2020年9月3日木曜日
新型コロナ患者で起きる免疫暴走の引き金物質を発見 阪大グループ
(2020年8月31日 サイエンスポータル)
大阪大学の研究グループは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)早期に起き、
重症化を招く免疫反応の暴走「サイトカインストーム」の引き金となる物質を発見。
血液凝固を促進する「PAI-1」というタンパク質で、
PAI-1が増えたCOVID-19の患者は、肺などに血栓ができて重症化していた。
この成果は、新たな治療法開発につながる。
22日米科学アカデミー紀要に掲載。
COVID-19の患者では、生理活性物質サイトカインの一つ「インターロイキン6」(IL-6)が
血中に増加し、このIL-6が血管からPAI-1を放出。
血栓が形成されてサイトカインストームに至り、重症化する仕組みを解明した。
COVID-19では肺でひどい炎症が起こり、多臓器不全に至って死亡する例も多い。
その過程で、免疫機構で重要な役目をするサイトカインが制御不能になって、
過剰な免疫反応と言えるサイトカインストームが起きることが分かってきた。
この過剰な免疫反応は、細菌感染でも起こる。
COVID-19でも全ての感染者に起きるわけではなく、
高齢者や基礎疾患がある人に起こる例が多いとされているが、
詳しいメカニズムは未解明だった。
発表したのは、大阪大学免疫学フロンティア研究センター免疫機能統御学の
姜秀辰(カン・スジン)助教、岸本忠三特任教授らのグループ。
岸本特任教授は、IL-6を発見したことで知られる。
姜助教らは、サイトカインストームが起きた91人の血液を健康な人の血液と比較。
その結果、サイトカインストームが起きた人は、
健康な人と比べて、PAI-1が顕著に増えていることが判明。
患者のPAI-1レベルは、細菌性敗血症や重症のやけどの患者に匹敵する高さ。
重症の新型コロナ患者のPAI-1の量を調べたところ、
その量も全身の炎症程度を示す数値もいずれも上がっていた。
PAI-1は、血管内皮細胞や肝臓、血小板などに存在するタンパク質で、
血管内皮が損傷したり、血小板が壊れたりして血中に放出される。
血中量が増えると、血栓の成長が促される。
研究グループは、増えたPAI-1により肺など多くの臓器で血栓ができ、
血管から生体維持に重要な液性成分を漏出させて肺炎を重症化させるとみている。
姜助教らの研究グループは、血管内皮細胞をIL-6で刺激する実験も行った。
すると、PAI-1が増えた。
この現象は、IL-6の働きをブロックする抗体医薬品
「アクテムラ」(一般名・トシリズマブ)により抑えられた。
同グループは、「COVID-19でもIL-6が上昇する早期にアクテムラを投与すれば、
PAI-1の産生を抑えることができ、これが有効な治療になると予測される」
http://scienceportal.jst.go.jp/news/newsflash_review/newsflash/2020/08/20200831_01.html
2020年7月25日土曜日
唾液PCR検査で無症状感染者をチェック 入国者や濃厚接触者は公費負担
サイエンスポータル 2020年7月21日
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のPCR検査について
厚生労働省は、有症者だけでなく、無症状の人を対象にした検査にも
唾液を使うことを承認した。
海外からの入国者や濃厚接触者の検査には公費負担する。
唾液PCR検査は、鼻の奥の粘液を綿棒で採取する従来の方法よりも
簡単、安全に検体を採取でき、結果も短時間で判明する。
同省は、空港の検疫所などでの水際対策に活用したい。
厚労省は東京都内で無症状の感染者数十人を対象に、
従来の方法と唾液を用いた方法の双方について検査精度を検証、
結果はほぼ一致した。
空港の検疫所で入国検査を受ける無症状の人や、
感染者の濃厚接触者らの感染の有無を調べるPCR検査の検体に
唾液を用いても問題ないとの結論。
6月2日以降、有症者の発症後9日までに限って唾液PCR検査を認めていた。
厚生科学審議会の感染症部会は、今回の検証結果を受け、
無症状の人にも唾液を用いたPCR検査を行うことについて問題はないと判断。
加藤勝信厚生労働相が17日の閣議後記者会見で、
海外からの入国者や濃厚接触者の検査には公費負担するなどの方針。
海外からの帰国者のうち、7月16日、17日の2日間に男性6人、女性3人の計9人が
無症状ながらCOVID-19陽性と判定。
年代は20代から60代と幅広く、同省は今後の感染拡大防止上、
こうした無症状感染者を水際でチェックする必要があると判断。
簡便な唾液PCR検査の活用に踏み切った。
以前は、唾液に含まれるウイルス量は鼻の粘液よりも少ないとみられ、
唾液PCR検査の精度は低いとの指摘も。
厚労省研究班が、COVID-19の感染者約90人から採取した唾液を使っての精度を
従来の方法と比べると、発症から9日以内なら判定結果がほぼ一致。
北海道大学の研究でも、唾液を使った方法の有効性が確認。
米食品医薬品局(FDA)も、唾液を使った検査キットの緊急使用許可を
5月初旬に出し、現在広く活用。
政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会(尾身茂会長)は、
無症状の人に対する検査のあり方について議論。
16日の会合では検査対象を
(1)有症状者、
(2)無症状で感染リスクが高いとみられる人、
(3)無症状で感染リスクが低いとみられる人―の3つに分類。
症状が無い(2)(3)のうち、(2)については公費負担、
(3)については企業や個人の費用負担を前提に検査を受けることに道を開く方針で合意。
感染拡大を防止するためには、無症状の人を広範囲に検査する体制を
確立すべきと指摘する専門家も多い。
http://scienceportal.jst.go.jp/news/newsflash_review/newsflash/2020/07/20200721_01.html
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