2020年9月3日木曜日

新型コロナ患者で起きる免疫暴走の引き金物質を発見 阪大グループ

(2020年8月31日 サイエンスポータル) 大阪大学の研究グループは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)早期に起き、 重症化を招く免疫反応の暴走「サイトカインストーム」の引き金となる物質を発見。 血液凝固を促進する「PAI-1」というタンパク質で、 PAI-1が増えたCOVID-19の患者は、肺などに血栓ができて重症化していた。 この成果は、新たな治療法開発につながる。 22日米科学アカデミー紀要に掲載。 COVID-19の患者では、生理活性物質サイトカインの一つ「インターロイキン6」(IL-6)が 血中に増加し、このIL-6が血管からPAI-1を放出。 血栓が形成されてサイトカインストームに至り、重症化する仕組みを解明した。 COVID-19では肺でひどい炎症が起こり、多臓器不全に至って死亡する例も多い。 その過程で、免疫機構で重要な役目をするサイトカインが制御不能になって、 過剰な免疫反応と言えるサイトカインストームが起きることが分かってきた。 この過剰な免疫反応は、細菌感染でも起こる。 COVID-19でも全ての感染者に起きるわけではなく、 高齢者や基礎疾患がある人に起こる例が多いとされているが、 詳しいメカニズムは未解明だった。 発表したのは、大阪大学免疫学フロンティア研究センター免疫機能統御学の 姜秀辰(カン・スジン)助教、岸本忠三特任教授らのグループ。 岸本特任教授は、IL-6を発見したことで知られる。 姜助教らは、サイトカインストームが起きた91人の血液を健康な人の血液と比較。 その結果、サイトカインストームが起きた人は、 健康な人と比べて、PAI-1が顕著に増えていることが判明。 患者のPAI-1レベルは、細菌性敗血症や重症のやけどの患者に匹敵する高さ。 重症の新型コロナ患者のPAI-1の量を調べたところ、 その量も全身の炎症程度を示す数値もいずれも上がっていた。 PAI-1は、血管内皮細胞や肝臓、血小板などに存在するタンパク質で、 血管内皮が損傷したり、血小板が壊れたりして血中に放出される。 血中量が増えると、血栓の成長が促される。 研究グループは、増えたPAI-1により肺など多くの臓器で血栓ができ、 血管から生体維持に重要な液性成分を漏出させて肺炎を重症化させるとみている。 姜助教らの研究グループは、血管内皮細胞をIL-6で刺激する実験も行った。 すると、PAI-1が増えた。 この現象は、IL-6の働きをブロックする抗体医薬品 「アクテムラ」(一般名・トシリズマブ)により抑えられた。 同グループは、「COVID-19でもIL-6が上昇する早期にアクテムラを投与すれば、 PAI-1の産生を抑えることができ、これが有効な治療になると予測される」 http://scienceportal.jst.go.jp/news/newsflash_review/newsflash/2020/08/20200831_01.html

