2021年1月31日日曜日
「21世紀型教育」の推進、海外と日本の決定的差 米国の公立校「ハイ・テック・ハイ」の衝撃
新型コロナウイルス感染症が拡大するなど、VUCA(※1)の時代を実感させられた2020年。
21年の教育界も、さらなる変化が求められそうだ。
先行き不透明な時代を生きていく子どもたちに、必要なスキルや学びの環境とはどのようなものなのか?
世界の先端校を視察・研究し、子どもの学びに関する情報を発信する
一般社団法人FutureEduの代表理事、竹村詠美氏に聞いた。
※1 Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)
の頭文字をとった造語で、予測困難な状況を指す
2021/01/06
制作:東洋経済education × ICT編集チーム
●従来型の一斉教育に小4男児がダメ出し
自分らしさを生かして仲間と協働しながら新しい価値を創出する。
「クリエーティブリーダー」の育成を目指し、「学習者中心の学び」や、
近年米国で注目を浴びる「ホールチャイルド」を育む環境をテーマに教育活動を行う竹村詠美氏。
長年、外資系企業で活躍してきたが、なぜビジネスの最前線から教育界に軸足を移したのか?
そのきっかけは、プライベートでの出来事にあった。
★竹村詠美(たけむら・えみ)
一般社団法人 FutureEdu 代表理事、一般社団法人 Learn by Creation 代表理事、
Peatix.com アドバイザー、総務省情報通信審議会委員、2児の母。
慶応義塾大学経済学部卒。ペンシルベニア大学ウォートンビジネススクール修士卒。
ペンシルベニア大学国際ビジネス修士卒 。
マッキンゼー・アンド・カンパニー米国本社や日本のアマゾン、ディズニーなど外資系企業7社を経て、
2011年にPeatix.comを共同創業。
16年以来、教育ドキュメンタリー映画『Most Likely to Succeed』の上映・対話会の普及をはじめ、
学びの未来を考える祭典「Learn by Creation」主催や教員研修など教育活動に取り組む。
近著に『新・エリート教育 混沌を生き抜くためにつかみたい力とは?』(日本経済新聞出版)
「5年前、駐在していたシンガポールから帰国。
当時小学校4年生だった長男も日本の学校に転入したが、何だか楽しそうに見えない。
子どもと話し合う中で気になったのは、一斉授業がつまらないということ。
彼は学び方に疑問を感じていて、算数に理科などを組み合わせれば面白い授業ができるのに、とも言う。
いわゆる教科横断型の授業。
目が覚める思いでした」
確かに彼が言うような授業でじっくり学べたら楽しいだろう。
実際、そんな学校があるのだろうか――気になった竹村氏は動き出す。
日本のオルタナティブ教育のほか、米国、イタリア、シンガポール、イスラエル、
韓国の教育現場の視察を始めたのだ。
北欧諸国をはじめ世界十数カ国の教育先端事例の調査、研究も行った。
そこから見えてきたのは、受験対策や偏差値に偏った従来型の教育から、
非認知能力の育成を重視した教育への転換が急務だということ。
「変化の激しい時代において活躍できる力を身に付けるために必要なのは、
1人ひとりの興味に合わせて『心身頭』を統合的にバランスよく育む
『ホール・チャイルド・アプローチ』という学びの考え方。
こうした21世紀型の教育を、格差なくどんな子どもも受けられるようになってほしい。
日本にも以前から『全人教育』や『知・徳・体』といった教育思想があるが、
今の大学受験から逆引きした教育では、圧倒的にプライオリティーが国語、算数、理科、社会、英語に置かれる。
この心身頭のバランスを欠いた教育から抜け出さない限り、
新学習指導要領が強調する『主体的・対話的で深い学び』の実現は難しい」
●誰もが抱いていたモヤモヤの正体
米国の学校を視察した際のこと。
「AIやロボットが生活に浸透していく21世紀の子どもたちにとって必要な教育とは何か」
