2019年10月16日水曜日

リチウムイオン電池開発の旭化成・吉野彰氏ら3人にノーベル化学賞

2019年10月9日

2019年のノーベル化学賞を、
携帯電話やパソコン、電気自動車などに広く使われている
リチウムイオン電池を開発した旭化成名誉フェローで
名城大学教授の吉野彰氏(71)ら3人に授与すると発表。
IT時代の進展に大きく貢献したことが評価された。

日本人の化学賞受賞は、2010年の鈴木章氏、根岸英一氏以来で8人目。
日本人の各賞受賞者は合わせると27人。

吉野氏と共同受賞したのは、
米国テキサス大学オースティン校教授のジョン・グッドイナフ氏(97)と
ニューヨーク州立大学ビンガムトン校教授のスタンリー・ウィッティンガム氏(77)。
97歳のグッドイナフ氏は、最年長受賞記録を更新した。
それまでの記録は、昨年物理学賞を受賞したアーサー・アシュキン氏の96歳。

授賞式は、12月10日にストックホルムで開かれる。
賞金900万スウェーデン・クローナ(約9700万円)が吉野氏ら3人に贈られる。

吉野氏は、1948年1月30日生まれ。
1970年京都大学工学部卒、京都大学大学院工学研究科修士課程修了後、
旭化成に入社。
2003年、旭化成グループフェローに就任。
同氏は、同じ化学賞を受賞した白川英樹氏が発見した
導電性高分子のポリアセチレンに着目、
充放電可能な2次電池の開発を始めた。

コバルト酸リチウムを正極とする2次電池を試作後、
1985年にリチウムイオン電池の開発に成功した。
リチウムイオン電池は、起動力が大きく小型化も可能。
携帯電話、ノートパソコン、電気自動車などに使われている。

吉野氏は受賞決定直後、ノーベル財団のインタビューに次のように語った。
「私は基礎研究を長くやってきた。
1981年からリチウム電池の研究を本格的に始め、
1985年に作ることができた。
それまで長い研究プロセスがあった。
気候変動は非常に大きな人類の問題だと思う。
リチウムイオンは電気を蓄えることができるので、
持続可能な社会にふさわしい思っている」

吉野氏は、日本メディア向け記者会見で、
「ストックホルムがリチウムイオン電池を評価してくれたことをうれしく思うし、
(受賞は)若い研究者の励みになってくれると思う」、
研究者のあり方として、
「頭の柔らかさと執着力が必要。
剛と柔のバランスが大切だ」

吉野氏は、昨年の第34回日本国際賞を受賞。
同賞受賞者発表記者会見で、
「リチウムイオン電池については、多くの研究者がその後も開発に携わっているが、
若い研究者が私の受賞を契機に素晴らしいイノベーションを生み出してくれる
と思う」などと喜びを語っていた。

ノーベル化学賞は、日本人ではこれまで1981年の故福井謙一氏、
2000年の白川氏、2001年の野依良治氏、2002年の田中耕一氏、
2008年の故下村脩氏、2010年の鈴木氏と根岸氏が受賞。

http://scienceportal.jst.go.jp/news/newsflash_review/newsflash/2019/10/20191009_01.html

今年のノーベル物理学賞は宇宙の理解を大きく前進させた欧米の3氏に

2019年10月8日

2019年のノーベル物理学賞を、
宇宙理論や太陽系外惑星発見を通じ、壮大な宇宙についての
人類の理解を大きく前進させた、
米国、スイス、英国の大学の3氏の研究者に授与する、と発表。
日本人の受賞者はなかった。

3氏は、米国・プリンストン大学のジェームズ・ピーブルズ氏、
スイス・ジュネーブ大学のミシェル・マイヨール氏、
ジュネーブ大学と英国・ケンブリッジ大学のディディエ・ケロー氏。
授賞式は、12月10日にストックホルム。
賞金900万スウェーデン・クローナ(約9700万円)の半分は
ピーブルズ氏に、残り半分がマイヨール氏とケロー氏に贈られる。