2020年7月25日土曜日

唾液PCR検査で無症状感染者をチェック 入国者や濃厚接触者は公費負担

サイエンスポータル 2020年7月21日 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のPCR検査について 厚生労働省は、有症者だけでなく、無症状の人を対象にした検査にも 唾液を使うことを承認した。 海外からの入国者や濃厚接触者の検査には公費負担する。 唾液PCR検査は、鼻の奥の粘液を綿棒で採取する従来の方法よりも 簡単、安全に検体を採取でき、結果も短時間で判明する。 同省は、空港の検疫所などでの水際対策に活用したい。 厚労省は東京都内で無症状の感染者数十人を対象に、 従来の方法と唾液を用いた方法の双方について検査精度を検証、 結果はほぼ一致した。 空港の検疫所で入国検査を受ける無症状の人や、 感染者の濃厚接触者らの感染の有無を調べるPCR検査の検体に 唾液を用いても問題ないとの結論。 6月2日以降、有症者の発症後9日までに限って唾液PCR検査を認めていた。 厚生科学審議会の感染症部会は、今回の検証結果を受け、 無症状の人にも唾液を用いたPCR検査を行うことについて問題はないと判断。 加藤勝信厚生労働相が17日の閣議後記者会見で、 海外からの入国者や濃厚接触者の検査には公費負担するなどの方針。 海外からの帰国者のうち、7月16日、17日の2日間に男性6人、女性3人の計9人が 無症状ながらCOVID-19陽性と判定。 年代は20代から60代と幅広く、同省は今後の感染拡大防止上、 こうした無症状感染者を水際でチェックする必要があると判断。 簡便な唾液PCR検査の活用に踏み切った。 以前は、唾液に含まれるウイルス量は鼻の粘液よりも少ないとみられ、 唾液PCR検査の精度は低いとの指摘も。 厚労省研究班が、COVID-19の感染者約90人から採取した唾液を使っての精度を 従来の方法と比べると、発症から9日以内なら判定結果がほぼ一致。 北海道大学の研究でも、唾液を使った方法の有効性が確認。 米食品医薬品局(FDA)も、唾液を使った検査キットの緊急使用許可を 5月初旬に出し、現在広く活用。 政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会(尾身茂会長)は、 無症状の人に対する検査のあり方について議論。 16日の会合では検査対象を (1)有症状者、 (2)無症状で感染リスクが高いとみられる人、 (3)無症状で感染リスクが低いとみられる人―の3つに分類。 症状が無い(2)(3)のうち、(2)については公費負担、 (3)については企業や個人の費用負担を前提に検査を受けることに道を開く方針で合意。 感染拡大を防止するためには、無症状の人を広範囲に検査する体制を 確立すべきと指摘する専門家も多い。 http://scienceportal.jst.go.jp/news/newsflash_review/newsflash/2020/07/20200721_01.html