というテーマを掘り下げた、ドキュメンタリー映画『Most Likely to Succeed』に出合った。
その舞台となったのが、カリフォルニア州サンディエゴのチャータースクール(※2)
「High Tech High(ハイ・テック・ハイ)」だ。
※2 保護者や教員、地域団体などが州や学区の認可(チャーター)を受けて設ける公立の初等中等学校
●米国のチャータースクール「High Tech High」
「High Tech Highは、プロジェクト型学習を中心に、ホール・チャイルド・アプローチを実践する学校。
まさに教科横断型の授業を行う公立校があると知り、衝撃を受けた。
日本の公立校でもできない理由はないはず。
まずは、この先端事例を日本の教育ステークホルダーに広く知ってもらい、
これからの教育について考えてもらうきっかけをつくろうと、
『Most Likely to Succeed』の上映会を日本で開催することにした」
生徒たちの作品が並ぶ「High Tech High」の校内は、まるでアートギャラリーのようだ。
2016年から始めた上映会は、すでに500回以上(開催支援先の上映を含む)、45都道府県で開催。
上映後には、鑑賞者と対話する機会も設けている。
「驚いたのは、保護者や学校の先生だけでなく、行政の方やビジネスパーソンなど幅広い層の方が参加され、
上映後には毎回活発な議論が交わされること。
皆、今の学校教育に対して同じようなモヤモヤを感じていることがわかってきた」
不登校に課題を感じている人もいれば、ICT教育の遅れを問題視する人もいるなど
モヤモヤの切り口はさまざまだが、共通項は「日本の学びはこのままではいけない」という危機感。
そこから一歩、前へ踏み出すために、今すぐにでも学校が取り組めることは何か?
竹村氏はこう答える。
「いちばん大事なのは、子どもたち1人ひとりが学校やクラスから『受け入れられている』と
自信を持てるようにすること。
子どもたちが帰属意識を持てる学校運営や学級づくりが不可欠。
不登校やいじめの問題も、ここの脆弱さに原因があると思っている。
具体的には、自分の意見を安心して言える安全な場として、
先生と一緒に答えのない問いについて少人数のグループに分かれて話し合うなど、
哲学対話の時間を設けてみるのも1つの方法。
授業のカリキュラムを変えなくても、道徳や総合的な学習の時間を活用すればできる」
その次のステップとして取り組みたいのは、Choice & Voice(選択と意見)だ。
「学校生活の中で、子どもたちが自らの得意なことや関心をベースに選択できる局面を増やしたい。
例えば数学なら、問題によっては複数の解法がある。
自分はどの解法を選んだのか、その理由は何かを生徒同士が話し合い、
その中で『なるほど、そういう考え方もあるのか』と気づくというような形で、
経験学習的な深い学びのサイクルを授業の中に取り入れるといい。
理想としては、選択肢もたくさんあったほうがいい。
体育であれば、競技性のあるスポーツや、競技性のないヨガやダンスなど複数の選択肢を用意して選んでもらう。
自分で下した決定ならば、その選択に責任を持つようになるし、
うまくいかなかったときも他者のせいにしたり、言い訳したりすることがなくなるはず。
こうした土台がないと、探究学習なども単なる調べ学習のような形だけのものになってしまう」
日本のICT教育については、「相当遅れているが、1人1台の端末とWi-Fi環境が今年度中に整備されることで、
やっとスタートラインに立てる」。
問題は、教える側の人材育成をどうするかだ。
「ICTの扱いは子どものほうが得意。
先生たちは基本を押さえつつ、ICTの得意な生徒の力をどこまで借りていくかがポイント。
企業や地域住民など外部の力を活用することも大切」
米国のある公立高校では、生徒がクラブ活動の一環としてパソコンの修理を行っており、
自校のパソコンだけではなく他校のものも引き受けているそうだ。
その活動を半事業化しており、受け取った対価は学校のその他の活動に還元。
