2024年2月17日土曜日
脳震盪判定マウスピース「ぜひ導入促進を」
2024年2月17日(土)
脳しんとうから選手や兵士を守れ、衝撃を計測するマウスピース
アスリートや兵士が脳しんとうを起こした場合、最も有益な対応は、
とにかく競技場から退出させるか、その活動から離脱させて回復させることである。
なぜ衝撃によって脳しんとうが起こったり、起こらなかったりするのかなど、
頭部負傷については多くのことが謎のままである。
頭部への衝撃に関して、豊富な情報を提供してくれる可能性のある新しい測定装置が開発されている。
軍事活動や競技から離れる必要があることを速やかに警告することで、
兵士やアスリートを脳損傷から守ることができる。
2023年パリでラグビーワールドカップが開催された。
近年ラグビーではHIA(Head Injury Assessment)と呼ばれる脳震盪のチェックが導入され、
選手の脳へのダメージを厳密に評価する取り組みが進んでいる。
これまで根性論が幅を利かせていたスポーツの世界でも、客観的な評価によって脳への影響やプレー復帰の可否が判断され、
選手の安全が確保されるようになった。
今回紹介されたマウスピース一体型ツールは、コンタクトスポーツ全体に導入される可能性を秘めており、興味を持った。
●私の見解
紹介されているマウスピースは、単に衝撃の有無を測定するだけではない。
直線加速度、角加速度、外傷の位置、方向、衝撃の回数、負荷の強さを測定し、総合的に頭部へのダメージを計算。
リアルタイム評価に基づいてプレーヤーを一時退場させるかどうかの判断を、
主観的な判断から客観的なプロセスに移行させることができ、
コーチや保護者に正しい判断をしているという安心感を与えることができるだろう。
集められたデータはサーバーに送られ、日々のトレーニングに活用されるそうで、
試合中のみならず日々の練習やトレーニングでのダメージ蓄積を評価し、
休養を与えたり病院に行かせたりすることが可能だろう。
出典:https://preventbiometrics.com/
●日常診療への生かし方
本デバイスは、女子ラグビーの国別対抗戦で使用される予定だが、
男性トップ選手ではなくジュニア世代やアマチュアなど未熟な競技者、
大きな大会ではなく小さな大会や練習中など映像記録が難しい場面での活用が期待される。
私自身も競技中に脳震盪を起こした事があるのだが、病院に行くこともなかった。
今、医師になって振り返るとぞっとしてしまう話だ。
ジュニア世代の選手は自分から症状を言い出しづらい、集団でトレーニングを行うため無理をしやすい、
指導者から無理を強いられるといった事が考えられるため、
試合というよりもトレーニングなどの場面で積極的な活用を期待したい。
病院や研究所とあらかじめ連携できるようであれば、
地域でリスクのある頭部外傷が起こった時点でスムーズに精査を行うことができ、
データの集約化も期待できるだろう。
https://medicalai.m3.com/news/240217-snapshot
新型コロナ後遺症の治療に光明、血中バイオマーカーにヒント
2024年2月13日(火)
新たな研究は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)後遺症(ロング・コビッド)の原因が、
免疫系の特定の部分の異常にある可能性を示している。。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は多くの人にとって、感染者数の急増と減少が繰り返される中で、
生活に大混乱を巻き起こしては去っていく病気となっている。
数千万人の感染者にとって、新型コロナウイルス感染症とは、数カ月または数年続くこともある慢性疾患、
場合によっては消耗性疾患の始まりになっている。
新型コロナウイルス感染症の後遺症(ロング・コビッド)を発症する者と、感染して回復する者との違いはどこにあるのか。
新たに発表された論文によると、後遺症の発症者は多くの場合、
見過ごされがちな免疫系のある部分が異常に活性化するという。
スイスの研究者チームは、新型コロナウイルス感染症に感染したことがない人、感染して回復した人、
後遺症を発症した人たちから採取した血液サンプルのタンパク質濃度を比較した。
「私たちは、後遺症の原因は何か、後遺症を活性化させ続けるものは何なのかを解明したいと考えました」と
チューリッヒ大学の免疫学者で、この論文の著者であるオヌール・ボイマン教授。
科学者チームは、後遺症を発症した人の補体系に関わる一連のタンパク質に変化が見られることを発見した。
補体系は、病原菌の破壊や細胞の破片の除去に際して、免疫系を補助する働きを持っている。
研究結果は、少なくとも別の1つのグループによる研究結果と呼応している。
こうした補体系の変化が後遺症が続く原因となっていることを証明した研究は、これまでに存在していない。
医師が特定の治療薬の治験に最適な被験者を選定し、治療法を模索するうえでの新たな道を開く可能性がある。
「明確に効果的な治療法はありません」と呼吸器医療の専門家で、
インペリアル・カレッジ・ロンドンで肺感染症を研究しているアラン・シンガナヤガム博士は話す。
「絶望的で、大きな問題なのです」。
彼らは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の陽性となった113人と、
一度も感染したことがない39人の血中にある6500以上のタンパク質濃度を調べるところから研究を始めた。
6カ月後、彼らは新たな血液サンプルを採取した。
その時点で73人が感染後に回復し、40人が後遺症を発症していた。
後遺症患者の血中で濃度が上昇したタンパク質の多くは、
重度の新型コロナウイルス感染症から回復した人の血中でも濃度が上昇した。
後遺症患者グループに固有のマーカーは、補体系の異常活性を示した。
補体系とは何か?
