2021年7月9日金曜日
唾液検査で大腸がんを検出、検出時間1分で精度83.4% 慶大先端生命研が開発
2021年7月9日(金)
慶應義塾大学先端生命科学研究所(慶大先端生命研)は、
新たに開発した多検体同時測定技術を活用し、
唾液中のがんマーカーであるポリアミン類を1検体あたり1分で測定することに成功した。
大腸がん患者と健常者の検体を用いた検証では、
83.4%の精度でがんを検出できたとする結果も発表。
この数値は、既存の大腸がんのバイオマーカーより精度が高く、
患者負担を軽減し、かつより精度の高い検査の実用化が期待される。
成果を発表したのは、慶應義塾大学先端生命科学研究所の曽我朋義教授、
五十嵐香織技術員らの研究グループ。
今回研究グループが採用したポリアミン類は、大腸がん、膵臓がんなどのがん患者の唾液や尿で
急激に増加することが知られているが、既存の方法では1検体の測定に10分以上必要とされている。
この時間と費用のハードルを突破するため、
研究グループは既存の測定法である「CE-MS法」※1を拡張した「多検体同時測定 CE-MS 法」を開発。
具体的な手法は、まずキャピラリー(毛細管)に唾液検体40検体分を1度に順次注入するというもの
(図1ではa 黄色、赤、緑、青の4 検体)。
泳動バッファ(BGE)も交互に順次注入し、その後電圧をかける。
唾液中のポリアミン類などのイオンは質量分析計(MS)方向に移動するが、
唾液検体にかかる電圧とBGEにかかる電圧に違いが出るため、それぞれの移動速度にも違いが生じ、
結果、ポリアミン類などのイオンは各検体と BGE の境界でスタックされる(図 1b)。
その後、検体とBGE の液が混合すると印加電圧は一定になるため(図 1c)、
一定の移動速度でポリアミン類などは MS に向かい、それぞれの化合物が持つ固有の質量で検出される(図 1d)。
研究グループではこの測定法の応用として、
東京医大で採取された健常者 20 例、大腸がん患者 20 例、計 40 検体の唾液中ポリアミンを測定。
結果は、どのポリアミンも健常者と比べ大腸がん患者で高値を示し、
40 検体を40 分(サンプル注入 20 分、測定 20 分)で分析できた。
検証として、健常者 57 例、大腸良性ポリープ患者 26 例、大腸がん患者 276 例から採取した
唾液中のポリアミン類を測定したところ(図4)、
健常者や大腸良性ポリープ患者に比べ、大腸がん患者で 3 種類のポリアミン濃度が有意に高くなっていることが判明。
3つのうち「N1-アセチルスペルミン」に関しては、
大腸がん患者を 83.4%の精度で非がん患者と区別できることが分かった。
この精度は、既存の大腸がんの血液マーカーである CEA、CA19-9、NSE など(精度 56-77%)より高い精度で
大腸がんを診断できることを示している。
研究グループの杉本昌弘教授らは、唾液検査を主幹事業とするベンチャー「サリバテック」を創業、
同社へ技術移転することで既存検査の大幅なコストダウン、大規模化を実現できると見込んでいる。
グループの曽我朋義教授は「本法は唾液のポリアミン測定による大腸がんの診断の大規模・迅速分析を実現した。
ポリアミン以外の低分子マーカーの臨床応用も実現する測定技術であると考えている」
研究成果は、論文として分析化学誌『Journal of Chromatography A』電子版に掲載。
※1 キャピラリー電気泳動-質量分析計(CE-MS)法
試料を細長いキャピラリー(内径 50μm、長さ 1m)に導入後、その両端に高電圧を加えることにより、
イオン性を持つ物質がキャピラリー内を異なった速度で移動する原理を利用して分離後、
質量分析計に導入し各物質の同定、定量を行う方法。
外部リンク(論文):High-throughput screening of salivary polyamine markers for discrimination of colorectal cancer by multisegment injection capillary electrophoresis tandem mass spectrometry(Journal of Chromatography A)
https://medicalai.m3.com/news/210709-news-medittech
女子サッカー選手は脳損傷のリスクが高い