ICTスキルを高めながら社会との接点も持てる、という好循環を生む取り組みで、地域からも好評だ。
「ここにIT企業のサポートが入ってもいいし、パソコンが得意な地域住民が加わってもいい。
いろいろな人の力を借りて開かれた学びの場をつくっていくことが重要。
日本も、文部科学省がつくったコミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)(※3)がある。
子どもたちも、教科書の学びと社会の関連性がリアルに見えたほうがわくわくする。
出前授業も悪くないが、もう少し長期的かつ日常的なつながりが必要。
もともと日本には、互いを思いやるチームワークという強みがある。
ここに、各自の個性や得意なことが生きる協働性も加われば、
世界最強の開かれた教育が実現できる」
※3 学校と保護者や地域住民が一緒に協働しながら子どもたちの豊かな成長を支え
「地域とともにある学校づくり」を進める法律(地教行法第47条の5)に基づいた仕組み
「ICTの活用に関しては、そもそも授業改革よりも、校務改革の方が急務」と竹村氏は指摘。
「校務に忙殺されていたのでは、子どもたちに向き合う時間も、
先生同士で教科横断型のカリキュラムについて話す時間も取れない。
ビジネス界では、ICTによる業務の効率化が実証されているが、
先生たちの校務時間の削減も、ICTの活用で明らかにKPI(重要業績評価指標)(※4)として目指せる。
教育現場を聖域化せず、効率化に踏み込む必要がある。
正解のない学びの実践は、先生も成長するもの。
食わず嫌いにならず、新たな活動を1日15分でも取り入れてみるなど、
気負わず楽しんで取り組んでほしい」
ビジネス感覚を上手に取り入れて効率化を図り、子どもたちと一緒に自身も軽やかに成長を続ける。
教育現場には、そんな新たな姿勢が求められているのではないだろうか。
※4 Key Performance Indicatorsの略。組織の目標を達成するための重要な業績評価の指標
一般社団法人 Learn by Creationと長野県は、 2021年1月9日~3週末の計6日間、
オンラインイベント「Learn by Creation NAGANO」を共同開催。
「私たちで自治る(つくる)学び」をコンセプトに、長野県内の学びの取り組みを共有し、
大人も子どもも一緒に学びについて考える場を目指す。
Learn by Creation NAGANO公式サイト:https://nagano.learnx.jp/
2021年1月24日日曜日
急激な情報化で学校「混乱の年」を乗り切るカギ 戸惑う現場、本当にICTの活用は進むのか?
2021/01/05
制作:東洋経済education × ICT編集チーム
2020年は新型コロナ感染拡大で、全国の小中学校に対し、
日本の学校教育史上例のない一斉休校の要請が行われた。
「学びを止めない」対策としてオンライン授業への関心も高まり、
「GIGAスクール構想」のICT環境整備が加速。
教育の情報化の重要性を訴えてきた東北大学大学院情報科学研究科教授の堀田龍也氏に
昨年を振り返り、ICT化で変革が進む今年21年の学校教育を展望。
――2020年は、小中学校で1人に1台の端末を配備する「GIGAスクール構想」の環境整備がコロナ禍で加速し、
学校教育でのICT活用がようやく実現に向けて動き出した。
教育の情報化にとって、これまで経験したことのない大きな1年。
私は、約20年前から文部科学省の審議会などの委員を拝命、教育の情報化は本流ではなかった。
「教育とは、先生と子どもたち、人と人とのぶつかり合いの中で行われるものであって、
テクノロジーが関わる余地はない」という昭和の教育観が主流で、
私の意見は「まあ、そんな考えもあるよね」くらいにしか受け止めてもらえない時期も。
その後、教員の世代交代も進み、デジタルネイティブ世代の若い教員も増えたが、
PCを使う教員はほんの一部で、学校におけるICT活用はなかなか進まない。
――なぜ、ICT活用は進まなかったのか?
