが推進するFurnace for the Future(「未来の炉」の意味)という実証プロジェクトでは、
エネルギー源を天然ガスから電気に置き換えたハイブリッド電気炉を用いて再生ガラスのカレットを加熱し、ガラスを製造している。
この電力源を完全に脱炭素化することができれば、ガラスの製造工程全体で実質的にカーボンフリーが実現する。
ガラスは必要不可欠な素材だ。
ガラスの製造工程のカーボンフリー化は、比較的短期間で実現可能である。
ガラスを適切に回収してリサイクルするための法律と、埋め立て処理されないようにするための法律が必要だ。
地域社会や企業によるガラスの回収とリサイクルのためのインフラ作りを支援する必要もある。
解決策はもう出揃っており、比較的単純な解決策だ。
その実行が必要なのだ。
実行されれば、ガラスのグラスで祝杯を挙げることができるだろう。
2022年1月26日水曜日
アスリートたちからの支持を取り戻す アシックス、トップが語る「頂上奪還」への決意
東洋経済 2022.01.25
社長直轄プロジェクトで誕生した「メタスピード」により、再び世界の大きな大会で表彰台を目指すアシックス。
トップが語る頂上奪還作戦に込めた想い。
世界最大のスポーツ用品メーカー、ナイキが2017年に発売した高反発厚底シューズは、
「より速く走れるシューズ」として、マラソンを始めとする世界の長距離陸上界に大旋風を巻き起こした。
このナイキの新たなシューズを着用した選手が、主要な大会の表彰台を独占。
国内の実業団や大学生選手にも瞬く間に人気が広がり、
ついにかつての王者アシックスのシューズが正月の箱根駅伝から姿を消した。
トップランナーを始めとするアスリートたちからの支持を取り戻すべく、
同社は社長直轄のプロジェクトを立ち上げ、本格的なナイキ対抗モデルの開発に着手。
2021年春、“アシックス史上最速”の長距離レース用シューズ「メタスピード」を発売し、
反撃に向けて大きく動き出した。
アシックスは、再びランニングシューズの頂上を制することができるのか?
頂上奪還への決意とその手応えを、廣田康人社長に聞いた。
●敗北から学んだ教訓
――2022年の元旦、全国紙に「負けっぱなしで終われるか」というアシックスの反撃宣言ともいえる全面広告が掲載。
あれは廣田社長の指示か?
いいえ、考えたのは社員たち。
あのメッセージに込めた想いは、痛いほどよくわかる。
元旦にあんな刺激的な広告を出して、正月の駅伝で履いてくれる選手がまたいなかったら、
やけっぱちの広告だと世間から笑われる(笑)。
「本当に大丈夫か」と念を押したら、
「大丈夫です、ぜひこれで行かせてください」と言うので、よし、じゃあわかったと。
――頂上に当たるトップアスリートの世界でナイキに敗れ、そこから学んだことは何か?
大いに反省しないといけない。
当社は技術で勝ってきた会社。
それがナイキに、カーボンプレートを入れた厚底シューズでイノベーションを起こされ、やられた。
長距離選手のレース用シューズは、軽くするために薄いミッドソールが長年の常識だった。
アシックスはそこを極めて勝ってきた会社だけに、
固定観念に囚われて、自分たちで常識を打ち破ることができなかった。
そこが大きな敗因だ。
最新のテクロジーを積極的に活用して、イノベーションを起こそうとする挑戦心をつねに持ち続けなければ、
今の時代の激しい競争を勝ち残れない。
私自身、今回の一件でそのことを痛感させられたし、社員たちも大いに学んだと思う。
――元旦の実業団のニューイヤー駅伝では39人、箱根駅伝では24人の選手がアシックスのメタスピードを履いて走った。
どのくらいの数の選手が履いてくれそうか事前に聞いてはいたが、
実際に履いて走っている姿を見て安心した。
1年前の屈辱的な状況からは大きな前進。
復権に向けた手ごたえは感じている。
客観的に見たら、まだまだ圧倒的にナイキ。
アシックスが巻き返したとは言っても多少であって、この程度で喜んでいる場合じゃない。
夏までには、より進化させたメタスピード2を発売する。
さらに勢いをつけて、2023年の正月の駅伝はもっと大きくシェアを取り戻したい。
――ナイキの厚底シューズが登場したのが2017年で、三菱商事の役員だった廣田さんがアシックスの社長に就任したのが翌2018年の3月。
危機感を抱き始めたのはいつぐらいから?