Nature ダイジェスト Vol. 18 No. 7 | doi : 10.1038/ndigest.2021.210708
原文:Nature (2021-04-30) | doi: 10.1038/d41586-021-01184-8 | Head-injury risk higher for female soccer players, massive survey finds
米国の高校生アスリートにおける脳震盪の発生率とその原因に関するデータから、
男女間で顕著な違いがあることが明らかになった。
ペンシルベニア大学ペレルマン医学系大学院(米国フィラデルフィア)、
ミシガン州立大学(米国イーストランシング)、グラスゴー大学(英国)の研究チームが、
米国ミシガン州の高校に通う約4万3000人の男子サッカー選手と
約3万9000人の女子サッカー選手の3年間の調査データを分析し、
その結果を4月27日付でJAMA Network Openに発表。
スポーツに関連した頭部損傷の発生率は男女間で顕著な差があり、
女子の脳震盪の発生率は男子の1.88倍である。
今回の研究を主導したグラスゴー大学の神経病理学者William Stewartは、
研究者たちは以前から男子よりも女子の方が頭部を負傷することが多く、
回復に要する時間も長いのではないかと考えていたが、具体的なデータが不足していた。
「女性アスリートに関する研究はほとんど行われていないのです」
ミシガン州高等学校体育協会が、2016年度から2018年度にかけてスポーツ傷害に関する
大量のデータを収集したことで、女性アスリートの脳震盪のリスクが本当に高いのかどうかを
検証することが可能になった(「脳震盪のリスク」参照)。
「男子と女子の間には、確かに違いがありました」とStewartは言う。
脳震盪の原因も、男女で大きな差があった。
男子は、他の選手と激突して脳震盪を起こすことが最も多く、
報告された脳震盪の半数近くがこの形で起きていた。
女子の場合、ボールやゴールポストなどの物と衝突して脳震盪を起こすことが多かった。
男子は女子に比べて、頭部損傷が疑われた直後にプレーから外されることが多かった。
Stewartは、女子の頭部損傷のメカニズムが男子と異なっていることは重要な発見であると考え、
「これは、女子の脳震盪がフィールドであまり気付かれなかった理由の1つかもしれません」。
試合中に潜在的な頭部損傷を発見する方法から、
選手を治療する方法やプレーに復帰させる時期まで、現在使用されている脳震盪管理システムは、
ほぼ男性アスリートを対象とした研究のみに基づいて規定されている。
脳震盪の管理については、現行のような男性基準の画一的なアプローチではなく、
性別に応じたアプローチを検討する必要があるかもしれない。
サッカーでのヘディングを制限することや、女子の試合では医学的な訓練を受けたスタッフを
多めに配置したりすることなどが考えられる。
スウォンジー大学(英国)でバイオメカニクスと頭部損傷を研究しているLiz Williamsは、
2020年に女性ラグビー選手とその負傷歴に関する国際的な大規模調査を実施。
彼女はStewartの調査結果に全く驚かず、
「私たちの発見はどれも同じです。女性は男性よりも脳損傷を受けやすいのです。
個人的には、脳損傷の発生率は報告されている数字よりも高いと考えています」。
https://www.natureasia.com/ja-jp/ndigest/v18/n7/%E5%A5%B3%E5%AD%90%E3%82%B5%E3%83%83%E3%82%AB%E3%83%BC%E9%81%B8%E6%89%8B%E3%81%AF%E8%84%B3%E6%90%8D%E5%82%B7%E3%81%AE%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%81%8C%E9%AB%98%E3%81%84/108199
変異株COVID-19にも有効、点鼻型ハイブリッド抗
Nature ダイジェスト Vol. 18 No. 7 | doi : 10.1038/ndigest.2021.210711
原文:Nature (2021-06-04) | doi: 10.1038/d41586-021-01481-2 | Antibody-laden nasal spray could provide COVID protection — and treatment