学校におけるICT端末の配備やインターネット接続環境などの整備が、十分に進まなかったことが1つの原因。
公立の小中学校は地方自治体が設置するため、国が定める一定の基準を満たせば、
どんな校舎を建て、どんな備品を整備するか、
ICTをどれだけ入れるかも自治体に任せられている。
国は、これまでも学校のICT整備計画で目標を設定し、必要な費用を積算し、
自治体の税収で不足する分は、地方交付税として交付する地方財政措置を講じてきた。
18年~22年度の5カ年計画では、3クラスに1クラス分程度の端末整備を目標に、
市町村への財政措置を講じた。
地方交付税は、自治体の財源の一部に組み込まれ、ICT整備をするかは各自治体の判断に任されてしまう。
その結果、道路や橋など他の事業に予算を使い、学校のICT環境の整備を後回しにして、
自治体によって整備状況には大きなばらつきがあった。
学校の情報化が遅れた背景には、自治体幹部やベテラン教員の間に根強い「昭和の教育観」もあった。
――その状況が昨年、一変した。
「このままではまずい」という空気が醸成されてきたのは、この5年くらい。
18年のPISA(国際学習到達度調査)では、デジタル機器の利用状況も調査され、
日本は「授業でデジタル機器を利用する」と答えた生徒が2割弱と、OECD加盟国の中で最下位。
20年度から、小学校でプログラミング教育も必修化され、
以前なら傍流の立場だった私が中央教育審議会の委員に呼ばれ、
政治家も教育ICTの重要性を説くようになった。
そうした変化の象徴が、GIGAスクール構想。
これまで、用途が限定されない地方交付税の中に予算を折り込む財政措置で、
自治体にICT環境の整備を促していたのでは整備が進まなかった。
GIGAスクール構想では、国が用途を指定した補助金を19年度補正予算案に計上して整備を進める。
コロナ休校の間、オンライン授業を実施できたのが一部の学校、先生にとどまったことで、
保護者からの要望も強まり、23年度完了予定だった「1人1台端末」の環境整備が前倒しされ、
21年3月には大半の学校で完了。
――ICT化で2021年の学校教育はどうなるのか?
世間並みの情報化が実現されてよかったと思う一方、
21年は急速な教育の情報化に伴う混乱が起きる。
国の整備計画に沿って徐々に情報化を進めてきた一部の自治体を除けば、
多くの学校でICT環境がいきなり整備されることに。
GIGAスクール構想の目的、経緯を知る先生も多くはないので、急激な変化に不満が出るかも。
これからの混沌として先を見通せない時代を生き延びるには、
ICTを道具として情報を収集し、判断する能力が不可欠。
「日本の学力は世界的に見ても高いのだから、わざわざICTをやる必要があるのか」という声を
教育委員会の幹部から聞くことも。
そのような発言をする人が経験してきた、テストで高い点数を取る学力を身に付け、一生安泰の職業を得て、
組織のヒエラルキーを上っていくという昭和のパラダイム(時代を牽引する規範的考え方)は、
現代では通用しなくなっている。
一生安泰と思われた企業が淘汰され、今やキャリアチェンジはどこにでもある、前向きな話。
教育界もICT導入を機に、世間並みにパラダイムや価値観の転換をすべき時期を迎えている。
――これまで経験のないICT活用に戸惑う先生も多いと思うが、本当に情報化は進むのか?
学校の先生は、基本的にまじめ。
情報化の必要性を納得すれば、教育の専門職としてやれるところから対応していくと思う。
先生が必ずしもICTに詳しくなる必要はない。
ある程度の慣れがあれば大丈夫。
ICTがあると、授業で学ぶ前に「織田信長のことを調べてきました」という子どもが出てくることも。
知識をすべて教え込む従来の教育なら、先生は困ってしまう。
ICTを活用した教育では、まず調べさせ、それを発表させればよい。
「本能寺の変がポイントだから、そこをさらに調べてみよう」などと促す。
正しい情報を集めるためにどんな情報源を使い、どんなことに注意すべきかを考えさせ、
グループで一緒に調べられるように
「クラウド型のプレゼンテーション資料作成ツールを使って協力しよう」とやり方を示せばよい。
ベテランの先生が、プログラミング学習の授業をやっているのを見たことがあり、こんな感じ。
先生「上手にできたね。ところで誰が上手なの?」
子ども「○○さんです」
先生「では、○○さんに発表してもらいましょう」