2020年7月13日月曜日

「コロナ後の社会で、スポーツの価値とは」 日本学術会議フォーラム、議論白熱

サイエンスポータル 2020年6月30日 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で、在宅時間が長くなり、 健康維持の観点から、スポーツの在り方が注目。 コンピューターゲームの対戦を競技として捉える「eスポーツ」が普及し、 若者の心身への影響が議論。 東京五輪・パラリンピックの開催が来年に延期された今、 社会はスポーツが持つ多様な価値や課題を、改めて見つめる必要に迫られている。 日本学術会議は学術フォーラム「人生におけるスポーツの価値と科学的エビデンス 新型コロナ感染収束後の社会のために」を、6月18日に開催。 スポーツ庁からスポーツの価値をテーマに審議依頼を受けた同会議が、 回答をとりまとめたのに合わせ、内容の公表と講演などを盛り込んだイベント。 ◆「科学的根拠に立脚した練習を」など盛り込む 審議は、鈴木大地スポーツ庁長官が2018年11月、 「科学的エビデンスに基づく『スポーツの価値』の普及の在り方に関する審議について」 として、次の4つの課題について学術会議に依頼。 (1)日常生活でスポーツに親しむことが個人や社会にどう貢献するか、 科学的知見の整理、 (2)伝統や慣習、組織や精神文化との関係も含め、 スポーツの価値を高めるためのスポーツ界と科学の関係の検討、 (3)科学技術や情報技術の変化がスポーツの価値にどう影響するかの科学的知見の整理、 (4)スポーツ政策でEBPM(Evidence-Based Policy Making、証拠に基づく政策立案)を 推進する体制整備の提案。 学術会議は、委員会を設置。 科学技術振興機構の渡辺美代子副理事を委員長とする有識者ら16人。 (1)スポーツは心身の健康や体力増強、学習・認知能力の伸張に好影響を与え、 医療費抑制などで社会にも寄与する。 障害者を含む多様な人々が参画し、画一的でない実践を促すことが必要、 (2)科学的根拠に立脚した練習やコーチングにより、 経験主体のスポーツに高度な合理性を与えられる。 研究と応用が、人間の選別につながらないよう倫理面の配慮が不可欠、 (3)競技人口が急増しているeスポーツなど、身体運動を超えた新たな価値に配慮が必要。 ゲーム依存の防止策、組織やルールの確立などが急務、 (4)政策に反映できる科学的根拠の共有が重要。 各機関や現場で収集されたさまざまなデータを共有し包括的に分析するため、 各省庁や諸機関、学協会などのネットワークを活用する仕組みが必要。 ◆スポーツは「社会の基礎を作る」 委員会は、「提言」も取りまとめた。 データを国立スポーツ科学センターに一元化する体制整備や、 科学的根拠に基づく指導によって暴力を削減、最小化する取り組み−−などを盛り込んだ。 鈴木氏は「審議依頼時、スポーツ界はセクハラ、パワハラ、ガバナンス(統治、管理)の 欠如など、ありとあらゆる問題の最中だった。 情熱的な指導と暴力の境目はどこか、eスポーツはスポーツなのか。 今後も学術会議との関係を強固にし、さまざまな課題を解決したい」 学術会議の山極壽一会長が「スポーツは科学的根拠だけでなく、 社会的意義も非常に重要。信頼するコーチや仲間の中でスポーツをすることで 信頼感を醸成し、生きる喜びを感じる。社会の基礎を作ってくれる。 学術としてスポーツを考えていくことが重要だ」 ◆「引退までの苦しい道のり」経験告白も 基調講演では、脳性まひを持ちながら障害と社会の関係について研究する、 東京大学の熊谷晋一郎准教授。 五輪でヒーローが生まれるが「その陰で、成功できなかった人がたくさんいることを 忘れてはならない」と、元五輪バスケットボール選手、小磯典子さんの言葉を紹介。 スポーツは勝敗ではなく、人が社会で課された重荷を降ろして自由になり、 継続的に成長できるものであることが重要だ。 神戸大学医学部病院「ネット・ゲーム依存外来」で診療を続ける曽良一郎教授は 「eスポーツをスポーツと称するなら、心身の健全な発育に貢献することが求められる」と提起。 食欲が抑えられ、低体重となった若者などのゲーム依存の症例を紹介、 脳内のメカニズムが薬物依存のケースに似ていると指摘。 社会に対しては、ゲーム依存への警鐘がゲーム自体の制限の主張だと 誤解されているとアピール。 eスポーツは健康対策と経済活動の両立を図るべきだが、 ゲームの影響のデータが社会で共有されていないなど、多くの課題がある。 新型コロナウイルスによる休校が続いたことで、回復が妨げられたり、 予備軍が依存症に進んだりすることに強い危機感を示した。 日本スポーツ振興センター・ハイパフォーマンススポーツセンターの勝田隆センター長は、 新型コロナウイルスの影響を受けたスポーツ活動の再開にあたって、 「現場の皮膚感覚だけでなく、科学的に考えるサポートが重要だ」 ネットを含めさまざまな情報が飛び交うが、 「どんな機関や人が出しているものなのか。信頼性を重視してほしい」と呼び掛けた。 