経鼻送達可能なハイブリッド抗体が作製された。
この抗体を投与すると、SARS-CoV-2に感染したマウスで
肺に存在するウイルスの量を急激に減少させることができた。
バイオエンジニアリングによって作られた抗体は、
ウイルスがマウスの肺に定着するのを阻止することができる。
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の変異株に対抗するために設計された
抗体を鼻腔内に噴霧すると、多くの変異株に対して強力な防御効果が得られることが、
まずはマウスで確認された。
効果を示した変異株には、懸念される変異株(VOC)と位置付けられている
アルファ株(B.1.1.7;旧英国型)やガンマ株(P.1;旧ブラジル型)、
ベータ株(B.1.351;旧南アフリカ型)のほか、21の変異株が含まれている。
パンデミック(世界的流行)の初期から、
科学者たちはCOVID-19(新型コロナウイルス感染症;SARS-CoV-2によって引き起こされる感染症)の
治療薬となる抗体を開発しようと努力してきた。
現在、数種類の抗体薬が後期臨床試験に入っており、
米国などの規制当局により緊急時の使用が承認されているものもいくつかある
(2021年6月号「COVID-19の抗体治療に、先入観を覆す有望な結果」参照)。
しかし、テキサス大学ヒューストン健康科学センター(米国)の抗体工学者であるZhiqiang Anは、
医師の間では抗体治療はあまり人気がないと話す。
一因として、現時点で入手可能な抗体薬が点滴によって投与するタイプのものである。
ウイルスが主に存在している気道に直接送達するわけではないため、
効果を得るには大量の投与が必要となるのである。
SARS-CoV-2変異株の中に、既存の一部の抗体に耐性があるように思われるものが出現していることも問題だ。
Anらは、鼻の中に直接送達できる抗体の開発に着手した。
彼らは健康な人々から採取した抗体ライブラリーを調べ、
その中からSARS-CoV-2が細胞に付着・侵入する際に使用する部分を認識できる抗体に着目。
有望そうな候補の1つはIgG抗体。
IgG抗体は感染後に出現する時期は比較的遅いものの、
侵入してくる病原体に合わせて正確に作られているからだ。
研究チームは、SARS-CoV-2に対する中和作用を持つIgG抗体(左上)のFv部を、
IgM抗体とIgA抗体に導入して、ハイブリッド抗体を作製した。
SARS-CoV-2を標的とするIgG抗体の抗原結合部位である可変部断片(Fv)を、
IgM抗体という別の種類の分子のFv領域に組み込んだ。
IgM抗体は、幅広い種類の感染症に対して最初に応答する抗体である。
研究チームが作製したIgM抗体は、20種類以上のSARS-CoV-2変異株に対して、
IgG単独よりもはるかに強い「中和」効果を発揮した。
研究チームは、改変したIgM抗体を感染の6時間前または6時間後にマウスの鼻に噴霧すると、
感染から2日後にマウスの肺に存在しているウイルスの量が急激に減少した。
ソルボンヌ大学(フランス・パリ)の免疫学者であるGuy Gorochovは、
この研究は「エンジニアリングの偉業」だと称賛する一方、
この抗体がヒトの体内でどのくらい持続するかなど、明らかにすべきことがまだ残っている。
Anは、この抗体の鼻腔スプレーが、SARS-CoV-2に曝露した人々が使える化学的マスクのようなものとして、
ワクチンでは十分な防御ができない人々のための追加の防御策として利用されることを想定。
IgM分子は比較的安定しているので、薬局で購入して緊急時に備えて保管しておくこともできるかもしれない。
Anの研究に協力したバイオテクノロジー企業IGM Biosciences(米国カリフォルニア州マウンテンビュー)は、
この抗体の臨床試験を行う予定。
https://www.natureasia.com/ja-jp/ndigest/v18/n7/%E5%A4%89%E7%95%B0%E6%A0%AACOVID-19%E3%81%AB%E3%82%82%E6%9C%89%E5%8A%B9%E3%80%81%E7%82%B9%E9%BC%BB%E5%9E%8B%E3%83%8F%E3%82%A4%E3%83%96%E3%83%AA%E3%83%83%E3%83%89%E6%8A%97%E4%BD%93/108201
2021年6月16日水曜日
アイポア、微粒子分析で新型コロナ検査、AI活用、7分で識別