ピーブルズ氏は、「宇宙背景放射」と呼ばれる天体現象などの
理論研究を通じ、宇宙がその始まりである「ビッグバン」の直後から
膨張を続け、現在の姿になるまでの進化を理論的に解明した。

マイヨール氏とケロー氏は、南フランスの観測施設を使って、
1955年に地球から約50光年離れたペガスス座の方向の宇宙に
太陽系外惑星が存在することを初めて確認。
この惑星は、木星のようなガスでできた惑星だった。

ケロー氏らの画期的な宇宙観測の前は、
惑星は太陽系にしかないと考えられていた。
同氏らの業績の後、現在までに4000以上の太陽系外惑星が確認。
この中には地球に似た惑星も含まれ、生命存在への期待も高まっている。

マイヨール氏は、2015年に科学の発展に大きく貢献した研究者に贈られる
「京都賞(稲盛財団主催)」を受賞。

http://scienceportal.jst.go.jp/news/newsflash_review/newsflash/2019/10/20191008_01.html

今年のノーベル医学生理学賞は米英の3人に 授賞理由は「細胞の低酸素応答の仕組みの発見」

2019年10月7日

スウェーデンのカロリンスカ研究所は7日、
2019年のノーベル医学生理学賞を、
細胞が酸素不足の環境でも応答する仕組みを解明した
米国と英国の3人の研究者に授与する、と発表。
授賞理由は、「細胞の低酸素応答の仕組みの発見」。

同賞は昨年、本庶佑氏が免疫反応にブレーキをかけるタンパク質を見つけ、
画期的ながん治療薬の開発に道を開いた業績で受賞したが、
2年連続の同賞日本人受賞にはならなかった。

ノーベル医学生理学賞に選ばれたのは、
米国ジョンズホプキンズ大学のグレッグ・セメンザ氏、
英国オックスフォード大学のピーター・ラトクリフ氏、
米国ハーバード大学のウィリアム・ケーリン氏。
授賞式は12月10日にストックホルムで開かれ、
賞金900万スウェーデン・クローナ(約9700万円)が3氏に贈られる。

低酸素応答とは、酸素濃度が低い環境下でも細胞が恒常的に働く機構のこと。
3人は、低酸素状態になると、体内で「HIF」と呼ばれる特別なタンパク質が
大量に作られ、酸素を取り込んでその状態に適応することなどを解明した。
低酸素応答は、がんや虚血性の疾患、免疫疾患などの病気でも見られ、
こうした病気と密接に関係している。
これは生命活動の基本で、今回これらの病気の研究や治療法に道を
開いたことが評価された。

セメンザ氏は、科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業(ERATO)で、
末松誠慶応大学客員教授(現・日本医療研究開発機構理事長)と共同で
2009~2014年、新たな代謝システムを探索する国際プロジェクトの研究総括を務めた。

http://scienceportal.jst.go.jp/news/newsflash_review/newsflash/2019/10/20191007_01.html

2019年10月3日木曜日

左利きには4つの遺伝領域が関連していると判明

2019.09.25 12:30 GIZMODO

左利きさ~ん、なんだかちょっとうれしいニュースですよー!
このたびイギリスのオックスフォード大学の研究により、
人のゲノムには左利きと関連している遺伝領域があることが判明。
これらの遺伝領域は脳の形成に関係、
特に言語をつかさどる脳の部分同士をつなぐ白質路に違いが出る。

人間だけ左利きが少ない

だからどうなの?って思うかもしれませんが、
じつは左利きの生物学的な意義はふか~く、
人間と動物を区別する特徴のひとつ。

研究論文を発表した研究者のひとり、Dominic Furnissによれば、
動物の場合はほとんどが右・左利きとほぼ半々なのに対して、
人間だけは左利きが約1割しかいないんだとか。
先史時代の壁画の分析結果からも、
人間は少なくとも過去1万年の間はずっと90%右利き、10%左利きだった。

そのように極端に少ないせいからか、左利きの人は昔からアンラッキーだとか、
災いをもたらすだとかいろいろ言われてきた。

英語で「右」は「right=正しい」、フランス語の「左」は「不器用」という意味も。
日本も、学校で左利きをむりやり右利きに矯正、
駅の改札はいまだに右利き用に設計され、
左利きには「ピピッ」とやりづらかったりする…。

左利きの遺伝的な要因

人間の生存には有利ではないようにも思える左利きですが、
なぜそもそも1割だけ左利きになるんでしょう?