就任1年目の2018年の途中から。
国内外のトップ選手がナイキの厚底シューズを履いて、すごいタイムを立て続けに出し始めていた。
国内の実業団や大学の選手たちも多くが履くようになって、
2019年の正月の2大駅伝はナイキに着用率で大きな差をつけられた。
その時は危機感を抱きながらも、私が細かく口を挟むことは控え、社員たちの頑張りを見守ろうと。
開発の現場は、どうしても今までのシューズの改良型でという発想から抜けきれない。
アシックスの存在感がますます薄れていってしまった。
●動き出した“頂上奪還”作戦
――それで痺れを切らし、2019年12月に10人の社員たちを会議室に集めて、
部門を横断する社長直轄プロジェクトの立ち上げを告げた。
その年の11月、出張先のアメリカのホテルで眠れずにいろんなことを考えていたら、だんだん悔しさが込み上げてきた。
創業者の鬼塚喜八郎は「頂上から攻めよ」と言っていたのに、
今のアシックスはその頂上のトップアスリートたちのところで完全に負けている。
やはりこれはあってはならんことだ。
こうなったら社長直轄でやるしかないと。
今振り返ると、社長直轄の部門横断プロジェクトにしてよかった。
意思決定が早い。
そうじゃなかったら、これだけのすごい靴を1年と少しで開発するのは無理だった。
今回のプロジェクトでは、トップアスリートたちと一緒になって理想のシューズを作るという点にこだわった。
その過程で、ストライド走法の選手用とピッチ走法の選手用の2つになった。
「選手が走り方を靴に合わせるのではなく、選手の走り方に合わせた靴を作るべき」という考えからで、
こうした点もアシックスらしいと思う。
――メタスピードを世界のトップ選手に履いてもらうには契約の壁も。
世界記録を持つエリウド・キプチョゲ選手を始め、マラソン世界ランキング上位のアフリカ人選手たちは
みなナイキ、アディダスがスポンサー契約を結んで囲い込んでいる。
世界ランキング上位の選手との契約にはお金がかかるし、資金力のあるナイキなどにすでに押さえられている。
未来のメダリストの育成に力を入れ始め、2020年にケニアで「頂上キャンプ(ASICS CHOJO CAMP)」を立ち上げた。
アフリカ全土から将来有望な若いランナーを集め、優秀な指導者の下で練習してもらう合宿所。
アフリカ、特にケニアやエチオピアには、ものすごい可能性を秘めた若い選手たちがたくさんいる。
そういう選手たちが50人ほど集まり、頂上キャンプで日々練習に励んでいる。
その中から、大きなレースでメタスピードを履いて表彰台にのぼる選手も出始めており、
今後の世界での活躍を大いに期待している。
アメリカでも、同様のキャンプを今年立ち上げる予定だ。
●海外市場では販売好調
――直近の四半期決算を見ると、足元の業績自体は非常に好調。
いくつかの要因がある。
まず、アメリカでのカジュアル路線の失敗を経て、
コアはあくまでランニングシューズであって、ここを徹底的に強くして、
「日米欧の市場でトップをとる」という方向性と目標を社内で明確にした。
本社と海外販社が同じ方向を向き、一丸となって販売強化に取り組んできた成果が出始めている。
商品力もこの1、2年で確実に上がった。
「ゲルカヤノ」を始めとする一般市民ランナー向けの代表的なシューズがモデルチェンジでより強力になったし、
バウンス(弾む)系の「ノヴァブラスト」など、若い世代を意識した新たな商品が出てきてラインナップも充実した。
総合的な競争力が上がってきたところ、コロナ下での健康対策として屋外でランニングをする人が世界的に増え、
その追い風にうまく乗ることができている。
2021年の第3四半期(1~9月)決算では、
欧米など海外でのランニングシューズの販売が、コロナ前の2019年と比べても大きく伸びた。
――国内では、ランニングシューズ市場の多くを占める一般市民ランナー用でもナイキ人気が高まり、
アシックスは販売で苦戦を強いられている。
国内と海外では状況がずいぶん違う。
アスリート用に関して言えば、海外でもやはり今はナイキが非常に強い。
そうした頂上からのシャワー効果がどこまで一般市民ランナーに及んでいるかというと、
日本と海外では大きな違いがある。
ランニング人口が世界最大のアメリカを例に取ると、
全米各地のランニング専門店で一番売れているブランドは、昔も今もブルックス。
今は2位の座を、当社とホカオネオネが競っている。
アメリカに次いで大きなヨーロッパ市場では、アシックスが近年ずっと販売首位で、
シェアが35%ぐらいにまで上がってきた。
ヨーロッパでも上位を争う主要なライバルは、ブルックスなどランニングを専門とするメーカーが中心。
一方、国内は一般のランニング愛好家の間でも、ナイキのシェアが非常に高くなった。
国民性の違いもあるだろうが、何と言っても注目度の高い箱根駅伝の影響が大きいと思う。
ナイキの厚底が出てきてから、箱根駅伝でのシューズの戦いにも関心が集まって、
そこでのナイキ旋風がメディアで大々的に取り上げられた。
販売への影響は大きかったと思う。
●頂上にこだわる理由はプライド
――頂上のトップアスリートの世界で再び勝てば、大学生ランナーたちも箱根駅伝で履くようになって、
ひいては一般市民ランナー向けの販売シェアも取り戻せると?