アイポア(東京都渋谷区)は、
半導体薄膜と人工知能(AI)を組み合わせた独自の微粒子分析技術を
新型コロナウイルス検査に適用することを目指す。
微粒子が半導体薄膜に開けた微細な孔を通過する時に生じるパルスを計測、
その波形を切り出して学習ずみAIが識別する。
唾液検体による臨床研究では、約7分という短時間でPCR陽性一致率95%と高い識別性能を実証した。
直野典彦代表取締役は「従来の手法では実現できなかった短時間・高精度の検査技術として実用化を急ぎたい」
アイポアの設立は2018年。
内閣府のImPACT(革新的研究開発推進プログラム)の一環として、
大阪大学が中心となって開発した「ナノポアによる1粒子識別技術」の実用化を目指している。
ナノ粒子計測技術は、創業者で非常勤取締役である谷口正輝・大阪大学産業科学研究所教授の研究成果。
微細な孔を開けた、窒化ケイ素薄膜を表面に形成したシリコン基板をセンサーに用いる。
電荷を持った対象粒子が、孔を通過する際のイオン電流の変化をパルスとして読み取る。
その波形信号を増幅してデジタル化、アイポアが開発したAIソフトウエアで解析・識別する。
センサーモジュールは朝日ラバー、NOKと、微粒子計測装置はアドバンテストと協力して製品化した。
昨年10月、理化学研究向けの微粒子分析ソリューションとして発売したが、
「社会的な意義を考えて新型コロナの検査向けに実用化することを最優先する」(直野氏)ことにした。
日本医療研究開発機構(AMED)によるウイルス等感染症対策技術開発事業の下、
阪大と共同で実施した唾液検体44例の臨床研究ではPCR検査との陽性一致率95%、陰性一致率92%。
識別時間は合計約7分で、前処理2分、計測5分、AI解析1秒だった。
現在、汎化性能を評価中で、700例以上でも同水準の結果が得られている。
新型コロナウイルスの検査手法は、PCR検査と抗原検査の2種類。
PCR検査は高精度だが、判定には早くても3時間程度かかる。
抗原検査は判定時間は約30分と短い半面、精度に課題がある。
アイポアの技術は短時間・高精度だけでなく、試薬を使わず専門的な技能も不要といった優位性がある。
「新型コロナ検査は、ワクチンと同様に規模が求められる。
量産に向けて、安定的な精度確保など提携各社と課題解決に取り組んでいる。
できるだけ早く空港など現場での実証実験を始めたい」(直野氏)。
https://medicalai.m3.com/news/210508-news-kagaku
2021年5月22日土曜日
ALSの進行抑制に効果 iPSで見つけた薬 慶大「世界初」、治験で
2021年5月21日 (金)配信共同通信社
慶応大は20日、人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使って有望な既存薬を探し出し、
全身が動かせなくなる難病「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」の患者への臨床試験(治験)で
病状の進行を約7カ月遅らせる効果を確認したと発表。
患者のiPS細胞で病気を再現し、効果が高い薬を見つける「iPS創薬」の手法を活用。
チームは「世界で初めてiPS創薬の有効性をはっきりと示した」。
チームは、患者の血液細胞からさまざまな細胞になるiPS細胞を作製し、
神経細胞に成長させ、既に別の病気で使われている1232種類の薬を加えて効果を調査。
安全性や脳内に薬剤が入るかどうかを勘案するなどして、
パーキンソン病の薬「ロピニロール塩酸塩」を候補に選んだ。
治験の対象は、ALS患者20人。
片方のグループには半年間、毎日薬を投与。
別のグループには、有効成分が入っていない偽薬を飲んでもらった。
その後の数カ月は両グループともに薬を投与した。
死亡または病状が悪化するまでの期間を比較した結果、
偽薬を与えたグループでは約22週間だったが、
最初から薬を投与したグループでは約50週間で、約7カ月の差が出た。
具体的には、偽薬のグループでは1年後までに約9割の患者が歩けなくなったり、
しゃべれなくなったりしたのに対し、薬を投与したグループでは約4割にとどまった。
ALSは、筋肉を動かす脳内や脊髄の運動神経の障害で筋力低下などが起きる病気で、
国内の患者は約1万人。
発症してから死亡したり呼吸器の装着が必要となったりするまでの期間は、20~48カ月。
チームの岡野栄之教授(再生医学)は、