順天堂大学の室伏由佳講師は、2004年アテネ五輪出場などを果たした陸上選手時代、 過度の「都市伝説のような」トレーニングを重ねてスポーツ障害に陥ったと、 自身の経験を振り返った。 腰痛や貧血、婦人科疾患などに悩みながら、競技成績が良かったため対処を後回しに。 「引退までの苦しい道のり」の経験を告白し、メンタルヘルスや心理にも配慮した 選手のサポートの重要性を強調した。 1988年ソウル五輪シンクロナイズドスイミング銅メダリスト、 国際オリンピック委員会マーケティング委員会の田中ウルヴェ京委員は、 選手のメンタルトレーニングや心理コンサルティングに取り組んでいる。 選手の引退後のキャリア支援について講演。 「勝って得られる自信と、結果を得る過程にある自信は別のもの。 トップクラスの選手は、この2種類の自信を小さいころから鍛えており、 これらは引退後のセカンドキャリアでも生きるものだ」 引退時は、「競技を振り返り、今後の自分に何が有益、有害で、 何を転換しなければならないかを考える"棚卸し"作業が必要だ」 ◆コロナ拡大で「競うことの意味変わる」 パネルディスカッションには、委員を含む7人が参加。 中京大学の來田享子教授は、「スポーツが社会と切り離せないことを強く認識した。 社会から光を当てると、そもそもスポーツに近づけない人がいることや、 各競技に良さと課題があることに気づく。提言はこうしたことを強調できた」 五輪の歴史に詳しい來田氏は「(近代オリンピックを提唱した)クーベルタンの 時代には人々の物理的距離が大きく、4年に1度集まることには特別な意味があった。 今は世界の移動が簡単になり、デジタル技術も発達し、集まることの意味が変化している。 新型コロナウイルスの拡大により、競うこと、体を近づけて互いに感じることの意味も変わる」 「スポーツのルールの捉え方も変わっていい。 国の経済状態が違えば、トレーニング環境や栄養状態も違うのに、 私たちはそのことに基本的に目をつぶり、スポーツのルールは公平だと言いくるめてきた。 これまで意識されなかった不公平さを乗り越えられると、 これまでとは違う人々が表彰台に上がるかもしれない」 バイオメカニクスや生体計測が専門の早稲田大学の川上泰雄教授は、 トップアスリートを支えて得た実感に基づいて、「万全の健康を保っている選手は意外に少ない。 多くが、けがや障害と付き合いながら競技生活を続けている。 将来を担う子供がこうならないよう、適切なスポーツ活動の確立を」と警鐘。 子供の発達障害に詳しいお茶の水女子大学の神尾陽子客員教授は 「教育が画一から個別へとシフトする中、スポーツ教育も画一的なままで ドロップアウトする子供が出ないよう、教育者がスキルを身に着けてほしい」 国立情報学研究所の喜連川優所長は、「選手には引退まで、 コンサルタントがいていいなあと感動した。 大学の研究者なんて、そんな心配をしてくれる方は誰もいない」 「アスリートではない人がスポーツをすると、人生がどう変容するか。 そちらにも目を向けては」 ◆勝負だけでない五輪の価値、見えるように ディスカッションの進行役は、1988年ソウル五輪柔道銅メダリストで 日本オリンピック委員会理事、筑波大学の山口香教授。 「延期された五輪・パラリンピックでは、勝ち負けだけでない何かが、 きっと出てくる期待を感じる。でもいざ始まったらやはり、 日本人がメダルを取るのだといった話に、戻ってしまう気もする」と複雑な思い。 田中氏は「メディアには見えやすいもの、伝わりやすいものを報道する視点がある。 スポーツの人間は『五輪は結果主義ではない』と言わなければ。 五輪の価値はエクセレンス(卓越性)、リスペクト(敬意)、フレンドシップ(友情) と決まっているが、見えにくい。 コロナの影響で、このオリンピズムを子供たちに伝えられていない」と、 もどかしさを口にした。 「来年に五輪があるかないかは、不確実性というストレスだ。 コロナの影響はコントロールできないので、私は現場では 『2024年のパリを目指そう』と言っている。 毎日鍛える理由が必要で、明確なものに視点を置かないとやっていけないからだ」 來田氏は「競技をしようと思っていた機会がずれてしまうのは、選手にはとてもしんどい」 「延期の1年の間に、勝ち負けだけでない、五輪の見えにくい価値を 見せていくことがあってよい。 クーベルタンは芸術や音楽などの創造的な営みの中に、 スポーツと共通する価値をみていた」 山極氏は「学術とスポーツは、南極と北極くらい離れていると思っていたが、 今日は赤道まで来ている感じがした。 コロナ後の新たな科学のあり方の、突破口が開かれるように思う」 人間の身体能力の頂点を見せてくれるトップアスリートは、いつの時代も憧れの存在だ。 スポーツの価値が多様化しても、この価値観は何らかの形で残るだろう。 スポーツ文化が成熟した社会では、彼らには競技成績だけでなく、 心身の健康管理の面で人々のモデルとなる役割も求められるようになる。 http://scienceportal.jst.go.jp/reports/other/20200630_01.html