そう期待している。
商業的な部分も当然あるが、頂上にこだわる一番の理由は、アシックスとしてのプライド。
この会社は、トップ選手を始めとするアスリートたちとともに歩んできた歴史があり、それが大きな誇り。
何としても頂上を再び取り戻し、アシックスのシューズを履いた選手に表彰台に立ってほしい。
頂上をとってこそのアシックスだ。
――正月の駅伝ではアディダスも巻き返すなど、ライバル他社も「打倒ナイキ」に向けて動いている。
どの会社も、最新のテクノロジーを駆使したレース用のシューズを開発して、
ナイキの牙城を崩そうと必死になっている。
まさに戦国時代。
ちょっとシェアを取り返したぐらいで安心していたら、
頂上を奪い返すどころか、あっという間に競争から脱落する。
挑戦者として動きを止めず、頂上での勝利を目指して、前へ前へと進んでいく。
すでに社内では「メタスピード2」の開発を終え、その次の「3」に向けて動き始めている。
頂上を巡る戦いは熾烈だが、アシックスはランニングシューズをコアとするメーカー。
そのプライドにかけても、ここで負けるわけにはいかない。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/29544
「セカンドライフ」の二の舞は避けられるのか メタバース沸騰が「過去のブーム」とまるで違う点
東洋経済 2022.01.13
あっという間に衰退したセカンドライフの時代と現在とでは、何が違うのか?
技術や価値観など、さまざまな面から考察した。
にわかに沸騰するメタバース市場。
VRデバイスやスマートフォンを通じ、人々が気軽に交流できるようになった仮想世界で今、
世界中の種々雑多な企業が新規事業立ち上げや巨額投資に勤しんでいる。
メタバースブームは、今回が初めてではない。
過去のブームの象徴的な存在が、アメリカのリンデンラボが、2003年から運営する「セカンドライフ」だ。
日本でもサントリー、ソフトバンクモバイル(当時)、電通、三越などの大手企業が続々参画。
セカンドライフ内に仮想店舗を出したりマーケティング活動を行ったりと、2000年代初頭から一大ブームとなった。
リンデンラボは自社サービスを指すものとして、当時から「メタバース」という言葉も用いている。
空間内ではリンデンドル(空間内の通貨)での取引や、リンデンスクリプト(空間内で創造物を作るための簡易プログラミング言語)を
使ったクリエーターの呼び込み・空間の拡張も行っていた。
2007年をピークに、アクティブユーザー数は減少に。
セカンドライフ自体は現在も稼働しているものの、企業は相次いで撤退。
あっという間に”オワコン”と化した。
今回のメタバースブームも、一時的なものにすぎないのでは?
セカンドライフの時代と現在とでは何が違うのか?