良い質問だ。
「免疫学者以外は、耳にすることのない言葉でしょう」とボイマン教授。
補体系は、微生物から体を守るうえで欠かせない役割を担っている。
補体系は、肝臓で生成される30種類以上のタンパク質で構成されており、血中を移動し免疫監視システムとして機能する。
補体系が活性化すると次々に反応が起こり、免疫細胞を感染部位へと集結させ、病原菌を破壊対象に指定し、
病原菌に穴を開けて破壊する。
補体系は名前から連想できるように、抗体の活動を補っている。
補体系が変調をきたすと炎症が広がり、細胞や血管をダメージを与えることになる。
補体系の異常活性が後遺症の際立った特徴の1つだという研究結果が明らかになったとき、
「私たちは突然、『ああ、確かに筋が通っている』と声を上げました」とボイマン教授。
「補体系は非常に重要で、免疫系とのやり取りだけでなく、血液凝固系、
つまり内皮細胞、血小板、赤血球ともやり取りし、あらゆる器官に入り込みます」。
このことは、一部の研究者が、感染者の血管内に小さな血栓を発見した理由の説明になるかもしれない。
新型コロナウイルスに感染した後、補体系が変調をきたす可能性がある理由については明らかになっていない。
「私としては、このような形で補体が活性化した場合、
現在進行形で感染が起きている可能性を示していると考えます」と
カリフォルニア大学サンフランシスコ校の免疫学者、ティモシー・ヘンリッヒ教授。
残存ウイルスが、補体系を活性化させ続けている可能性があるのだ。
なかなか修復されない細胞の損傷が、補体系を活性化し続けている可能性もある。
もしくは、全く別の原因があるのかもしれない。
「現時点での後遺症研究の根本的な問題は、相関関係は数多く明らかになっているものの、
証明されている因果関係があまりないことです」(同教授)。
後遺症の特徴の1つとして、補体の異常調節を指摘している論文は、今回発表されたものだけではない。
2023年10月、英国カーディフ大学医学部の免疫学者ポール・モーガン教授と同僚らが研究を公表した(まだ査読されていない)。
この研究でも、後遺症発症者の補体タンパク質濃度異常が明らかになっている。
この研究グループは、重度の新型コロナウイルス感染症から後遺症の発症まで、
患者の経過を追うことはできなかった。
どちらの研究グループも、マーカー自体は異なるものの、後遺症の前兆と見られる一連のマーカーを特定している。
シンガナヤガム博士は、こうしたマーカーが決定的な診断につながるかという点については懐疑的だ。
補体系が後遺症の一部の症状の原因であるならば、解決策はあるかもしれない。
補体系の活性化を阻害する治療薬はすでに存在する。
一部の希少遺伝性疾患や自己免疫疾患の治療用に認可されている治療薬だ。
一部の治療法は、重度の新型コロナウイルス感染症患者を対象としてすでに試験を実施しているが、結果はまちまちだ。
これは、研究者が補体の異常調節の兆候を示している患者のみを対象とする術を持たないことが
原因になっているかもしれない、とモーガン教授。
製薬会社が後遺症発症者を対象に治験を始める場合、
最も大きな恩恵を受けられそうな者を被験者として選定するという目的で前出のマーカーを利用できるかもしれない。
「抗補体薬による治療が、後遺症に対する初めての効果的な治療法になるかもしれません」と同教授。
すでに同教授のチームは、これらの治療薬を開発した企業と交渉を始めている。
こうした治療薬が仮に効果を発揮したとしても(これ自体も依然として大きな「もしも」だが)、
全員がその恩恵を受けられる可能性は低い。
後遺症は「異なる種類の症状の集合」だとシンガナヤガム博士は言う。
「後遺症の症状はブレイン・フォグ、疲労、胸痛などです。
患者ごとに、それぞれの症状の度合いが異なります」。
モーガン教授の研究によると、後遺症患者で明確な補体の異常調節があったのはわずか3分の1から半数程度。
この論文は、重要な知見を与えてくれるとヘンリッヒ教授は言う。
後遺症の原因に関する謎は、解明にはほど遠い。
「これが1000ピースのパズルだとすれば、今は縁が完成した段階です」と同教授は話す。
「良い出だしではありますが、パズル全体が完成したわけではありません」。
https://medicalai.m3.com/news/240213-news-mittr?dcf_doctor=false&portalId=mailmag&mmp=AI240216&mc.l=1013524282
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