「一日も早くALSが致死性の病気でなくなるよう最大限の努力をしたい」
今後はさらに患者の数を増やして有効性を詳細に確認する。
別の病気で既に使われている薬を転用して、特定の病気に役立てる試みも創薬の一手法。
※iPS創薬
患者から提供を受けた血液や皮膚の細胞から人工多能性幹細胞(iPS細胞)を作り、
神経など狙った細胞に成長させて培養皿の上で細胞の衰えなど病気を再現、
薬剤を投与して効果があるものがないか網羅的に調べる手法。
患者の負担も小さく、既に認可されている薬を使った場合は、
安全性の確認や実用化に向けた手続きを簡略化できる利点がある。
2010年代から国内外で難病などに対する臨床試験が進められている。
https://www.m3.com/news/general/917868
パナソニック、歩行トレーニングロボットを開発、AIで最適な運動負荷
2021年5月18日(火)
パナソニックは、「歩行トレーニングロボット」の量産モデルを開発。
歩行に不安を感じ始めた高齢者に安全・効果的な歩行運動を提供する。
今月から介護・福祉施設、病院向けに同ロボットを用いた
「歩行トレーニング支援サービス」を開始。
AI(人工知能)が一人ひとりに最適な運動負荷をかけ、効率的な運動を提供。
2024年度に利用1500台を目指す。
同ロボットは、押して進む力に対しモーターが抵抗するように動き、
緩いスロープを上がる程度の運動負荷をかける。
通常の歩行に比べ、約50%の運動強度向上が見込める。
負荷による支持の効果で歩行の安定性も向上。
一定速度以上での歩行のブレーキやアラートの安全機能も搭載し、
生活支援ロボットの安全性に関する国際規格ISO13482認証を取得。
ロボットにIDカードをかざすと、一人ひとりにあわせハンドルの高さを自動調整。
目標設定して歩行するだけで、AIが日々の歩行状態を学習し最適な運動負荷を設定する。
歩行速度、距離、左右のバランスなどの歩行データがリアルタイムでデータベースに蓄積され、
定期的な測定では把握しにくい細かな状態の変化を明確に把握。
データを見える化・共有しモチベーション向上につなげる。
ハンドル搭載のセンサーと車輪の回転情報を取得するセンサーから得られる情報を
時系列データとして組み合わせ、特徴を抽出して歩行速度・継続性、安定性、バランスなど歩行能力を推定。
一人ひとりの身体機能に合わせた運動負荷、目標距離、目標時間のトレーニングプランを最適化する。
デイサービスセンターで9カ月間利用した結果、長期の利用と一定の歩行能力向上を確認した。
同ロボットは、4G回線を経由してクラウド上のサーバーと接続する。
利用者はログインして歩行し、施設スタッフはトレーニングプランと記録を管理する。
同サービスを用いると、1時間に5~6人のトレーニングを提供可能。
サービスの基本セットは、ロボット本体と登録者数分のIDカード、充電アダプタ、サーバーログイン情報。
初期費用は25万円、3年契約の月額利用料が3万円。
https://medicalai.m3.com/news/210518-news-kagaku?dcf_doctor=false&portalId=mailmag&mmp=AI210521&mc.l=739316511
2021年1月31日日曜日
「21世紀型教育」の推進、海外と日本の決定的差 米国の公立校「ハイ・テック・ハイ」の衝撃
新型コロナウイルス感染症が拡大するなど、VUCA(※1)の時代を実感させられた2020年。
21年の教育界も、さらなる変化が求められそうだ。
先行き不透明な時代を生きていく子どもたちに、必要なスキルや学びの環境とはどのようなものなのか?
世界の先端校を視察・研究し、子どもの学びに関する情報を発信する
一般社団法人FutureEduの代表理事、竹村詠美氏に聞いた。
※1 Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)
の頭文字をとった造語で、予測困難な状況を指す
2021/01/06
制作:東洋経済education × ICT編集チーム
●従来型の一斉教育に小4男児がダメ出し
自分らしさを生かして仲間と協働しながら新しい価値を創出する。
「クリエーティブリーダー」の育成を目指し、「学習者中心の学び」や、
近年米国で注目を浴びる「ホールチャイルド」を育む環境をテーマに教育活動を行う竹村詠美氏。
長年、外資系企業で活躍してきたが、なぜビジネスの最前線から教育界に軸足を移したのか?