当時から大きく事情が変化した3つの点。
●デバイスの発展で「大衆化」
1つ目は、デバイスやネットワークの劇的な進化。
当時は初代iPhone(2007年発売)の普及前で、メタバースに参加できたのは一部の消費者のみ。
その状況が、スマホやアプリの普及で一変。
若年層も含め、誰もが簡単にメタバースにアクセスできるようになった。
2020年10月、メタ(フェイスブック)が発売したヘッドセット型のVRデバイス「オキュラス・クエスト2」も、
市場拡大の下地をつくるのに一役買っている。
販売実数は公表していないが、「売れ行きも非常に好調」(フェイスブックジャパンの味澤将宏代表)。
先代機に比べ処理速度・操作性を改良し、価格は下げた(先代機は4万9800円~、新型機は3万3800円~)。
「メタバースは、没入感のある仮想世界を実際に体験しないと(面白さや利便性が)わからない。
オキュラス・クエスト2はそのミッションの達成に向け、非常にいいスタートを切れている」(味澤氏)。
2つ目の変化は、スマホの普及にも後押しされる形で醸成されたデジタル文化。
SNSが一般化し、リアルと同一でないバーチャルのアイデンティティを持つことが当たり前化した。
「女子高生にインタビューすると、学歴よりもインスタグラムのフォロワーがほしいという声をよく聞く。
彼女たちにとって、デジタル世界のアイデンティティがリアル世界より勝る。
この価値観は、アバターを介して仮想空間で他人と交流するメタバースと非常に相性がいい」。
ブロックチェーン技術を用いたコミュニティサービスなどを展開するベンチャー・ガウディの石川裕也CEO。
「技術やサービスがより洗練されていくことで、リアルが主でバーチャルが従だった価値観が薄れ、
バーチャル上の個性や生活が主という時代が来るかもしれない」。
VRゲームを皮切りにメタバース事業の拡大を志向するベンチャー・サードバースのCEOでgumi創業者の國光宏尚氏。
このような価値観の変化も、メタバースの発展に影響しそうだ。
●個人が「稼げる」新しい仕組み
3点目で最も大きい変化が、ユーザーや企業が「稼げる」機会の拡大だ。
セカンドライフの時代、インターネット上で決済すること自体がまだ定着していなかった。
EC(ネット通販)やサブスクリプションサービスの普及で、スマホやPCでデジタルにお金を払うことは日常化した。
メタバースを取り巻く経済圏をさらに強力にするのが、
NFT(Non-Fungible Token=非代替性トークン)だ。
これまでは”コピー上等”だったネットの世界に「本物・偽物」「所有」「資産化」といった、
フィジカルなものの価値を保証するのと同じ概念が根付き始めている。
【キーワード解説】
NFT:Non-Fungible Token(非代替性トークン)の略。
「電子証明書」のようなもので、改ざんが難しいブロックチェーン技術を用い、
アートやゲームアイテムなどのデジタルデータに作者の情報などを記載。
その作品が唯一無二のものを証明。
第三者へ転売も可能で、売買金額の一定割合を原作者に還元するプログラムを書き込むこともできる。
実際、世界中の企業がメタバース上でのNFTビジネスに動き始めている。
アメリカのナイキは、ブロックチェーン技術を用いるバーチャルスニーカー販売の企業を2021年12月買収。
アメリカでメキシコ料理チェーンを展開するチポトレは、メタバースプラットフォーム「ロブロックス」内に出店。
リアル店舗でブリトーと引き換えられる限定コードを配布するなど、
リアル・バーチャル横断の取り組みを行っている。
デジタル上の資産を、個人でスムーズに売買できるシステムも整い始めた。
世界最大のNFTマーケットプレイス「オープンシー」では、
ブロックチェーンゲームのアイテムやデジタルアートが、イーサリアムなどの暗号資産を用いて取引されている。
ブロックチェーンを使ったゲームなら、ゲーム内で創造した成果物などに金銭的価値をつけられる。
「数年内には、メタバース内で家などを建ててNFTとして販売し、親より稼ぐようになる子どもが続出するだろう。
メタバースを通じて、学歴や資格などで決まってきたリアル世界のヒエラルキーから解放されるかもしれない」(サードバースの國光氏)。
リアル世界と遜色ない稼ぎ口が発展すれば、そこで活躍したいと考える個人や企業がよりメタバースに集まりやすくなる。
●参入各社の「同床異夢」
セカンドライフ時代との技術や価値観の違いは、確かにありそうだ。
メタバースがマスに定着するかを占ううえでは、拭えない懸念も。
1つは、デバイスやVR制作の技術が、かつてより進化したとはいえ未熟だという点。
それらを使う側の企業も、技術の特性や現時点での限界を深く理解しないまま踏み込んでいるケースが少なくない。
法人向けにメタバース関連のコンサルティングや制作支援を行うSynamon(シナモン)の武井勇樹COO(最高執行責任者)は、
「顧客企業のアイデアの中には、そのまま実装するとユーザーがVR内で酔ってしまうようなものもある。
そういう場合には、軌道修正を提案。
細かな調整を怠ると、せっかく時間とお金をかけて行ったイベントなのにユーザー離れを起こしたり、
VRそのものに”がっかり感”を持たれてしまう危険も」。
もう1つの懸念は、業界内が決して”一枚岩”ではないという点。