左利きになるかならないかは、この研究以前にも
遺伝子の影響が絡んでいることがわかっていた。
オックスフォード大学によれば、以前行われた双子の研究から、
だいたい利き手を決める要因の25%は遺伝子に由来している
どの遺伝子が関係しているのかは、これまで特定できなかった。

今回の研究で、UKバイオバンクからおよそ400,000人分
(うち左利き38,332人)のゲノムを分析、
4つの遺伝領域を特定することに成功
そのうちの3つは、脳の発達と構造に影響するタンパク質と
関わっていることもわかった。
これらのタンパク質は、細胞のかたちやはたらきを定める細胞骨格に関係

脳の構造に違いが

研究者たちは、さらに約9000人分の脳画像を調べた。
左利きに関係している4つの遺伝領域は、脳の構造に影響し、
言語をつかさどる領域をつなぐ白質路の発達に違いが見られた

主任研究員のAkira Wiberg博士によると、
左利きの人の脳では、右脳と左脳にある言語領域がよりスムーズに
情報を伝達する傾向が見られた。
これは被験者全員のデータから見えてきた傾向に過ぎないので、
左利きの人がすべてスムーズな情報伝達を行なっているとは限らない。

病気との関係も

ただし、マイナス面も。
左利きに関係している4つの遺伝領域は、非常にわずかながらに
パーキンソン病に罹る確率が低くなるものの、
非常にわずかに統合失調症に罹るリスクが高くなる関連性も見つかった。
関連しているだけで、因果関係は認められないが、
今後これらの病状の進行を研究するうえでは貴重な発見。

左利きを決めるのは遺伝子だけではない

カタツムリは、左利きか右利きによって殻の巻き方が違うが、
これは細胞骨格と関連している遺伝子の違いによるもの。
細胞骨格の違いが、人間の脳に見られたのは今回の研究が初めて。

研究者のひとり、Gwenaelle Douaudさんによると、
カタツムリやカエルなどほかの生物の場合、
遺伝子による細胞骨格の違いは生まれる前から顕著。
もしかしたら、人間の胎児の脳にも将来の利き手がわかるヒントが
見つかるかもしれない。
利き手を決めるのは遺伝的な要素だけではないので、
人間が左利きになるプロセスはもっと複雑で、
もっといろんな要因が絡んでいる。

https://www.gizmodo.jp/2019/09/geneticists-are-untangling-the-mystery-of-left-handed.html

GE薬産業の将来像示す‐30年まで重要5課題に対応 日本ジェネリック製薬協会

2019年9月30日 (月)配信薬事日報

日本ジェネリック製薬協会(GE薬協)は27日、
2030年におけるジェネリック医薬品(GE薬)産業の将来像である
「次世代産業ビジョン」を発表。
17年5月に発表した産業ビジョンを大幅に改定したもので、
未病・予防や個別化医療、海外展開、地域包括ケア、ICTを活用した
ヘルスケアシステム構築、持続可能な開発目標のSDGsの5項目をターゲット。
7月に概要版を発表していたが、その全容を公開。
来年9月に控える政府目標の数量シェア80%達成後の新たな指標づくりや
毎年薬価改定での制度提案につなげる。

■国際化への挑戦も提言

ビジョンは、ビッグデータで社会課題を解決する「ソサエティ5.0」が完成する
30年を焦点に、GE薬業界が迎える時代と11年後に対応していくべき変化を考え、
対策を進める必要がある重要な5項目を盛り込んだ。

従来の産業ビジョンでも、海外展開や地域医療、バイオ後続品など
期待される産業像が示されていたが、
薬価制度の抜本改革や長期収載品の撤退が可能になるG1、G2ルール導入など
環境変化を背景に、より将来の方向性に近い形で見直すことになった。