そうやって、プログラミングが得意な子どもに見本を示してもらう。
その子は、プログラミング教室に通っているからできたのかもしれない。
これまでも水泳や習字の授業でも、同じようなことがあったはず。
それぞれの家庭が教室や塾に通わせて得られた教育成果もうまく活用しながら、
学び方、興味関心、スキルがそれぞれ異なる子どもたちをファシリテートして、
全体にレベルアップすることが、ICT教育時代の教員の仕事と考えればよい。
それが個別最適な学びにつながるはず。
あとは、教員の慣れの問題。
新しい、これから望まれるモデルのベストプラクティスを世の中に見せていくこと。
最初はICTを上手に扱えない先生でも、よい教育をしているという実践モデルをフォローしていけば、
いずれ混乱は乗り越えられると確信。
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東北大学大学院情報科学研究科 教授 堀田龍也(ほりた・たつや)
1964年熊本県生まれ。86年に東京学芸大学教育学部を卒業し、87年に東京都公立小学校の教諭として勤務。
2009年東京工業大学より博士(工学)授与。文部科学省参与、玉川大学教職大学院教授などを経て、14年より現職。
中央教育審議会・委員、文部科学省情報活用能力調査に関する協力者会議・主査、
同デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議・座長、
同教育データの利活用に関する有識者会議・座長、内閣官房教育再生実行会議初等中等教育WG・有識者などを歴任
2021年1月7日木曜日
肺がん細胞死なない仕組み、金大が解明 治療法確立へ
2020年12月22日 (火)配信北國新聞
金大は21日、同大がん進展制御研究所/ナノ生命科学研究所の矢野聖二教授らの研究グループが、
肺がん細胞が分子標的薬に抵抗して生き延びるメカニズムを新たに解明した。
がん細胞の増加を抑える遺伝子「TP53」が変異し、機能が低下することで薬が効きにくくなる。
研究グループは、この効きづらさを解消する新たな治療法を確認しており、根治へ研究進展が期待。
「ALK」と呼ばれる遺伝子が、他の遺伝子と融合して生じる「ALK融合遺伝子陽性肺がん」を対象に調べた。
ALKには「アレクチニブ」という分子標的薬が有効だと分かっている。
研究グループが、ALK融合遺伝子陽性肺がんでTP53に変異がある患者とない患者を比較すると、
アレクチニブの効果の持続期間は変異のある方が短いと分かった。
さらに細胞死を促進するタンパク「ノキサ」に着目。
ノキサが蓄積するよう「プロテアソーム阻害薬」を使えば、TP53に変異があっても効果が維持されることを確認。
動物実験では、アレクチニブにプロテアソーム阻害薬を併用することで、治療に抵抗性のあった腫瘍を小さくすることに成功した。
矢野教授は「実用化へ製薬会社との共同研究を進めたい」
糖尿病治療や症状悪化が膵臓がん発見のヒントに 東北大
2021年1月6日 (水)配信河北新報
糖尿病の診断や症状悪化が、膵臓がん発見の手掛かりになることが、東北大の研究グループの分析で分かった。
膵臓がんの発見につながることが多い黄疸や腹痛などの症状が出た後の診断より、
生存期間が2倍以上長く、手術可能な症例が多かった。
糖尿病は膵臓がんの危険因子とされ、糖尿病患者の膵臓がんリスクは一般患者の約2倍とされる。
大学院医学系研究科の正宗淳教授(消化器内科)らは、
東北大病院で膵臓がんと診断された489例の診断のきっかけと、治療後の経過を調べた。
黄疸などの症状があった318例のうち、比較的早期の膵臓がんは8%で、手術可能な例は27%。
一方、無症状で糖尿病の診断や症状悪化で見つかった53例は約40%が比較的早期で、手術可能な例は約60%。
無症状で検診などで偶然見つかった118例の35%が比較的早期で、68%が手術可能。
症状があった患者の平均生存期間が約11カ月だったのに対し、糖尿病患者は26カ月。
偶然に見つかった患者の29カ月と同程度だった。
新規の糖尿病で膵臓がんを合併した症例には、
(1)70代以上
(2)診断前に肥満がない
(3)体重減少―などの特徴がある。
正宗教授は、「どの患者に膵臓がんの精密検査を行うかを詳細に検討し、治療成績の向上につなげたい」
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