2021年12月、技術・サービスの普及などを目指す業界団体・日本メタバース協会が設立されたが、
暗号資産系企業4社が音頭を取る組織構成に対し、
業界内外から「当事者不在では」と疑問の声が。
「メタバース=NFTではない。
声の大きい人が『これがメタバースの定義だ』と言うと、(一般の理解が)その通りになってしまう。
それは業界の健全な発展にとっていいことか?」(メタバース関連企業幹部)。
参入企業が急増しているだけに、メタバースで成し遂げたいビジネスがバラバラになるのはある程度仕方がない。
互いの差異に折り合いをつけつつ協力関係を築けるかが、今後の業界発展のカギに。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/29433?utm_campaign=EDtkprem_2201&utm_content=502526&utm_medium=article&utm_source=edTKO#contd
2021年11月12日金曜日
一斉休校で感染抑制できず 研究者「メリットない」
2021年11月11日 (木) 共同通信社
新型コロナウイルスの最初の感染拡大を受け、
政府が昨年2月に要請して全国で実施された小中高校などの一斉休校に感染拡大を抑える効果はなかったとの研究結果を、
学習院大や静岡大のチームが10日までに米医学誌ネイチャーメディシンに発表。
全国847自治体のデータを分析したところ、
休校を実施した自治体としていない自治体で感染者数に明確な差がなかった。
学習院大の福元健太郎教授(計量政治学)は、「休校のメリットはなかった」と指摘。
昨年春と現在では感染状況は異なるが、休校には学習時間の不足や健康の悪化、虐待の増加などの問題点があり
「今後実施を検討する際は非常に慎重に考える必要がある」
一斉休校は、昨年2月27日に安倍晋三首相(当時)が全国の小中高校に要請すると表明して実施されたが、
効果の評価は定まっていなかった。
分析は、感染者数のデータが得られる847自治体が対象。
3~6月で、休校している自治体としていない自治体の感染者数を比較した。
直近の感染者数や子どもの数、病院の数など地域のさまざまな事情が似た自治体同士を組にして、
休校の有無が与える影響のみを分析できるようにした。
その結果、休校の有無で感染者数に統計的に意味のある差はなかった。
福元教授は、休校していても学童保育で体育館や図書館に子どもが入れたことや、
開校していた学校でも感染対策をしていたことが理由とみている。
https://www.m3.com/news/general/982569
iPSで免疫細胞「キラーT細胞」に高い増殖力、京大iPS研が成功
2021年10月21日 (木) 京都新聞
ヒトのiPS細胞(人工多能性幹細胞)で作った免疫細胞「キラーT細胞」に高い増殖力を持たせることに成功したと、
京都大iPS細胞研究所が発表。
がん免疫療法などに役立つ可能性がある。
国際科学誌モレキュラー・セラピーに掲載。
免疫細胞を体外で培養し移植する手法は近年、がんなどの新たな治療法として注目される一方、
培養過程で細胞の老化や疲弊によって増殖力が低下していくことが課題だった。
これまでもiPS細胞で若いキラーT細胞を作ることはできたが、増殖力を十分に担保するのは難しかった。
同研究所の金子新教授らは、iPS細胞からキラーT細胞に分化誘導する際に生理活性物質
「インターロイキン21」などを加えることで、成熟度が初期段階にあたる活発なキラーT細胞を作製。
細胞の増殖力を調べたところ、iPS細胞の元となったT細胞に比べて千倍以上に増え、
マウス体内での残存期間も大幅に改善した。
がんのモデルマウスに移植すると腫瘍の成長を抑え、
何も移植しない場合より生存日数が少なくとも20日以上長くなった。
金子教授は「iPS細胞を使うことで、若くて活発な免疫細胞を大量に作ることが可能になった。
移植時の合併症リスクも軽減できる。今後は臨床応用につなげていきたい」
https://www.m3.com/news/general/976896
2021年9月19日日曜日
台湾から「日本ありがとう!」…ワクチン供与にお礼のマスク124万
2021年9月18日 (土)配信読売新聞
日本政府から新型コロナウイルスワクチンの無償提供を受けた返礼として、
台湾の不織布メーカー「易廷企業」が17日、全国の市町村長らで発足予定の「日台共栄首長連盟」に
同社製のマスク124万枚を寄贈した。
全国82自治体に届けられる。
マスクは、今年6月4日に日本政府が最初に台湾に供与したワクチン(124万回分)にちなんだ枚数で、
「日台友好 日本ありがとう!」と記された段ボールに詰められている。
埼玉県新座市で行われた寄贈式には、台湾の台北駐日経済文化代表処の謝長廷代表(駐日大使に相当)が出席。
謝氏は「日本と台湾は長きにわたり助け合う絆がある。
このパワーを世界に広げ、次の世代に継承したい」とあいさつ。
連盟幹事長に就く同県本庄市の吉田信解・市長は
「本当にありがたい。より一層、日台の友好に努めたい」と謝意を示した。
https://www.m3.com/news/general/966401
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