2020年4月24日金曜日

唾液で新型コロナウイルスを検出

4月14日

Saliva is a reliable tool to detect SARS-CoV-2

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0163445320302139#bib0028

社会的距離はどのくらい?

4月8日

Belgian-Dutch Study: Why in times of COVID-19 you can not walk/run/bike close to each other.

感染を防ぐため、1~2mの社会的距離を空けることが推奨されている。
これは、じっとしている時の話。

ベルギーやオランダの研究で、
ウオーキングでは4m、ジョギングでは10m、自転車では20m以上の
社会的距離が必要なことが示唆される。

http://gladiator-lab.ru/run-during-coronavirus

2020年2月7日金曜日

脈拍、SpO2、ビリルビン濃度を同時計測できるウェアラブル型マルチバイタルセンサを開発、世界初

2020年1月31日(金)

横浜国立大学と横浜市立大学医学部小児科学は、
2020年1月22日、ゴム材料のような柔軟材料を用いることで、
光学的に新生児黄疸と経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)、
脈拍等複数バイタルサインを額から同時に計測できる
「ウェアラブル型マルチバイタルセンサ」の開発に
世界で初めて成功したと発表した。

◆3つのバイタルサインを同時計測、Bluetooth通信で送信

センサを開発したのは、横浜国立大学工学研究院の太田裕貴准教授、
横浜市立大学医学部小児科学の伊藤秀一主任教授、
魚住梓助教らの研究グループ。
新生児は胎内から胎外へ環境が変化することで、
臓器を始めとした体内環境が非常に不安定となり、
そのため、黄疸を起こすとされているビリルビン濃度を始めとして
複数のバイタルサインの経時的な計測が必要不可欠とされる。

研究チームでは、ゴム材料などの柔軟な材料を新生児と
デバイスのインターフェースに用いることによって、
新生児の負担が小さく、高密着に装着できる
ウェアラブル型マルチバイタルセンサを開発することで、
継時的な計測が可能となるかに取り組んでいる。

デバイス開発は、横浜国立大学工学研究院が担当し、
微細加工技術を用いて柔らかい基板上に LED、フォトダイオード(PD)、IC、
Bluetooth素子を載せた回路を作製、
その回路を、生体適合性が高く柔軟なシリコーンゴム材料の中に封入した。

今回、横浜市立大学医学部小児科学の協力により、
開発したデバイスを出生 0~5 日後の新生児に対し装着し、
作製したデバイスによる測定結果と、
従来から用いられている各種バイタルサイン計測デバイスによる
検査の結果を比較、相関があることを確認した。

研究チームは、新生児医療における重要なバイタルサインである
脈拍、SpO2、黄疸度(ビリルビン濃度)の測定については
現在、単独機器での計測しかできないのが現状で、
小型、ウェアラブル、個人で購入可能かつ同時測定可能な
デバイスが実現すれば、新生児の入院日数を短くし、
患者の金銭的負担と医師・看護師の負担を軽減することができる。

今後は、さらに心電や呼吸など他のバイタルサインの計測と連動し、
包括的に新生児の様々なバイタルサインを計測できる
ウェアラブルセンサを開発する予定。

https://medicalai.m3.com/news/200131-news-medittech?dcf_doctor=false&portalId=mailmag&mmp=AI200207&mc.l=566793847