そのきっかけは、プライベートでの出来事にあった。
★竹村詠美(たけむら・えみ)
一般社団法人 FutureEdu 代表理事、一般社団法人 Learn by Creation 代表理事、
Peatix.com アドバイザー、総務省情報通信審議会委員、2児の母。
慶応義塾大学経済学部卒。ペンシルベニア大学ウォートンビジネススクール修士卒。
ペンシルベニア大学国際ビジネス修士卒 。
マッキンゼー・アンド・カンパニー米国本社や日本のアマゾン、ディズニーなど外資系企業7社を経て、
2011年にPeatix.comを共同創業。
16年以来、教育ドキュメンタリー映画『Most Likely to Succeed』の上映・対話会の普及をはじめ、
学びの未来を考える祭典「Learn by Creation」主催や教員研修など教育活動に取り組む。
近著に『新・エリート教育 混沌を生き抜くためにつかみたい力とは?』(日本経済新聞出版)
「5年前、駐在していたシンガポールから帰国。
当時小学校4年生だった長男も日本の学校に転入したが、何だか楽しそうに見えない。
子どもと話し合う中で気になったのは、一斉授業がつまらないということ。
彼は学び方に疑問を感じていて、算数に理科などを組み合わせれば面白い授業ができるのに、とも言う。
いわゆる教科横断型の授業。
目が覚める思いでした」
確かに彼が言うような授業でじっくり学べたら楽しいだろう。
実際、そんな学校があるのだろうか――気になった竹村氏は動き出す。
日本のオルタナティブ教育のほか、米国、イタリア、シンガポール、イスラエル、
韓国の教育現場の視察を始めたのだ。
北欧諸国をはじめ世界十数カ国の教育先端事例の調査、研究も行った。
そこから見えてきたのは、受験対策や偏差値に偏った従来型の教育から、
非認知能力の育成を重視した教育への転換が急務だということ。
「変化の激しい時代において活躍できる力を身に付けるために必要なのは、
1人ひとりの興味に合わせて『心身頭』を統合的にバランスよく育む
『ホール・チャイルド・アプローチ』という学びの考え方。
こうした21世紀型の教育を、格差なくどんな子どもも受けられるようになってほしい。
日本にも以前から『全人教育』や『知・徳・体』といった教育思想があるが、
今の大学受験から逆引きした教育では、圧倒的にプライオリティーが国語、算数、理科、社会、英語に置かれる。
この心身頭のバランスを欠いた教育から抜け出さない限り、
新学習指導要領が強調する『主体的・対話的で深い学び』の実現は難しい」
●誰もが抱いていたモヤモヤの正体
米国の学校を視察した際のこと。
「AIやロボットが生活に浸透していく21世紀の子どもたちにとって必要な教育とは何か」
というテーマを掘り下げた、ドキュメンタリー映画『Most Likely to Succeed』に出合った。
その舞台となったのが、カリフォルニア州サンディエゴのチャータースクール(※2)
「High Tech High(ハイ・テック・ハイ)」だ。
※2 保護者や教員、地域団体などが州や学区の認可(チャーター)を受けて設ける公立の初等中等学校
●米国のチャータースクール「High Tech High」
「High Tech Highは、プロジェクト型学習を中心に、ホール・チャイルド・アプローチを実践する学校。
まさに教科横断型の授業を行う公立校があると知り、衝撃を受けた。
日本の公立校でもできない理由はないはず。
まずは、この先端事例を日本の教育ステークホルダーに広く知ってもらい、
これからの教育について考えてもらうきっかけをつくろうと、
『Most Likely to Succeed』の上映会を日本で開催することにした」
生徒たちの作品が並ぶ「High Tech High」の校内は、まるでアートギャラリーのようだ。
2016年から始めた上映会は、すでに500回以上(開催支援先の上映を含む)、45都道府県で開催。
上映後には、鑑賞者と対話する機会も設けている。
「驚いたのは、保護者や学校の先生だけでなく、行政の方やビジネスパーソンなど幅広い層の方が参加され、
上映後には毎回活発な議論が交わされること。
皆、今の学校教育に対して同じようなモヤモヤを感じていることがわかってきた」
不登校に課題を感じている人もいれば、ICT教育の遅れを問題視する人もいるなど
モヤモヤの切り口はさまざまだが、共通項は「日本の学びはこのままではいけない」という危機感。
そこから一歩、前へ踏み出すために、今すぐにでも学校が取り組めることは何か?