新ビジョンでは、GE薬メーカーが医療だけではなく、
健康や介護に貢献していく方向性を示した。
国内GE薬メーカーの強みとして製剤技術を挙げ、ICチップやセンサーを搭載した
「溶けない錠剤やカプセル剤」などで侵襲性の低い検査を導き、
未病ケアや予防に応用していく可能性を提示。
3Dプリンティング技術を個別化医療に活用し、
新市場を開拓するなどビジネスモデルの変革を促している。

GE薬産業の競争力強化に向けては、グローバル化への挑戦を提言。
日本市場で培ってきた良質な医薬品を提供し、
今後拡大が予想されるアジア・アフリカなど将来の市場を開拓していく将来像を示した。

国内での地域医療に着目し、地域包括ケアシステムの実現で
GE薬メーカーが取り組むべき活動も明記した。
地域での医薬品使用指針となる地域フォーミュラリーでの安定供給体制や
他社との共同生産体制構築、在宅医療の浸透に対応する必要性などにも言及した。

ソサエティ5.0の実現に向け、GE薬メーカーがICT技術を活用した医療に
関与することや、レセプトデータや電子カルテデータなど
リアルワールドデータを活用した医療情報の提供を例示した。
企業の社会的責任として、持続可能目標としてSDGsの達成に
寄与することも盛り込んだ。

GE薬メーカーの事業がさらに多様化し、未病ケアや予防市場への参入だけではなく、
既存薬の別適応症を探索するドラッグリポジショニングや
医薬品製造での連続生産システムなどを行う研究開発型企業も登場すると予測。

GE薬協がまとめた今年4~6月のGE薬数量シェアは75.8%であり、
全ての医療用医薬品を分母にするとおよそ半数を占める。

政策実務委員会の田中俊幸委員長は、
80%達成の目標時期となる来年9月まで残り1年での発表について、
「ポスト80%がGE薬メーカーにとって明るい未来であることを示したかった」

足元では大きな課題に直面、
「ビジョンに基づき、具体的な活動を行った企業だけが将来生き残ることができる」、
地域フォミューラリーの普及などで業界再編が起こる可能性にも言及した。
産業ビジョンの内容は今後も検証し、必要に応じて柔軟に見直していく考えだ。

https://www.m3.com/news/general/702762

線虫でがん検査、実用化へ 約85%特定、20年から

2019年10月2日 (水)配信共同通信社


東京のベンチャー企業「HIROTSUバイオサイエンス」は1日、体長約1ミリの線虫に人の尿のにおいを嗅がせ、がんの有無を発見する検査法を2020年から実用化すると発表した。検査費用は9800円で、がん患者約1400人の検体を使った最新の臨床研究では、約85%の確率で特定したという。早期のがん発見にも効果があるとしている。
 検査の名称は「N―NOSE」。犬並みの嗅覚で、がん患者特有の尿のにおいに寄りつき、健康な人の尿からは逃げる線虫の性質を利用した。線虫は土壌に生息する微小生物で、簡単に増殖ができ、検査に必要なのは尿1滴程度としている。
 これまでに15種類のがんに反応することが確認されたが、現時点でがんの部位までは特定できないという。当面は企業などの健診に組み入れることを中心に、初年度は25万検体の利用を見込む。21年には海外展開も目指すという。部位を特定するために、遺伝子組み換え線虫を用いた「がん種特定検査」の22年の実用化も目指している。
 年内に最終的な運用試験を実施する予定で、生命科学の産業振興に取り組む福岡県の久留米、小郡両市が職員の受診などで協力する。
 久留米市役所で1日、記者会見した同社の広津崇亮(ひろつ・たかあき)社長(47)は「検査の受診率を上げるには、画期的な技術が必要だ。ローリスクで他の検査より精度が高い」と強調した。同席した久留米市の大久保勉(おおくぼ・つとむ)市長も「がんの早期発見は極めて重要だ。実用化へ向け、支援したい」と述べた。

https://www.m3.com/news/general/703088