2020年2月5日水曜日

ガン細胞に免疫システム回避を許さない-期待の新研究

Roshini Beenukumar, PhD

ガン細胞は、免疫システムを回避するために様々な工夫。
Nature誌の記事によれば、共著者であるバーゼル市、チュービンゲン市、
ハイデルベルク市の研究者チームが、
急性骨髄性白血病(AML)患者において、
化学療法耐性白血病幹細胞がどのように免疫システムを回避するのかの
メカニズムを明らかにした。
白血病幹細胞は、ナチュラルキラー(NK)細胞が感応するための
リガンド分子を抑制する事によって、NK細胞から逃げることが出来る。
この研究によって、回避のメカニズムを標的とし免疫応答性を
敏感にする薬剤が期待される事が明らかに。
この研究が成功すれば、AML治療の方法が全く新しいものに変わっていく。

◆ガン細胞はどうやって免疫システムを回避しているのでしょう?

ガン細胞は、免疫システムを回避するための複数の方法を駆使。
腫瘍細胞は、表面に抗原を提示するので、それが免疫細胞の標的に。
このプロセスは不都合な側面も持っており、
腫瘍細胞の遺伝子不安定性によって操作されるが、
腫瘍細胞の選択の際、
免疫細胞のサーベランスから逃れることも起こってくる。

主たる免疫回避のメカニズムは、
IDO(インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ)メカニズム。
IDO発現は、多くの腫瘍で上方制御され、
それによってT細胞の免疫性を抑制する。

腫瘍の免疫回避に影響を受けやすいいくつかの免疫細胞は、
(1)調整樹状細胞(DCs)と調整T細胞(Tregs)は腫瘍抗原に対する耐性を起こし、
(2)骨髄由来抑制細胞(MDSCs)は炎症性因子を誘起し腫瘍の進行をサポート。
(3)マスト細胞は上皮腫瘍形成に関与しているとの仮説。
複数のコンビネーションで免疫システムを回避する機構によって、
腫瘍周りの微小領域で免疫抑制が成され、
結果的に進行ガンにおいて転移が見られる。
 
◆急性骨髄性白血病と免疫治療-現行のアプローチ

急性骨髄性白血病では、骨髄幹細胞の異常な増殖と分化に特徴を持つので、
T細胞特異的免疫治療が選択され、
具体的には同種幹細胞移植が行われる。
抗体医薬の併用も、免疫治療の取り組みとして用いられる。
この併用法では、CD33のような白血病特異的抗原に
バクテリアや低分子の腫瘍毒性ペイロードを接合させ、
ガン細胞に選択的に送達できるように工夫。

抗CD33抗体医薬との接合は、
ゲムツズマブ オゾガマイシン(Gemtuzumab ozogamicin)が
AML治療のための抗体標的治療法として認可。
その他の著名な取り組みとしては、
キメラ抗原受容体を付加させたT細胞やCAR T細胞の療法が目立つ。
急性リンパ性白血病(ALL)と悪性B細胞リンパ腫では、
CAR T細胞療法が奏効率が高い。
AMLについても、CAR T細胞の療法の有効性を確認する
早期フェーズの臨床研究が進行中。

◆化学療法耐性幹細胞-AMLでよく見受けられる問題

AML患者は、治療後に寛解する多いが、その後再発する。
その原因は、化学療法耐性白血病幹細胞(LSCs)で、
その細胞が免疫システムを回避して治療耐性を持ってしまう。
現行の免疫治療の方法では、AMLの治療には適切ではない。
このLSCsのせいで、治療後に再発する。
Dr.Paczullaの研究チームによって、どのようにしてこの免疫システム回避が
起こるかのメカニズムが解明された。