竹村氏はこう答える。
「いちばん大事なのは、子どもたち1人ひとりが学校やクラスから『受け入れられている』と
自信を持てるようにすること。
子どもたちが帰属意識を持てる学校運営や学級づくりが不可欠。
不登校やいじめの問題も、ここの脆弱さに原因があると思っている。
具体的には、自分の意見を安心して言える安全な場として、
先生と一緒に答えのない問いについて少人数のグループに分かれて話し合うなど、
哲学対話の時間を設けてみるのも1つの方法。
授業のカリキュラムを変えなくても、道徳や総合的な学習の時間を活用すればできる」
その次のステップとして取り組みたいのは、Choice & Voice(選択と意見)だ。
「学校生活の中で、子どもたちが自らの得意なことや関心をベースに選択できる局面を増やしたい。
例えば数学なら、問題によっては複数の解法がある。
自分はどの解法を選んだのか、その理由は何かを生徒同士が話し合い、
その中で『なるほど、そういう考え方もあるのか』と気づくというような形で、
経験学習的な深い学びのサイクルを授業の中に取り入れるといい。
理想としては、選択肢もたくさんあったほうがいい。
体育であれば、競技性のあるスポーツや、競技性のないヨガやダンスなど複数の選択肢を用意して選んでもらう。
自分で下した決定ならば、その選択に責任を持つようになるし、
うまくいかなかったときも他者のせいにしたり、言い訳したりすることがなくなるはず。
こうした土台がないと、探究学習なども単なる調べ学習のような形だけのものになってしまう」
日本のICT教育については、「相当遅れているが、1人1台の端末とWi-Fi環境が今年度中に整備されることで、
やっとスタートラインに立てる」。
問題は、教える側の人材育成をどうするかだ。
「ICTの扱いは子どものほうが得意。
先生たちは基本を押さえつつ、ICTの得意な生徒の力をどこまで借りていくかがポイント。
企業や地域住民など外部の力を活用することも大切」
米国のある公立高校では、生徒がクラブ活動の一環としてパソコンの修理を行っており、
自校のパソコンだけではなく他校のものも引き受けているそうだ。
その活動を半事業化しており、受け取った対価は学校のその他の活動に還元。
ICTスキルを高めながら社会との接点も持てる、という好循環を生む取り組みで、地域からも好評だ。
「ここにIT企業のサポートが入ってもいいし、パソコンが得意な地域住民が加わってもいい。
いろいろな人の力を借りて開かれた学びの場をつくっていくことが重要。
日本も、文部科学省がつくったコミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)(※3)がある。
子どもたちも、教科書の学びと社会の関連性がリアルに見えたほうがわくわくする。
出前授業も悪くないが、もう少し長期的かつ日常的なつながりが必要。
もともと日本には、互いを思いやるチームワークという強みがある。
ここに、各自の個性や得意なことが生きる協働性も加われば、
世界最強の開かれた教育が実現できる」
※3 学校と保護者や地域住民が一緒に協働しながら子どもたちの豊かな成長を支え
「地域とともにある学校づくり」を進める法律(地教行法第47条の5)に基づいた仕組み
「ICTの活用に関しては、そもそも授業改革よりも、校務改革の方が急務」と竹村氏は指摘。
「校務に忙殺されていたのでは、子どもたちに向き合う時間も、
先生同士で教科横断型のカリキュラムについて話す時間も取れない。
ビジネス界では、ICTによる業務の効率化が実証されているが、
先生たちの校務時間の削減も、ICTの活用で明らかにKPI(重要業績評価指標)(※4)として目指せる。
教育現場を聖域化せず、効率化に踏み込む必要がある。
正解のない学びの実践は、先生も成長するもの。
食わず嫌いにならず、新たな活動を1日15分でも取り入れてみるなど、
気負わず楽しんで取り組んでほしい」
ビジネス感覚を上手に取り入れて効率化を図り、子どもたちと一緒に自身も軽やかに成長を続ける。
教育現場には、そんな新たな姿勢が求められているのではないだろうか。
※4 Key Performance Indicatorsの略。組織の目標を達成するための重要な業績評価の指標
一般社団法人 Learn by Creationと長野県は、 2021年1月9日~3週末の計6日間、
オンラインイベント「Learn by Creation NAGANO」を共同開催。
「私たちで自治る(つくる)学び」をコンセプトに、長野県内の学びの取り組みを共有し、
大人も子どもも一緒に学びについて考える場を目指す。
Learn by Creation NAGANO公式サイト:https://nagano.learnx.jp/
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