2024年1月29日月曜日
アルツハイマー病の原因物質が毒性を示す過程の実時間観察に成功
2024年1月23日(火)
東京農工大学と三重大学の共同研究チームは、
アルツハイマー病の原因物質であるアミロイドβが、人工細胞膜中で毒性を持つ構造に変化する様子を
リアルタイムに観察することに成功。
膜中のコレステロールが毒性構造への変化を促進することや、カテキンが毒性構造を阻害することを見い出した。
アミロイドβ(Aβ)は凝集性が高く、単量体(モノマー)から中間体の重合体(オリゴマー)を経て、アミロイド線維を形成する。
中でも、Aβオリゴマーに強い細胞毒性があることがわかっている。
オリゴマーの細胞毒性機構の一つとしてチャネル(細胞膜を貫通する孔)形成があり、
神経細胞膜中に孔を開けることで細胞死を引き起こすが、
これまでAβが膜中でモノマーからオリゴマーに凝集していく過程は確認されていなかった。
研究チームは、マイクロデバイスを用いたチャネル電流計測によって、
Aβモノマーが脂質膜(人工細胞膜)中で、凝集してチャネルを形成していく過程を2時間にわたって観察。
膜中でAβモノマーが凝集してオリゴマー化し、チャネルを形成することを発見した。
続いて、神経細胞膜を模倣した人工細胞膜を用いて観察したところ、
膜中のコレステロールがAβの膜中でのチャネル形成を促進することがわかった。
さらに、Aβの凝集阻害剤であるカテキンの一種EGCGのAβチャネルへの作用を調べた結果、
EGCGはAβの凝集だけでなく、膜中に形成されたチャネルの活性も阻害することを見い出した。
今回の成果により、Aβと神経細胞膜との相互作用の解明が進み、アルツハイマー病の治療法開発に貢献することが期待される。
研究論文は、米国科学アカデミー紀要ネクサス(PNAS Nexus)に2023年12月14日付けで掲載。
https://medicalai.m3.com/news/240123-news-mittrNF2