◆免疫システムからガン細胞が自らを守るための
二つのキープレイヤーは、NKG2D-L と PARP1

NKG2Dは、NK細胞とT細胞に通常存在し、
「危険検知器」として機能している。
傷害されたり形質転換したり病原体に感染されたりした細胞を
除去するために働く。
NKG2D-Lは、MICファミリーとULBPファミリーに属し、
ストレス誘導リガンドを認識して問題のある細胞を除去するために機能。
Dr.Paczullaの研究チームは、
175人のAML患者由来の白血病細胞を分析し、
リガンドNKG2D-LはAMLの幹細胞以外の細胞に発現、
白血病幹細胞には発現していないことを明らかにした。
NKG2D-L発現AML細胞は、NK細胞によって除去されるが、
NKG2D-Lを発現していない白血病細胞は免疫システムを回避することが出来る。
これらの白血病細胞は、
形態学的未熟性・分子的あるいは機能的な
幹細胞性・患者由来異種移植モデルによる化学療法耐性などによって特徴。
「白血病幹細胞におけるこの免疫耐性の本質的なメカニズムは、
細胞表面に提示されるNKG2D-Lのような危険シグナルを抑制する事にある」
3人の責任著者の1人であるチュービンゲン大学病院と
German Cancer Consortium DKTK所属のDr. Helmut Salihは説明。

本研究のもう一つの重点は、
幹細胞性と免疫回避とのつながりを説明できた。
「幹細胞本体と免疫システムからの回避能とのつながりは、
これまで解らなかった」
バーゼル大学病院とバーゼル大学所属のDr. Claudia Lengerkeはコメント。

◆この免疫回避戦略を支えるメカニズムは何か?

新たにこの防御機構のキープレイヤーを紹介すると、
PARP1(ポリADPリボースポリメラーゼ1)という分子で、
主としてDNA損傷の修復を担いゲノムの全体性を維持する役割を持っているが、
さまざまなガンに関与。
いくつかのPARP阻害剤は、BRCA1/2変異卵巣ガンの進行期の治療に使う
オラパリブ(KuDOS/AstraZeneca製)のように、臨床での使用が認可。
NKG2D-Lを発現しない白血病幹細胞の免疫回避機構は、
PARP1によって仲介されている。
PARP1発現は、NKG2D-L の発現を抑え込み、
白血病幹細胞において上方制御され、
これによって免疫回避が行われる。
 
患者由来異種移植マウスモデルにPARP1阻害剤を適用したら、
白血病幹細胞はNKG2D-Lを発現する機能を回復した。
同モデルに対し、引き続いてモノクローナルNK細胞を移植したら、
腫瘍形成を抑制し、幹細胞は認識されNK細胞によって除去された。
 
◆今後の方針
 
免疫回避メカニズムに、PARP1を深く関与させるという考え方は大変面白い。
PARP1阻害剤は、AMLマウスモデルにおいては良好な結果が観察、
重要なことはガン患者に応用できるという事。
 
PARP1阻害剤を他の治療法と組み合わせれば、
特定の白血病幹細胞を標的として、AMLの長期に渡る回復が
可能となる日が来ると期待。
「私たちは、ガン細胞がどれほど賢く免疫システムを騙しているのかを明らかにした。
内在するメカニズムを解明したことによって、
これから私たちが反撃に出ることが出来る」
本研究の3人の責任著者の1人であるGerman Cancer Research Center と
 HI-STEM社に所属するDr. Andreas Trumpは説明。

白血病幹細胞が免疫システムを回避するメカニズムが解明。
このメカニズムに、PARP14を加えることによって新たな展望が拓ける。
化学療法耐性の幹細胞を、PARP1阻害剤と活性NK細胞との
組み合わせで撃破する。
本研究に参加した科学者チームは更なる臨床応用を目指し、
臨床評価とバリデーションの臨床研究を続けていく。

https://www.phchd.com/jp/biomedical/applications/evolving-science-for-the-future/preventing-cancer-cells-from-escaping-the-immune-system-a-promising-new-study